ヴァン幸せルート小説編 2
											(ラスボスがちょっと変更になります〜)
											
											
											
											
										
									部下に指示を出しに戻るというヴァンとは、ベルケンドの研究所前で一度分かれ、ガイは宿に戻った。
											翌朝ホテルのロビーで待ち合わせの約束はしている。
											そんなところでヴァンと待ち合わせる未来が来るなんて、昨日まで全く想像すらできなかった。
											本当に来てくれるのか。信じているとは言ったものの、不安が残るのは仕方ない。
									朝食に集まったパーティーメンバーにざっくりと事の成り行きを話して、これからヴァンが来るはずだから…と言ったものの、驚愕して訝しむメンバーと、ガイも同じ気持ちだったりした。
									だが、ホテルのロビーに、ヴァンはその姿を現した。装飾の派手な謡将の制服が浮いている…。
											「ヴァン! 来てくれたんだな!」
											「お疑いでしたかな」
											少し苦笑するヴァンにガイは慌てて、信じていたとも!と笑う。
									ガイからの話しを聞いても信じられないという思いだったメンバーはひたすらに驚く。
											そして、仲間になったのではなく、なにか裏があるのではないかと当然疑った。
											「まさか本当にヴァン謡将が来るなんてぇ〜絶対何かたくらんでるんだよねえ」
											「兄さん…本当にガイの説得を受け入れたの…? 私にはまだ兄さんを信じることはできない」
											「ヴァン師匠…本当に仲間になってくれるなら、嬉しいけど…」
									戸惑う空気はガイにも伝わる。
											その反応は当然だと思う。
									「敵だと思ってた相手をすんなり仲間と思えなんて無茶は言わないよ。ヴァンのことどうしても受け入れられないなら俺は…」
									「いいえ、喜んで受け入れますよ。仲間として」
											「え…」
									さっくりと認める発言をしたのは…
											「ジェイド! いい…のか?」
											「仕方ありませんよ。認めない…と言ったら、ガイ、あなたはヴァンを連れてこのパーティーから出ていくつもりでしょう?」
											その言葉に、パーティーメンバー達は「そんな!」と顔色を青くする。
									「まあそれも仕方ないと思ってたけど」
											と苦笑するガイに
											「冗談ではありませんよ。あなたがこのパーティーから抜けてしまったら、誰が頭の堅いティアとナタリアをフォローして、アニスと私の玩具になって、ルークと私の面倒を見るんです? ガイしかいないじゃありませんか」
											しれっとそうのたまうジェイドに、メンバー達もそうだそうだと頷く。
											「苦労されているのですねガイラルディア様…」
											「ううっ」
											ガイの目尻に涙が浮かぶ。
									「まあそれだけではありませんけどね。実際今我々は、情報が不足していて、八方ふさがり、かなりお手上げ状態です。ヴァン謡将、あなたが情報を隠すことなく提供してくださるなら、こちらとしても大歓迎なのですが?」
											そのジェイドの言葉を受けて、ガイがヴァンを促す。
											「ガイラルディア様がそう望まれるなら、全ての情報を提供することを約束いたそう」
											「ヴァン…ありがとう」
											ヴァンとガイはお互いに真摯な視線を送りあう。なんだか空気の色がおかしくないか…と二人以外の全員が思う。
											たった一晩で二人に一体なにがあったのか。
									立ち話も何なので、じっくりと話のできる場所に移動しようということで、ベルケンドの知事の屋敷の会議室を借りることにした。
									現在の状況を整理すると。
									ヴァンがルークを使ってアクゼリュスを崩壊させた後、ルグニカ平野で、やはり預言通りキムラスカとマルクトの戦争が始まった。
									だが預言には無いセントビナー崩落が起き、地殻の振動とセフィロトツリーの暴走によって、全外殻に崩落の危険がある状態だ。ルグニカ平野とケセドニアを含むザオ地方はルーク達の活躍で崩落前に地殻に下ろされて、瘴気の問題はあるが大きな被害は今のところ無い。
										
									停戦を勧めようとしたナタリアとルークは、モースの策略によって反逆者として捕らえられたが、アッシュによって救い出され、何とかベルケンドまで逃げ延びてきたのがつい昨日。
									そこで何故かアッシュに間違われたルーク達が、研究所にいるヴァンの元へと連れられて行かれることになった。
											ヴァン謡将との再会。だがその時点では、ガイやティアに仲間になれと告げたものの、こちらの仲間になるなどという意志は全く感じることは出来なかったのだ。
									その後、アッシュがノエルとアルビオール、イオンからの禁書を渡すと、また一人去って行った。
									そして今朝、いきなりヴァン謡将が仲間になった。……。
									訳が分からないことだらけなのだ。
									
									ジェイドが解読した禁書の説明を終えてから。
											「では長くなりそうですが、まずあなたが進めようとしていた計画の概要をお話しいただけますか?」
											そう促すと、ガイもヴァンに視線を送る。
									それに一つ頷きを返してから、ヴァンは驚愕の計画を語り出した。
									ユリアの秘預言によって、近い将来、障気によって大地が覆われ、この世界の人類は消滅する。
											ヴァンとモースは別の目的を持って、同じ計画を進めようとしていた。
									ヴァンは預言の無い世界を作るために、今ある世界を崩壊させ、第七音素とフォミクリーで新世界を作り出す。
											モースも預言の成就のために人類の消滅はもはや逃れられないと認めた上で、自らが君臨する新たな人類世界の構築という野望のため、ヴァンの計画を推進していた。
									
											「世界消滅の秘預言…ですか」
											「それは本当なの兄さん!」
											「ヴァン…」
											初めて聞かされる途方もない計画の中身に皆やはり驚愕するしかない。
									だがガイは、今までヴァンと共に果たすのだと信じていた敵討ちという夢想からあまりにもかけ離れた計画の内容に、内心打ちのめされる気分を味わっていた。
											瞳を暗くするガイにヴァンが気づかないはずもなく。
											「いずれきちんとお話しするつもりでした。お話しできない訳があったのです…」
											と悲しい顔をする。
									「どうしてその計画を止めて、こちらに着く気になったのか、伺ってもよろしいですか?」
											淡々とジェイドの質問は続く。
									「昨日、研究所でおまえ達に会った後のことだ。ガイラルディア様がこちらの仲間にならない返答をされていたことで、副官がこう言った」
									それほど気に入られているのでしたら、レプリカを作ってお側に置かれてはいかがでしょう?
									ヴァンの側にいたリグレットの言葉だろう。
									
											「その言葉で、私はようやく、雷に打たれたかのように悟ったのだ。
											たとえレプリカのガイラルディア様が百万人いようと、ガイラルディア様の代わりにはならない。そんな簡単なことが、今の今までわからなかった。
											そしてそのお陰で更に気づくことができた…。
											私はユリアの預言を忌み、それに従う人々のこの世界を早期に崩落させ、レプリカによる新たな人類の世界を築くことで、消滅の預言を回避させるつもりだった。
											だが、レプリカは決してオリジナルの代わりにはならない。レプリカはレプリカという新たな個なのだ。
											今存在する人類を消滅させたなら、その後いかにレプリカで補充したとしても、それは消滅の預言の成就に他なら無い。
									つまり私は、自らの手で嫌悪する預言を実現させようとしていたのだ…。そんな当たり前のことに、ようやく気づくことができた…」
									「ヴァン……」
											「ヴァン師匠…」
									昨夜時間が無くて聞くことができなかったヴァンの真実の思いを知って、ガイはヴァンを信じていこうと新たに決意する。
											レプリカと謗られ続けたルークも、師匠の改心が自分のことも認めてくれるものであるように感じていた。
									
											空気が落ち着いてから、ジェイドが話をまとめる。
									ヴァンの情報と、イオンが渡してくれた禁書の解読から、今後なすべき事を導き出す。
									まず地殻の液状化や瘴気の問題、全外殻の崩落の危険など、第七音素に関係する全てについて調べることは続行。
										
									秘預言に読まれている、マルクトの王の死を阻止するために、グランコクマへ行く。
									モースからイオンを匿うためにダアトへ向かう。
									ここでヴァンが更に爆弾発言をした。
											「それからそこの小娘はモースの間者だぞ」
											「!!!!」
											「アーニース。そうなのですか?」
									他の面々とは違い、驚きもせずにジェイドが確認する。
											アニスは親の作った借金のせいで、モースの命令に従っていたのだと告白した。
									「ではまずダアトでイオン様とタトリン夫妻を回収し、グランコクマに匿ってもらいがてら、マルクトに協力を仰ぎましょう。秘預言は人類全ての消滅を謡っているのでしょう。我々だけで頑張っても仕方ありません」
											その方針にほとんど異論は無かったが、ティアが疑問を投げた。
									「アクゼリュスと今回のルグニカでの戦争は、マルクトが完全に被害者です。加害者であるキムラスカとローレライ教団に関わることで、マルクトの協力が得られるでしょうか」
									教団の一員としてティアは辛い気持ちだった。兄の言うことが真実なら…、いや、先日モースが戦争を起こそうとしていたことも、ナタリア達への辛い仕打ちも目の当たりにしてきたばかりだ。
											そのナタリアとて、自国の清廉潔白を心から信じてマルクトの皇帝に高らかに唱ってみせたのはつい最近のこと。
											だが実際は、戦争は始まってしまった。キムラスカにもたらされるという、未曾有の繁栄を信じて。
									同じ世界にいながら、こうも見えている世界は違ってしまうものなのか。
									
											そしてティアの発した疑問に対する答えは
									世界で起きた悲劇の裏側を十分知ってきたはずのガイを
									大きく揺るがすことになってしまう。
									
											「問題ない。マルクトにもつつかれて痛い腹があるからな」
											「つつかれて痛い腹…? 大佐、それは何なのですか?」
									少しだけ、ジェイドは困った顔をする。それはヴァンに対してというより、ヴァンを通してガイに…という視線だった。
									「ホドはキムラスカによって落とされたとされていますが、本当はマルクトが崩落させた…という事実のことですね。ヴァン謡将」
									その衝撃的な言葉に全員が驚愕した。
									しかしもっとも酷く混乱したのはやはりガイだった。
									「なんっ… なんだっ……て!?」
											「ガイラルディア様…」
											「お前っ…は…知ってて…… だったらじゃあ…何でキムラスカ…に。でもファブレは…」
									混乱しすぎてうまく言葉が繋げないガイを、ヴァンは辛い気持ちを押さえて落ち着かせる。
									「ガイラルディア様には、できれば知って欲しくは無かったのです。だから、計画のこともお話しすることができなかった」
									
											キムラスカのファブレ公爵旗下の兵によってガルデイオス家は親類ともども惨殺され、ホド崩落によって故郷とそこに住む全ての人々
											を失った。
											ペールに救い出されて絶望のまま過ごした日々。そして復讐を決意した。他になにも残されていないと…そう思っていたから。
											ファブレ公爵に失う痛みを味あわせてやりたい。それを命じたであろうキムラスカ王にも。使用人として敵の家で耐え忍びながら、それでもどこか、マルクトが自分の故国であるという思いが支えになってくれていた。
									だがヴァンは言う。ホドの崩落はユリアの預言に詠まれていたために起こされたのだと。だとしたら、マルクトとキムラスカ、そしてユリアシティと教団。ホドはそれら全てから見捨てられた地だと言うのか。
									「ガイラルディア様には、知ってほしくは無かったのです。知ればただ、絶望しか残らない…。キムラスカへの復讐ならば、まだ生きることに希望を持っていただける」
											「けど…お前は…お前だけはそれを知って。たった一人で絶望して、妹にも隠して。一人で抱えて……」
									そしてジェイドは言う。
											ホドにあったフォミクリーの実験施設の情報をキムラスカに渡さないために、当時被験者だった少年を実験施設に無理矢理つないで超振動を起こし崩落させたのだと。
									「被験者の少年は記録では当時11才。フェンデ家…でしたか」
									ジェイドのその言葉に、ティアも更なる衝撃を受けたが、ガイの受けたそれは遙かに上回っていた。
											「ま…さかヴァン………おまえなの…か…。ヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ」
									そのガイのようやく吐き出した言葉の意味が、ルーク達を震撼させる。
									ガクガクと震える身体を耐えるガイを、辛すぎる気持ちで見守りながら、ルークたちはかける言葉を持つことを許される立場になかった。
									「私の力が…ホドを崩落させたのです。あなたに知られることをずっと…恐れ続けてきました」
									ヴァンはそこから先の言葉を紡ぐことはできず、椅子の背に重く身体を預け、眉根を寄せて目を閉じた。
									だが
											頭から肩にかけてを熱い身体にぎゅうと包まれる感覚で、ヴァンは再び視界を得る。映るのは使用人の衣服の一部。触れる身体は悲しいくらいに震えている。
									「俺…はっ おまえの苦しみを今まで…何一つ分かってなかっ…た。話して欲しかった…。絶望を分かちあいたかっ…た。世界全部に見捨てられても…お前の隣でちゃんと痛みを一緒に受けたかった…っ。なのにお前は、一人で全部抱えて、俺は守られてなにも知らないまま…」
									あの日、一族が集まった祝賀の場にヴァンデスデルカは来ないのだと知らされた。
											一番祝って欲しかったのに。
											いつだって優しいヴァンデスデルカ。どうしてお祝いしに来てくれないんだろう。なにかいけないことをしたから、僕のことを嫌いになってしまったのかな…
									悲しかったことは覚えているが、その後は記憶がほとんど無い。
									その時ヴァンデスデルカは、実験装置に無理矢理繋がれて、愛しい故郷を、大切な人ごと崩落させられたのだ。
									それを知らずファブレの屋敷で再会を喜んで、相変わらずの包み込むような優しさに甘えきってきた。
											一緒の悲しみを分かちあっているのだと、脳天気にそう信じていた。
									そして、ガイにはどうしてもヴァンに謝らねばならないことがあると気づいた。
									「ごめん…すまないヴァンデスデルカ…。お前を守ってあげられなくて」
											「ガイラルディア様…?」
											震える身体を抱き返しながら、ヴァンはガイの謝罪の言葉を不思議に思って何故かと問う。
											「どうしてガルディオスは、お前を実験になんて差し出したりしたんだ。フェンデを守るのが…ガルディオスなんだろう?」
											「フェンデとガルデイオスの関係をご存知だったのですか」
											「成人の日にペールが教えてくれた。ユリアの子孫のフェンデ家を守るのがガルディオスなのだと。けど、なんとなく今の関係を壊したくなくて剣を捧げられるままにしていた。いつかお前を守るほどに強くなれたらと。俺があの時お前になにが起きているのか知っていたら。父上達になんとしても止めさせるように…」
									すまないと繰り返すガイをヴァンは宥めるように背を撫で続ける。
											「ガイラルディア様が生きていてくださったことこそが、私の喜びでした。私の力が大切な人を殺してしまったと思い悩んでいた絶望から解放されましたから。あなたの故郷を壊してしまいましたが…」
											「お前のせいじゃないだろう」
											「そうですね。悪いのは…預言と、それに支配される人々です。死霊使い殿も」
											「そうですね。まったくその通りですよ。謝罪すべきは私ですガイ。謝って気が済まれるならいくらでも」
									ジェイドの開発したフォミクリーが発端になっていることは確かだ。
											だが謝られてもなにも解決しない。
											ガイがヴァンに謝っても、ヴァンの苦しみは解消されないのだと気づく。
											分かったよ旦那、とガイは気づかせてくれたジェイドに感謝する。
									「仲間になってくれてありがとう。真実を教えてくれてありがとう。ヴァン。これからはちゃんと俺が…お前を支える」
											だから一緒に生きて欲しいという願いを込めて。
									ヴァンは驚きに目を見開いて、その与えられる喜びの大きさにただただ、ガイの身体を抱きしめるしかなくなった。
											「…あなたという主人を持つことができて本当に幸せです」
											ようやく絞り出すように言葉を紡ぐ。
											「俺はお前の主人じゃないだろ?」
											とまどうガイに、そのことなのですが、とヴァンは一度抱きしめている身体を離して、隣の席にガイを座らせ、ゆっくりと語り出す。
									「フェンデとガルディオスについて、私もユリアシティで秘史実を知ってから、気になって調べたことがあるのです。はっきりとはしませんが、実際には、主従は入れ替わってはいないようなのです」
									どういうことなのです?と、ガイではなく、ジェイドが疑問を挟む。
											ガイは少し落ち着いて来た気持ちを整理するためにも、フェンデとガルディオスの主従の入れ替わりの関係を説明した。ティア達も驚きながら聞き入っている。
									「ですが、それも違うようなのです」
											「? なにが違うんだヴァン?」
											「史実をたどっても、入れ替わりは起きていない。最初から、フェンデはガルディオスに忠誠を誓う関係にあったようなのです。実際、ガルディオスの右の騎士として、多くのフェンデ家の者が主人を守るために命を落としています。主従が入れ替わっているだけなら起こり得ないことです」
											なるほど、興味深い話ですねとジェイドだけが相づちをうつ。
									「元々、ガルディオスがフェンデの主人だったことは間違いないと思います。このカラクリに、なにかユリアの預言と重要な関連があるのではないかと疑っているのですが、まだ調査しきれていないのです」
									ガイの剣の流派が、フェンデのアルバート流の弱点をつくための流派であることも関係しているのだろうかとガイは疑問に思う。
									「それに、ガルデイオス伯爵が私をフォミクリーの実験に差し出したことも、悲劇がちょうどあなたの誕生日だったことも、偶然では無かったのだと考えています」
											「それは…どういう」
									「私の名ですよ。ヴァンデスデルカ…。秘預言の第七譜石はフェンデ家にあったのです。だから知らないはずがない。ホドを誰が落とすのか、それがどの日に起きるのか」
									「……!!! あ…」
											「もしかすると、ユリアの消滅秘預言への策として、大きな手がかりが与えられていることなのかも知れない」
									ユリアが自らの子孫を全て犠牲にしてまで、伝えようとしたなにかがあるのだと、ヴァンの語るそれを全員が息を飲んで聞き入っていた。
									
									それからジェイドが、前回魔界を飛んだときに見たセフィロトツリーの暴走について考察し、第七音素の現象についての大規模なフォミクリー実験場についてヴァンが語る。
											そしてルークの超振動が救いとなる可能性が高いこと、いっそいずれ支えきれなくなるなら外殻大地を安全に降下させてしまうのはどうか、そのためには魔界の障気や液状化をどうにかしなくては…と長い議論と情報の確認が行われた。
									
											結局その日には出立はできなかったので、翌日ベルケンド港から、アルビオールでダアトに向かうこととし、ヴァン達は研究機関のスビノザに改めて協力と情報提供を求めた。
									それだけでもう日暮れに街はすっかり染まっている。
									
											「何だか長い一日だったな」
											「いっぱい頭使ってさすがに疲れたよ」
											「衝撃的すぎるお話ばかりで まだ全部を受け入れられておりませんわ…」
											「だねー」
									疲れた身体をホテルに向かわせる一行。
									「あの…ガイ…」
											「なんだい?ティア」
											「…………兄さんを…説得してくれて…本当にありがとう。兄がどうしてあんなに預言を憎んでいたのか理解できて…私もなにも知らなかった自分がなさけなかった」
											「けどこれからは違うだろ?」
											その暖かい花咲くような笑顔に、ああ兄はこの人が本当に失えないのだな…ということも理解しつつ、ティアもまた感謝をこめて微笑み返す。
									
									ホテルで改めて部屋を取ると、ヴァンが当然のように、ガイとの同室を堂々と希望した。
									ガイは感傷的な気分が全部吹き飛んでしまい、隣にいたルークに助けてくれ!と視線を送ると、ヴァンがそれを見咎めてくる。が、意外にも死霊使いから一言牽制が入った。
									「ガイを泣かせるようなことがあったら遠慮なく私が奪いますので、そのつもりで。ヴァン謡将?」
											その煽りに青筋をびきびきたてながらも、ヴァンの行動をそぐにはいたらず、ガイは悲惨な表情のままダブルベッドがあるという、この宿のスイートルームへと引きずられて行ったのだった。
									
											
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