ヴァン幸せルート小説 8
											
											
											
										
									
									甘い空気の漂うはずのベッドの上で、
											ガイはヴァンの元気なものを握りながら、思考を停止して固まっていた。
									一方、握られたままのヴァンは、初めてのガイラルディアからの積極的な求愛行動に、
											…勝手に感動しきっていた。
									伴侶になるというガイの言葉質をとったのを良いことに、かなり強引な行為をしてきた自覚はそれなりにあったので(あったのか…)ガイからの行為というのは、ヴァンには予想外で素直に嬉しいことだった。
									しかし、ガイはそこに手を添えたまま、一向に動こうとしない。
									どうしたら良いのか分からないのだろう。
											初なことだ…。
									とヴァンはまた勝手に納得し、笑みの形に目を細めた。
									
											ガイの方は命の危機を悟って固まっていただけなのだが。
									
									ヴァンは慈しむようにガイの頬や額に口づけながら、
											「……ぁ」
											ガイのその手に、自分の手を添えた。
											重ねられた手の熱さにも驚いて、ガイは手を引こうとしたが、その手ごと押さえられてしまい、
											「!!!」
											欲を吐き出したばかりのガイのそれに、ヴァンはガイの手の添えられている自身を束ねる。
											そしてゆっくりとガイの手を使って刺激を与え始めたのだ。
									「ヴァっ……ンっ」
											若い雄は簡単な刺激ですぐに堅さを取り戻してしまい。
											その単純な反応を自分の手とヴァンのモノで感じることになって、もう恥ずかしいのか何なのか。
											耳元にかかる熱いヴァンの息が余計に頭をクラクラとさせた。
									「ふぁっ…はっ……ぅ」
									自分が他人のものをそうする日が来るなんて…。
									ヴァンは容赦なくガイの手を使ってくる。
									ここで積極的にガイが動くことができたのなら、当初の目論見通りヴァンをアンアン言わせることに成功したかもしれないのだが。
											もうヴァンのものに奉仕させられているのか、ガイ自身をヴァンの前で慰めさせられているのか、手の動きが速さを増して息があがってくると、ガイにはもう何が何だか分からなくなってきて、
									「!あっあっ…ヴァっ!!」
									…やっぱり喘がされてしまうのだった。
										
										
										
										
									
									
									
									
											どちらが先に果てたのかは分からない。
											息が上がっているというのに、ヴァンにしつこく舌を絡める口づけを続けられて、耳元で名を呼ばれたような気もするのだが。
											気づいた時には、腹にヴァンの熱いものを受けていたみたいだった。
									とにかく頭がぼんやりとしている間に、ヴァンがてきぱきと身体を清めてくれたらしい。
									ふわ…と髪を撫でられて。
									「ガイラルディア様…ありがとうございます…」
									それが色を含まない、ただ優しさに満ちた暖かさだったので。
											
											ガイはそれまでの混乱をうっかり忘れて。
									ただただ心地良く、ヴァンの肩に額を擦り寄せた。
									
										
										
										
										
										
										
										
										
										
										
										
									
									
											次の朝も、ガイはヴァンの腕の中で、暖かさに包まれたまま目を覚ました。
										
										
										
									
									ガイの額あたりに寄せられているヴァンの頬を感じる。
											こうして大人しくしているヴァンならばガイにとっては微笑ましいもので、擦り寄る身体も甘えられているような感じもして、くすぐったい気持ちになる。
									ここ数日で知ることになった、辛い真実や過去の記憶。
									それに必要以上に引きずられることが無く済んでいるのは、
											こうしてヴァンが自分と共に在ってくれるからなのだ。
									…ガイはこの温もりをその手にしている奇跡のような展開に、深く感謝し続けていた。
									
											敵国に害され自国に見捨てられたホド。
											その重すぎる真実からずっとガイを遠ざけてくれていたヴァン。
									そして彼はたった一人で、この世界を変えてしまおうとしていた。
											呪われた預言と盲信者達の世界を。
									そして良くも悪くも、ヴァンはこの世界を既に劇的に変えてしまっている。
									ユリアの滅びの預言から逃れるために、ヴァンは選択肢の一つを選び、これまで断固実行してきたのだと今は理解できる。
									けれど時間をかけて準備してきたその計画を捨てて、違う選択肢を選び直してくれた。
											ガイのために。
									
											だから今度は、自分がヴァンを守る…とガイは密かに誓いながら、ヴァンの背に腕を回してそうっと撫ぜる。
									その広い背中も全部包みこみたくて。
									ヴァンがその深い色の瞳を開いて、優しく甘く響く声で幸せそうに朝の挨拶をするまで。
											ガイはヴァンに優しく触れ続けたのだった。
									
										
										
										
										
										
										
										
										***
									
										
										
										
										前日の夕刻にアルビオールの点検は全て終了したとヘンケンから連絡が来ており、いよいよ空路でマルクトの首都へと向かう日を迎えた。
									ゆっくりと朝食を済ませてからヘンケン達にお礼と挨拶をし、メンバー全員はドッグで機に乗り込んだ。
									
											「いよいよグランコクマですのね…」
									シェリダンでのこの数日がとても楽しくあったので、緊張を含んだナタリアの言葉にメンバー達も緩んでいた気を引き締める。
									預言、戦争、外殻大地の降下と崩落の危機、瘴気………
									山積する難問をたっぷりとプレゼントしに行かなくてはならないのだ。
											ヴァンとイオン、そして国を追われた姫と王子のレプリカを連れて。
									展開次第では、マルクトの協力は得られないかも知れない。
											だがそれでも世界は変わるのだ。
											すでにその一歩は踏み出されてしまっている。
											最善の方向に向かえるよう、たくさんの人々を説得し、知恵と技術とを結集しなくてはならない。
									この少人数で“世界”と対峙する。
											その重さを誰もが身に感じながらも。
									「ま、なるようになるでしょう」
											「そーだな。まずは旦那に頑張ってお偉方にこの面倒な状況を説明してもらわないとな」
											「おやおや。説明といったらガイでしょう」
											「あんたが自分で説明するの面倒がって、毎回俺に押しつけてただけだろーが!」
											「あらでも、ガイは説明が上手だと聞いていて思いましたわ」
											「そーだね、色んな立場の状況を一番分かってるのがガイだし。融通が利かなくて堅苦っくるしかったり、熱血に突っ走り過ぎたり、勝手に反省し過ぎたり、高潔すぎたり、適当すぎたりアレすぎたりしなくって、丁度良いんだよねー」
											「それは誉められてるのか、メンバーに問題が多すぎるのか悩むとこだなー」
											ジェイドがボケるので皆で突っ込む。わいわいと他愛もないことをお喋りしながら。
											アルビオールは海と空の狭間を順調に飛び。
									一路、マルクトの首都、グランコクマへと。
									
										
										
									
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