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 *下駄箱*
 
 
 
 
 いきなりラブレターをもらってしまった。遥か昔の学生時代ですら、
 そんなことは1度たりともなかったのに。
 差出人は渚カヲル。
 
 48歳にして入学した定時制高校の隣りの席の少年だ。
 私の息子よりひとつ年上の15歳。
 聞いた話では、たおやかな外見に似合わず、
 中学時代はかなり名の通ったワルだったらしい。
 けれども、今、学校で毎日出会うカヲルはそんな過去は微塵も感じさせない。
 年頃らしくちょっとナマイキなところもあるが、
 溌剌とした明るい笑顔と好奇心に溢れた緋色の瞳が印象的で、
 クラスでも人気者のひとりだ。
 そんなカヲルがなぜだか私に熱い眼差しを向けている。
 
 そのことに私が気付いたのは、いつのことだっただろう。
 気付くほど熱心に私もあの子を見ていたということなのか。
 確かにあの子は死んだ妻に少し似ている。でも、それだけのことだ。
 今まではそう思い込んで、自分を納得させようとしていた。
 が、下駄箱に入っていた手紙の差出人が目に入るやいなや、
 身体中の体液が逆流するような感覚に襲われ、
 我知らずうなじに血が上ってしまった。
 ・・・・・さて、果たしてどんな返事をしたらよいものか・・・・・。
 
 
 
 
 TO BE CONTINUED 
  
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