無 題
ふにふにふにふに
ふにふにふにふに
これはどうしたらいいんだろう…。
ロックマンは途方にくれて、天を仰いだ。
ふにふにふに
ふにふに
後ろから伸びている黒い大きな手。
その手は、先ほどから熱心に自分の頬や、腕や、足を触れている。
触れて、少しだけ、つまんでみたりして。
ほっぺたなんて、両手で挟みこむようにして随分長い間ふにふにしていた。
さっきから、ずっと無言でそんなことしてるから。
「…楽しい?」
と訊いてみれば、返ってきた言葉は、いつもと変わらない一本調子。
「楽しいという感情は、私には分からない」
はい?
「だが、興味深い」
膝の上に座って、彼のいう通りに大人しくしている。
いわゆる、膝抱っこの状態。
背中に感じる胸板の厚さに、少しどきどきするけど、相手はきっとそんなことに頓着していな
い。
「触ってみていいか?」
と訊かれ。
「いいよ」
と答えたのは自分だけど。
いつになったら飽きるのかな、というのも正直なところ。
さすがに、太腿の内側に手が伸びたときには、声を上げたけど。
不思議そうな緑の目に、何だか自分のほうが不純な気がして。
半分諦めの境地になりながら、ロックマンは体中の力を抜いた。そして、そのまま、相手の肩
に頭を乗せる。
今晩は、ちょっと長い夜になりそうだった。