ホンダの隠れ家 〔作業日誌〕 ピックアップの巻 その1







〔 ピックアップのエンジン修理 〕

昨年我が家にやってきたピックアップですが、他のピックやステップに比べてもエンジンが重く感じます。
何故なんだろうなと思いつつも、パッとエンジンの外観を見ても解るわけもなく、そのままにしていました。
たまには外に出して乗ってあげようかと久々にガレージから出して軽く近所をお散歩に。
やはりなんとなくアクセルを踏んだ感じや自分の中でスッキリしない感覚が残ります。
購入した時に、自動車ディーラーでエンジンをフルOHしてもらって、それからほとんど乗っていない状態との事で、
ダッシュボードの中にもその時の明細書が入っていて、見るからに完璧にしてあって、入手できるパーツはみんな新品に。
そんな明細書を見ているので、スッキリしない感覚は私の思い過ごしかなとも思っていました。
でもなんとなく普通に乗り回すには不安な感じ・・・。
とりあえず一回りしてきて、様子を見る為に庭で10分程アイドリングさせておきました。
そろそろエンジンを止めようかなと思ったら、なにやら異音が???
サーッと擦れる音がしたかと思うと、次はカラカラガリガリ。
エンジンを吹かすと音は更に大きく・・・。 嫌な予感が〜。
早速エンジンルームを開けて音の原因を探ります。 大事に至らなければ良いなと祈りつつ。
回転を上げた時に耳を澄ませると、タイミングベルトカバーの中からカラカラと。
ここらへんから音がしだすと大抵はウォーターポンプが駄目なんですが、そこではなさそう。
とりあえずエンジンを停止して、腰をすえて作業を開始しますか!
違和感があったまま乗ることは出来ませんし、この際一通り点検していこうと思います。
エンジンの掛かりも悪かったから丁度良いです。
という訳で、作業の開始!  先月頼まれたピックアップを修理したばかりですが、
またまた今月もピックアップのエンジン修理となりました。


ノンキー





■■■■■ H19.7.7 (土)   曇り  ■■■■■
点検していくと、タイミングベルトのカバー内から異音が発生。 とりあえずカバーを外してみるとタイミングベルトのヘッド側のプーリー固定ボルトが折れていました・・・。 少しずつ外れかかったプーリーもカバーに接触していたようです。 折れたボルトを見るとホームセンターで入手できる強度が4のボルト。 とりあえずあるボルトで組んでいるとは〜。 耐久性とか強度とか考えたら、やはり8番ボルトを使ってくれないと! カムシャフトを外して折れたボルトを抜こうかとも思いましたが、他も不安だったのでヘッドを降ろして、じっくり折れたボルト抜きから作業を始める事にしました。
結局またヘッドを降ろすのか〜。
ぐずぐず考えていてもクルマは直りませんから、まずは作業!
ヘッドを降ろすと決めたらさっさと作業を開始します。 エアクリーナー・補器類をどんどん外していきます。 キャブも外してタイミングだけトップに合わせてタイミングベルトも外します。 ラジエーターのクーラントは抜いて、エンジンオイルはそのままに、あとはヘッドボルトを外せばヘッドは簡単に外れます。
ヘッドカバーを開けてヘッドボルトを弛めていくと・・・。 6本あるボルトの弛めるのに必要な力加減がバラバラです。 全てのボルトが均一なトルクで締めていなかったようです。 これでは、いつヘッドガスケットが抜けてしまうか解らないところでした〜。 何か違和感があると感じて、ピックを乗り回せなかったのはこんなところが理由だったのかな・・・。 ちゃんと直してくれとピックが信号を送っていたのかも。 出先で壊れたのではなく自宅の庭でアイドリング状態で異音を発生したのも、今考えるとラッキーでした。 事が大きくなる前にトラブルを発見するのは整備をしていて基本ですね! クルマから送られるメッセージを見逃さないのはクルマに対する愛情も必要かも。 
ヘッドボルトは組む時に考えるとして、最初の目的の折れたボルトを抜いてあげなくては!  まずは降ろしたヘッドを加工し易いように定番のビールケースの上に置いてセットします。  カムシャフト側に残った折れたボルトをどうやって抜きましょうか〜。
完全にポキンと折れてしまっていますが、ポンチで叩いて少しずつ回してみましょう。 ちょっと外れる傾向が見れません・・・。 仕方が無いのでドリルでまずは折れたボルトに穴を開けましょう。  あれれっ、ボルト径に合うドリルの刃があったはずなんですが見当たりません。 日頃の整理が悪いようです。 面倒ですがホームセンターまで買いに行ってきましょう。  結局1時間のロスがあって作業の再開!
やはり新品のドリルの刃は切れ味抜群ですね〜。 簡単に折れたボルトのセンターに向かって穴が開いてくれました。 残るのは薄いボルトのカス。コンマ何ミリ残してカムシャフトに傷をつけないようにしてドリルは終了! 
次は開けた穴に入れるボルトに合わせたネジ山を掘りなおします。 タップを用意して開けたカムシャフトの穴にタップをたてていきます。
タップをたてていくと細かなネジのくずが取れて、元々のボルト穴が出てきました。 完全にネジ山が元通りに戻りました。
ホンダ純正のボルトを入手してあったので早速取り付けて完了!
ヘッドを載せたままではこんなに綺麗にはいかなかったと思います。 カムシャフトを外してしまってもドリルの加工にも固定が大変ですから、遠回りでしたがヘッドを降ろして正解だったかな〜。 旧車整備はボルトが折れるなんて事は良くある事ですから、焦らず慌てず、急がば回れが逆に近道かな・・・。
さてヘッドを組んで元通りに組みなおします。 ここからはペースをあげて早く試運転を!  新しいヘッドガスケットを組んでヘッドを載せてヘッドボルトを締めていきます。 あれれっ、またまたトラブル発生〜。  ヘッドボルトが締まっていきません・・・。 シリンダー側のネジ山がバカになっているようです。 オイオイ、勘弁してよ〜。 さっさと片付けて試運転しようと思ったのに。 先月頼まれて修理したピックもそうでしたが、何度もいろんな方が開けたり閉めたりしたエンジンは駄目ですね〜。 ボルトは折れるは、ネジ山はナメているは・・・。 作業をするにも人がイジったのは嫌だな〜。  とボヤいても仕方がありませんので、今日はエンジン作業は中止。 キャブでも掃除してあげますか〜。 気分を変える事も大切な事です。 気を取り直してキャブを掃除し始めると面白い音が・・・。 中にネジが挟まっています。 チョークの開閉部に折れて咥え込んでいます。
またまたトラブル発生。 私が外したエアクリーナーを見るとネジは3本揃っています。と言う事は以前から挟まっていたようです。どうりでチョークが効かず始動も悪かったはずだ〜。 早速ネジを取り除きましたがチョークがうまく開閉しません。 棒ヤスリで変形した部分を修正して、なんとか問題なく作動するようになりました。 これで始動性も良くなるかな!  キャブは完了。  エンジンは、また後日。







〔 ピックアップのエンジン修理 〕 その2

一週間の間を置いて、再度エンジン修理の再会です。  
トラブル続きで嫌気が差してしまうと作業も投げやりになったり、先を急ぐあまり作業がおろそかになったり・・・。
そんな時は頭を冷やすのも大切です。 他の事をして気持ちを切り替えたり、時間を置いてみたり。
その時間の中でいろんな方法を検討したりするのも大切な事です。
焦って作業すると今までの経験上、更にトラブルが大きくなったりする事も多々ありましたから。
しかし、この間が微妙で時間をあけ過ぎると駄目なんですよね〜。
ヤル気がなくなっちゃったり、パーツが無くなっちゃったり、更には何がいけなかったのかやるべき事も忘れちゃって
結局一からトラブルのおさらいをしなければいけなかったり・・・。
今回の一週間程の合間が良かったかな〜。
さてさて、作業報告をしていきますね!


■■■■■ H19.7.15 (日)   雨のち曇り  ■■■■■
くたびれたシリンダーを交換しちゃおうか、それともリコイルキットを購入してネジ山を新しく作り直そうか思案しましたが、せっかくシリンダー側もOHされて新品のピストンやピストンリングも組まれているのに勿体無いですし、先月やったエンジン交換は面倒だなと、ストレートツールさんへ行って高価ではありましたがリコイルキットを購入してきました。  まずは新しく入れるリコイルのネジ山を入れる前にドリルにて二周り程大きな穴を開けます。 もちろん指定のドリルサイズです。 丁度のドリルの刃も無かったので一緒に購入し、電気ドリルで一気に穴を開けます。  開けた穴に、これも指定のタップでネジ山を新たに切りなおして、そこにリコイルのネジ山を埋め込みます。 穴あけからタップたてまで曲がらないように垂直に! これが曲がって入ると後が大変ですからね〜。 ここで失敗すると後の始末が大変ですから慎重に!
アルミエンジンは何度もエンジンを開けたり閉めたりしているとネジ山が駄目になっている事が多いですから、こうしたリコイルの作業は必要ですね・・・。
新しいネジ山にリコイルを埋め込んで、締め付け工具用のツメを中に折込んで完了!
ボルト穴は貫通ではありませんから、内部に折った金属のツメが残りますが、私はタイヤのバルブ回しに磁石を擦り付けてバルブ回し自体を棒磁石にして、折ったツメを張り付けて中から抜きます。 ドリルやタップで削ったアルミくずは他を隠してエアーで飛ばして終了。  
新しく作ったネジ山がシリンダーボルトの締め付けトルクに対応してくれるかな〜。 早速ヘッドを組んでシリンダーボルトを締めこんでいきます。 6本ともキチンとトルクがかかって締まってくれました。 規定のトルクで均一に締め込んでトラブルも山を越えました!  あとは再度補器類を組み付けて、手早に作業を終わらせましょう〜。
ヘッドカバーを組んで、タイミングベルト・ベルトカバー・ファンベルト・キャブ・エアクリーナー・・・と外したものを元通りに組んで、抜いたクーラントを新たに入れて、オイルを足すように入れて完了。
作業が一週間あいてしまいましたが、なんとかトラブルを一つずつ改善して終わりが見えてきました。ホッ。 これ以上作業の間をあけると嫌になっちゃいますしパーツも見当たらなくなったり・・・。
さてさて元通りにパーツを組んだところで、お楽しみのエンジン始動です。 ここで結果が出なければ最初からやり直しになってしまいますから何度やっても緊張の瞬間です。キチンと組んだのですからトラブルが他で出ない限りは普通にエンジンが始動して当たり前の事なんですが。
さあチョークを引いてキーを回してみます。 チョークも使えるようになりました。 素直にエンジンが始動してくれました〜。 アクセルを踏んで回転を上げても吹け上がり良く気持ちよく回ってくれます。 最初に感じた重いエンジンという印象も消えて、軽く回っています。 エンジンを切って、再度始動させても素直にセル一発で掛かってくれます。 チョークを引いても回転は上がりますし、機能を果たしています。 全てトラブルは解決したようです。 あ〜、直って良かった〜!  自分の手で組みなおすとピックも自分の身体の一部になったようです。これで安心して乗り回せそうです。
やはり自分で作業しないと不安ですね〜。


エンジン修理 完了!  終わり