1.退職させたい意志を認めた会社と和解
[退職勧奨]
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Iさんは2015年に正社員として入社。2019年7月に「横紋筋融解症」と診断され、筋肉痛が続き退職したいと申し出たが、会社から人手不足なので待ってくれと言われて働き続けた。
2020年7月に会社から「退職届」を渡された。その際は「辞めません」と答えたが、その後「仕事に向いていない。いつ辞めるのか」と言われ続ける。2021年10月にメンタルを発症して診断書を提出したら、会社から休職届と退職金計算書が渡される。Iさんは生活が厳しかったので残有給30日を取得して休職に入りたいと会社に書面を提出した。しかし、会社からは有給休暇取得ならば退職届を出してください、有給休暇取得しなければ傷病手当を申請してくださいと言われ、どうしてよいか分からずに組合に相談。組合は、会社が2020年7月から退職勧奨を始め、Iさんがメンタル発症に至った会社のやり方は退職強要にあたると主張。 交渉で、会社は組合員であるIさんを退職させたいという意志があったことを認め、Iさんもこのまま就労継続したらメンタルはよくならないということで、組合が提示した解決金を会社が支払うことを条件に「合意退職」を選択して和解に至る。 |
2.「ハラスメントと性的暴行が起きにくい
職場環境の整備」を求める
[性的暴行] |
Aさんは入社半年後のある年の5月に、直属の上司から性的暴行を社内で受けました。その直後からうつ状態がひどくなり涙が止まらない、吐き気などの症状で仕事ができなくなりました、別の上司にあったことを話して会社に告発したい、症状が落ち着くまで休みたいということをお願いして休職しました。6月にエリアマネージャに全てを話し、対応して欲しいとお願いしました。また、別の上司にも話し、別営業所に異動になり、8月末で退職せざるをえなくなりました。 組合は上記経緯から、Aさんが問題を訴えたにも関らず、対応せず、結果的にうつ状態が悪化し、退職せざるをえなかったことは、労働者が労働するにあたり使用者に課せられている義務「その生命、身体等の安全の確保」と男女雇用機会均等法に基づくセクハラ防止措置義務を果たさなかった結果であるとして、会社に交渉を求めました。 会社は第1回目の交渉では「個人的恋愛関係の問題であり、無理矢理の暴行とは言いにくい。しかし、望ましくない上司と部下の関係である」と主張しました。しかしAさんが「今も似た男性を見ると怖くて動けなくなる。PTSDと一生つきあう辛さをわかってほしい」と訴えたり、組合が会社のセクハラ防止規定の不十分さを指摘し、「ハラスメント及び性的暴行が起きにくい職場環境の整備」ということで休憩室、ロッカー、仮眠室の整備、職場内における私的な酒類を伴う飲食の禁止などをいれることを求めるなど話し合いを重ねるなかで、これを機に会社も変わっていければと和解に至りました。「和解書」には「本件を機に職場環境の更なる整備に努めるものとする」という条文が入りました。 |
3.セクハラで心因性胃腸炎に。交渉し解決
[セクハラ退職] |
Bさんは2022年4月からある保育園で働き始めたが、採用前の面接で生活が困窮しているという話を法人の男性代表理事にした際、マッサージはできるか聞かれて拒否。翌日食事に誘われ、車内で身体を触られ、Bさんは胃腸炎になり、医師から「職場を変えないと治らない」と言われる。 一方でBさんは、市役所から保育士への家賃補助制度を活用した借り上げ住宅に住み、その敷金や礼金、また当面の生活費など園から借りた額が計68万円ほどになり、退職するならば、その借用金の返済を月々5万5千円の分割で1年間行うように迫られていた。 Bさんは体調不良で出勤できない日が続き、そのことで解雇か一身上の都合での退職かを選ぶように言われ、一身上の都合を選ぶ。退職証明書を受け取るためにBさんが代表理事と会った際にもホテルの駐車場まで連れていかれるが拒否。代表理事は借金を返すためにメンズエステや風俗で働く方法もあると示唆。 Bさんはなのはなユニオンに加入し、団体交渉を行う。代表理事はBさんに解決金を支払うこと、その解決金からBさんの借用金を相殺することで合意し、解決に至る。 |
4.「65歳までの継続雇用」を求めて申し入れ
[退職勧奨撤回] |
Tさんは長年にわたりT社で角型鋼管の積み下ろし作業に従事してきた熟練工であったが、満60歳の時点で一旦退職金が支払われ、その後半年毎の再雇用契約を結ぶこととなっていた。しかし、最初の再雇用期間中に、同社の総務部長から翌年4月以降その仕事がなくなることを理由に契約が終わるその月で雇用契約を打ち切りたい旨の意向が示された。TさんはこれまでT社での重い物を運ぶ仕事に従事してきたため右足がしびれ、医師から腰椎椎間板症と診断され、重い物は持たないほうが良いと言われ、T社にも伝えていた。 Tさんはすぐになのはなユニオンに加入し、組合はT社に対し、「高年齢者雇用安定法第9条により、従業員の定年を65歳未満に定めている事業者は、65歳までの定年引上げ、もしくは、定年制の廃止、もしくは、65歳までの継続雇用制度の導入の措置を講じなければならない」としてTさんへの退職勧奨の撤回を求め団体交渉の申し入れを行った。 すると数日後、T社から組合に連絡があり、「Tさんに伝えたのは退職勧奨の意図ではなかった。雇用は継続する」とのことで、団体交渉を行う前にTさんの退職勧奨問題は解決した。 |
5.1回の交渉で希望する入社時条件に
[労働条件の不利益変更] |
入社時「1日5時間×週4日間=週20時間、社会保険・雇用保険加入」で契約しました。入社直後に足の故障やコロナ感染などで体調不良となり労働時間を減少。その後、2022年8月に会社から入社時の労働条件に戻すかどうかを確認された際、もどりたいと返答し、徐々にもどすとなりました。9月は1日2時間、10月は3時間、11月は4時間、12月は5時間になる予定でした。10月の面談でも12月から5時間働きたい旨を会社に伝え、11月には現場からも忙しいので入ってくれと頼まれて5時間働きました。ゆえに12月は5時間働けると思っていたら、「4.5時間」とのメールが送信され、12月の面談では4時間と言われました。社会保険・雇用保険に加入したいので入社時の労働条件で働きたいと交渉しました。1回の交渉で、本人が望む条件で働いて下さいとなりました。 |
6.組合申し入れを全面的に認めて謝罪
[不当解雇] |
保育補助として就労して来たKさんは、理事長から突然、「保育士の資格がないから3月末で退職」を通告されました。理由は保育園管轄の市の保育課に、保護者から「資格がない人が働いている。」とクレームが入り、市から理事長が呼び出されて注意を受けたとのことでした。本人が市に確認したところ、そういうクレームはなく、市が理事長を呼び出したこともないことがわかりました。 三者(市と本人と理事長)の話し合いの場を市にお願いしたが、なかなか実現されず、そうこうしているうちに、同法人が経営している他の園への異動が提示されたので、即刻交渉を申し入れました。 申し入れ直後に、理事長から組合からの要求「解雇の撤回、異動の撤回など」を全面的にのみ、本人にも謝罪するとの電話が入りました。組合は回答を確認するためにも団体交渉の場をもつことを提示し、第1回団体交渉が行われました。理事長はその場で本人に謝罪すると同時に、解雇と異動を撤回し雇用継続することを明言。本人への謝罪文と「確認書」を交わして解決しました。 |
7.話し合いには応じないが、
解雇の件はなかったことに
[解雇] |
整形外科の個人病院で理学療法士の助手として週30時間働いてきたSさんに、院長が「1月いっぱいで退職届を出すように」と通告しました。解雇理由は同病院の医師であった方が別病院を開院した際、その病院の宣伝チラシに貴方の写真が掲載されていた。ということは別病院の開院に貴方も加担したということでした。 Sさんは、自分の写真がチラシに掲載されたことも知らなかったし、この病院は賃金等はよいとは言えないが、職員同士の人間関係はよいので働き続けたいと組合に相談。組合が病院に交渉申入れをした途端、院長から怒鳴り声で「労基署もこの話し合いに応じる必要はないと言っている。」との電話が組合に連日入りました。その度に「どこの労基署がそんなことを言ったのか」と問うても返答はなく、ただただ話し合いに応じないとの繰り返し。その間、Sさんは指定された解雇日をこえて普通に出勤し働き、院長から何も言われませんでした。 やっと交渉に応じるとなった朝、やはり応じないとの返答。病院に抗議するために向かったが、入院している患者もいるため、抗議書はSさんが何かあったときに提出するということにしました。 その後、何もなかったかのように、Sさんは同病院で働き続ける事ができています。 |
8.有給あるのに「退職するならペナルティ」
[退職トラブル] |
正社員のWさんは2023年11月から勤務。図面作成と言う業務についたが、前任者との引き継ぎ期間が短く、慣れない仕事で作成が遅れがちに。社長から「貴方が遅いので他の方の仕事がなくなる。」「貴方は給料の半分も仕事していない。」など言われて7月8日から出社できなくなる。7月9日に有給休暇で休みたいと言ったら「有給使っていいね。小学生以下のやり方だね。」など言われ、7月10日に退職を申請。社長から「賃金からペナルティ代を引く。休んだ間の『診断書』を提出してくれ」と言われ、退職できなくなると組合に相談。組合から即刻、会社に退職日を指定し退職の手続きを進めること、休んだ間を残有給休暇で処理、残賃金の振込、ロッカー残私物の廃棄、保険証やロッカーの鍵、制服などの郵送を通知。その通知到着直後に社長から電話で退職は認めるが、休んだ間の診断書の提出、損害金の支払い、賃金の本人払い、ロッカー残物の廃棄にかかる金の支払いを条件とするとの連絡。社労士からも同内容の連絡あり。組合はその会社側の要求はどれも法的に根拠がない。会社が損害金を出せというならば、組合はパワハラで争うと主張。結果、組合要求どおりでよいとなりスピード解決。 |
9.パワハラによる休職に対する退職通告は許さない! |
SさんはT社に2012年6月1日に入社。試用期間を経て正社員に正式採用。その頃から「なんで教えたことを1回でやらないのか」など、恫喝的に注意されるようになる。3ヶ月目にメモを見ながら作業をしていたとき、「メモを見ている場合ではない」と左足首に蹴りを2回いれられる。上司に相談したが「職人気質の会社だから仕方がない」と一蹴される。「あなたにはこの仕事向かない」と言われ配転に。配転先でも上司の暴言が続く。2013年2月21日、同僚から廃棄物の処理について注意を受け、謝罪した直後に左膝をけられ、左ほほを殴られる。この事態に工場長は「手を出した方が悪いが、貴方にも問題がある」と言い、蹴られたところが出血したので「とりあえず、病院に行きたい」と言ったところ、「とりあえずというセリフが一番嫌いなんだ」と怒られる。
後日、加害者は「悪かった」と言ったが、工場長は「やはりお前にも非がある」と言う。話しが進展しないため、他の労働組合に加入し話し合いが行われ、 ●加害者に2ヶ月間の2割減給、 ●朝礼で、工場長が「いかなる場合でも暴力はいけない」 と宣言する。 Sさんは職場異動となり、2013年3月18日に新しい業務に就く。しかし、やったことのない仕事で、「何、チンタラやっているんだ」など言われて、一日就業しただけで次の日から会社に行けなくなり「適応障害」と診断され休職にはいる。 2013年8月に、会社から就業規則「休職期間が満了し、なお休職事由が消滅しないとき」に則って1ヵ月後の退職を通告される。Sさんは他の労働組合を脱会し、なのはなユニオンに加入し交渉。交渉では、個人の問題ではなく会社は労働者の安全に対する配慮義務や労働者が働きやすい職場環境を保つように配慮すべき義務を負っているとし、休職期間6カ月が満了したから自然退職といえるものではないと追及。金銭解決による円満退職となる。 |
10.理由がない解雇は解雇権の濫用で無効! |
パートで6年間、ビル管理の会社で事務として働いてきたHさんは、8月末に(1)会社の業務の障害となる、(2)集計業務をやってくれなかった、(3)事務員を募集したら、他の事務員さんとは一緒に仕事をするのは嫌と言ったという理由で解雇を通告される。 今年の3月に業務量が増え、一人では責任もてない旨を社長に話した結果、事務職の募集がされて3人が応募。しかし、一人目は面接日に来なく、二人目は1日来て辞退、三人目は2日間来たが仕事が与えられず辞退。会社から通告された解雇理由に思い当たることはなく、自分の仕事を否定されたことに納得がいかない、と会社と交渉。 解雇理由について、会社はそのように思ったというだけで、それ以上の主張ができなかったため、1回で合意。Hさんは金銭の額よりも、なぜ6年間働いてきた自分がこんな形で辞めさせられるのかにこだわり、会社に謝罪の意を求め、「協定書」に「謝意を表する」という文言が入る。 |
11.「賃金切り下げ」を撤回させ未払残業手当を要求 |
A社は電機製品の配送を請け負っている会社。「社名が変わる」という理由で、社員・アルバイトに「賃金切り下げ」を一方的に通知。また、アルバイトには「残業手当と有給休暇はない」とされていて、残業代の不払いがあった。 数人でユニオンに加入し、会社と交渉する。一方的な不利益変更は、会社側の社労士が社長を説得する形ですぐ撤回されたが、残業手当について会社はキチンとした資料を出さず、アルバイトについては、「個人請負」と会社は主張。交渉を続けたが、会社は「忙しい」ことを理由に、いい加減な対応が続き、組合員は「この会社は信用できない」と退職する方向となる。会社とユニオンの見解は対立したままだったが、「退職解決金」という形で最終的に合意。 |
12.日々、切り捨てられていた残業代を要求! |
Mさんは、大手スーパーの鮮魚部にパートとして就労し、2013年9月30日退職。退職後に就労していた2年間の残業代未払いを会社に要求。主任が「今日、延長できますか」と指示した日の残業代は支払われていたが、毎日、発生する退社の予定時間を超えた時間に対する残業代は未払いだった。労働基準法では、法定労働時間を超える労働は、たとえ1分でも割増賃金を支払わねばならないとなっているので、残業時間の端数を1残業ごとに切り捨てることは違法だと交渉。2年間に遡り未払い残業代が支払われる。 |
13.内部通報を忌避した不当な雇止を許さず |
社会福祉関連施設Aで有期契約を更新して3年間ほど働いていたBさん。雇止が2か月前に通知され、ユニオンは雇止事由の説明を施設に求めたが、法人の返答は、仕事と関係のないBさんの個人的な問題や過去3年間に指摘されたこともなかったような些末な問題を持ち出してきた。実は、施設長が著作権法に反するような行為を続けていたため、Bさんが著作権管理団体に通報した件で施設長は我慢できなかったので、早々と契約更新拒否を通知したのだった。交渉申し入れ直後、「自宅待機、施設への立入禁止」という業務命令まで出す。 団体交渉で、施設・代理人弁護士が主張する雇止事由のひとつひとつに徹底的に反論し、雇止が不当であること、本当の理由は別にあることをつきつけた。その結果、二度目の団体交渉後に代理人弁護士から金銭解決の打診があり、三度目の団体交渉を経て金銭解決の方向で折り合いが付き、この問題は年内で解決するかに見えた。ところが、施設側の代理人弁護士は合意書に、Bさんに「施設関係者と接触することを禁じる」を入れると主張。施設のある地域は、Bさんの郷里であり、生活圏でもあり、職員の中には友人もいる。そのつきあいまで制限しようというのは、人権の制限である。ユニオンは千葉県弁護士会への要請も含め徹底的に争うことを代理人弁護士に通知する。即日、撤回する旨が表明され、合意に達す。 |
14.ブラック企業に残業手当を支払わせる!
[労働審判] |
1ヶ月に法定限度を遙かに上回る長時間拘束・長時間労働を行わせてきた運送業のA社では、陸運局の監査を逃れるために運転日報の全社的な隠匿・改竄を行うなどの悪質な行為を行った。Bさんは支払われていない残業手当を支払わせるために、運転日報のコピーを保管し、ユニオンに相談。会社の代理人として、ユニオンに対して団交拒否を常習的に行っているK弁護士が対応してきたため、労働審判で速やかに決着をつけることにした。労働審判で会社は、業務上必然的に発生する待機時間をすべて「休憩」とみなす、歩合給部分についての残業手当は既に組み込んである、等々のデタラメな主張を行う。また、Bさんに対する下品な誹謗中傷も。Bさんは、会社の出したデータの一部が実は改竄された日報によるものであることなど暴露Bさんの主張をほぼ認める勝利的な和解となる。 |
15.悪質な嫌がらせを許さない!
[労働審判] |
E歯科医院で助手として働いていたFさんは、院長のワガママに堪えかねていた。最終的には、院長の失敗をなすりつけられ、一言苦言を呈したところ、「今日で終わり」と解雇を通告された。社会保険労務士に相談したところ、残業代の未払が発覚。解雇予告手当も未払い。解雇の不当性は主張せず、社会保険労務士が代理として歯科医院に解決金を請求したが話しにならず、ユニオンに相談。医院はユニオンの団体交渉の求めに応じ、一定の支払いの意思も示したが、余りの態度の悪さにFさんは納得できず。医院長夫人はFさんのお母さんの職場にまで乗り込んで母娘を中傷した挙げ句、ご丁寧にそのことを誇示するようなメールまで送ってきたので、懲らしめたいという思いが募り、労働審判を申し立てる。病院は裁判所の和解提案に応じ、一定の支払いを受け入れる。 |
16.ブラックバイト/ワガママ「オーナー」に
お灸!
[労働審判]
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Cさんは学生で、賃金を学費に充当するため、飲食店Dでアルバイトをしていた。しかし、店長(オーナー)の従業員に対する関わりがあまりにも粗暴なため従業員はすぐ辞めていき、Cさんも愛想がつき、退職を申し出る。オーナーから辞めないでくれと泣きつかれたが、Cさんは退職の意思を貫く。 すると、オーナーは退職の月とその前月の賃金を払わず、親御さんと一緒にオーナーと交渉したが、ラチがあかず、ユニオンに加入し支払いを求めたが、「知らない人とは話す気は無い」ということなので、労働審判を申したてる。オーナーは一度も審判の場に出てこなかったので、裁判所はCさんの請求を認め、支払いを命令した。 |
17.パワハラに声あげた!!
[労働審判] |
Kさんは人材派遣会社の派遣コーディネーターに就いていた。社長は、営業がうまくいって仕事が軌道に乗ると派遣先に直接「増員」「単価の増額」などの話を持ち出し、派遣先からクレームが来ると、大きな声で「舐められてるんじゃないの」とか「馬鹿だからそんな言い方をするんでしょう」とか、容赦なくKさんを罵倒。そのような中、ハウスクリーニング部門の支店に出向を命ぜられ、週のうち半分が派遣、半分がハウスクリーニング部門の事務となる。 ある日、本社に支店の経費報告に行くと、奥さんから「この出金は認めないので、店長には内緒でHさんからお金を返してもらって頂戴」と言われる。店長にその旨を報告すると、すごい剣幕で怒鳴り飛ばされ、社長に相談すると「勝手なことをするな」と、また怒鳴られる。周りから怒鳴られてばっかりで、身体の調子が悪く、眠れない日が多くなる。店長に退職願を出したが、受け取ってもらえず、思い余ってなのはなユニオンに相談。病院へ行き診察を受け、「三か月の療養を要す。就業不可である。原因は職場が考えられる」との診断を受け、会社に「病気療養期間の賃金保障、パワハラに対する謝罪、職場環境の改善」を掲げ交渉を要求。 会社は、要求を認めないということで、第一回目の交渉は15分くらいで終了。店長に報告すると、「自分の言葉や態度がKさんを傷つけていたことを謝りたい。Kさんの勇気ある行動を応援するから」と言って、なのはなユニオンに入り一緒に闘う道を選んでくれた。その後の社長は「Kは退職した」と触れ回り、「Kと店長はできている」という誹謗と中傷を流布。店長から仕事を取り上げ、職場から追い出そうと必死になる。 労働局に会社の派遣法違反の事例を、労基署に残業代の未払い等について告発し、労働局と労基署合同の立ち入り調査が入り、残業代の未払い問題は改善を勝ち取る。しかし、パワハラ問題は解決しないため、「労働審判」でたたかう。第一回労働審判で、あまりの社長の態度の悪さに裁判官もあきれ、Kさんの主張は全面的に認められ金銭解決による「和解」となる。 |
18.残りの契約期間分を払わせる! |
IT技術者のAさん、今年の5月にB社の契約社員となり、短期間の契約の反復というかたちで情報通信大手のC社の現場でデータ管理の支援業務に携わっていた。7月の時点では既に9月〜11月の契約も結んでいた。ところが、8月になってC社の現場を仕切っているD社の担当者がB社に対して、Aさんの就業は9月で打ち切る、と通告。B社からAさんにその通知がメールで送られてきた。D社の担当者はAさんの仕事上の不首尾をあげつらったと思われるが、Aさん本人にはD社からもB社からもキチンとした理由通知もなし。Aさんは納得出来ないのでユニオンに相談。ユニオンは既に結んだ契約通りに働かせるか、それができないならキチンと金銭的に補償せよと要求しB社と団体交渉を行う。B社は業務請負や人材派遣のかなりの大手で、団体交渉には法務担当、人事担当、弁護士が出席。 団体交渉で、ユニオンはAさんの就業形態は、典型的な偽装請負であることをも指摘。Aさんは、B社から開示されたD社による評価が不当であることなどを主張。 争点はあったが、B社は雇用契約があることについて認め、残りの契約期間について、その賃金相当額(全額)を解決金として支払うと回答。一回の団体交渉で解決。 |
19.不当な中途解雇とたたかう! |
通販会社のT社で働き始めたAさん(女性)。一年契約で過去に経験のある人事・総務関係の事務員として働き始めた。ところが、働き始めて3ヶ月以上経過後、突如として1か月後の解雇を通告される。理由は「事務員としての能力不足」及び「勤務態度不良」。「能力不足」とは人事関係の事務などについて至らない点があったということだが、3ヶ月以上勤務し、わからないことも学びながら、応分の仕事をこなしてきた。また「勤務態度不良」については、欠勤が多いとのことだが、家庭の事情などで休みを申請し承諾の上休んだことはあるが、頻度もさほどではなく、無断欠勤は一度もなく、注意を受けたこともなし。納得のいかないAさんはユニオンに相談。 ユニオンは、 (1)有期契約の労働者を契約期間中に解雇する場合には労働契約法でいう「やむを得ない」理由が必要だが、T社のあげた解雇理由は到底それに該当するものではないこと。 (2)「能力不足」という認識は、Aさんに至らない点があったとしても、社長の過大な期待によるものであり、契約社員に対する能力・責任の求め方としては適当ではないこと。 (3)T社は「試用期間6ヶ月」だから試用期間中の解雇であると主張しているが、「試用期間6ヶ月」には就業規則上の根拠がなく、契約期間1年に対して6カ月の試用期間はあまりに長すぎ、不適切である、 と主張。 (就業規則には、正社員の試用期間は「6ヶ月」、一年契約のパートは「1ヶ月」と規定されており、Aさんの場合、パートと同じ1年契約なのに正社員並の「6ヶ月」は長すぎ。なお、就業規則には「契約社員」の規定はなし。) 2度の団体交渉で、Aさんは社長の主張に対して、正面からキチンと反論。結果として、社長の主張とAさんの主張は平行線となる部分が多く、解雇撤回には至らなかったが、社長としてもAさんの気持ちも理解し誠意をもって早期に解決したい、という意向を表明。それなりのレベルの解決金を支払うということで合意。合意書に、社長は自ら「解雇は撤回する、Aさんは両者合意の上で退社」という文言を入れ、Aさんへの配慮を覗わせた。Aさんは正社員への登用の道もあるということで頑張って働いてきたので残念な結果となったが、社長の誠意も感じ取れた解決であった。 |
20.不当解雇を償わせる! |
Aさんは、昨年4月からサービス業のB社で働いてきた。B社は3つの店舗を営み、従業員は十数名。雇用契約書も労働条件明示書もなく、賃金は日払い。その日の売り上げ金もゴチャゴチャにするような形で支払われていた。あるとき、オーナー社長の賃金の扱いがデタラメなことを問題にし、苦情を述べると、社長はこれまでの勤務シフトを勝手にいじり、Aさんに嫌がらせをしてきた。Aさんは、シフトをこれまでとは違う形に変更したのはどうしてか、と疑問を呈した。すると、社長は「即日解雇」をメールで送信。もともと、この会社は従業員を雇用保険にも、社会保険にも加入させていなく(Aさんは入社当時から加入資格を満たし、加入義務があった。)、その上、驚くほど身勝手な解雇。社長は「解雇予告手当は払う」といったが、未払いの残業手当もあるので、Aさんは到底納得できず、ユニオンに相談。 ユニオンは会社に団体交渉を申し入れ、 (1)解雇の撤回 (2)未払い残業手当の支払い (3)有給休暇をキチンと消化させること (4)雇用保険、社会保険には採用時に遡って加入させること、 等々を要求。 交渉の結果、会社にはそもそも就業規則もないこと、従って「解雇」の法的な前提が欠けていること、36協定もないこと、等も発覚しました。労働法のことを全く知らない社長は弁護士を立ててきたので、ユニオン側が問題についてキチンと説明し解雇の撤回を求めたところ、会社側は「もう一度働いてもらうことにやぶさかではない」との立場を示す。しかし、「社会保険に遡及加入させる」ことを求めたところ、会社は金銭での解決を希望。Aさんも、B社はひどい会社なので改善されないのであれば、金銭的償いでもやむを得ないとの立場だったので、会社が解雇の不当性を認め、金銭でその償いを行うのであれば受け入れることにした。 結果的には、会社が解雇について相応の補償を行うことを示したので、和解。Aさんは「個人だったら何もできないところだった。ユニオンに相談してたくさんのことを学ぶことができ、よかった。」と。雇用保険への遡及加入の結果、失業手当の給付もそれなりの期間分をかちとり、職業訓練を受けることを決め、新しい生活に向けて踏み出す。 |
21.工場長の未払残業代を勝ち取る!
[労働審判] |
2015年9月7日千葉地方裁判所にて、Sさん・Kさん両名の残業代の支払いを求める労働審判が行われる。 両名はS株式会社(製造業)にて、「工場長」の肩書で働いていた。会社はユニオンとの団体交渉で、工場長は管理職者であり、残業代を支払わないと就業規則で定めているので、両名の残業代は支払わないと主張。労働審判においては、●工場長には管理職手当を支払っているから、残業代は支払わない、●管理職手当(月額7万円)は管理職に支払う手当であると同時に管理職の残業代に見合うものでもあるので、管理職であるという主張が認められないとしても残業代は払わない、と主張。 ユニオンは ●両名は工場長であるが、労働基準法でいうところの管理監督署としての実態はない、 ●実態がない以上、両名に残業代を支払うのは当然である、と主張。 裁判所の判断 労働審判は3回制の裁判であるが、裁判所はS株式会社の工場長に管理監督者としての実態はまったくない、と判断し、1回目で調停成立し解決。管理監督者というためには、(1)経営に関わっている、(2)高額の給与など、管理者としての待遇がされている、(3)働く時間は自主的で会社に管理されていない、等々の事実が必要である。しかし、両名にはそういう事実がないということで、裁判所は会社側に質問を集中。最初から、会社の主張はおかしいという判断にたっていたことが明白である。ゆえに、1回目で裁判所が出した「解決金」で解決。 |
22.即日解雇は許さない! |
KIさんは、大手コンビニチェーン店で、パートとして深夜帯(22時〜翌朝6時)で、雇用契約書なし、時給1000円以外は雇用保険、交通費などもなしで就労。 オーナーの妻と組んで働いたとき、「ビールがなくなった」と言われ、「わかりません」と答えると、「店の中でなくなったらすぐわかるのよ。どうしてなくなるの。ドロボーが盗んだのか。なくなる理由がわからない」というやりとりがあった翌日に、「明日から来なくていい」という解雇通告を受ける。 Kさんは、勤務して2ヶ月弱で日が浅いので辞めるのは仕方がないが、「ドロボー扱い」されて、辞めるのは嫌だと、ユニオンに相談。 ユニオンは、(1)解雇理由は何か、(2)もし上記理由で解雇したとしても、解雇の手続きに問題がある、(3)勤務中に、ドーナツ・揚げ物を落とした、ICカードへのチャージ入金でのレジ打ちのミス(例えば5000円分のチャージを間違えて二度押して一万円分になった場合、差額の5000円分を自己負担させられていた)等々で、その都度弁償金を支払わされていたのは労働基準法16条違反にあたる、と団体交渉を申し入れました。 一回の交渉で即日解雇であることを認め、弁償金の支払いはあってはならないことだと認めたので、労働基準法第20条(使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。)に則って和解。Kさんは、泥棒扱いされたことについて、直接オーナーに直談判できてよかったとのこと。 |