月の姫君 1(PG JG 他G)
									
										
										
										
										
										※JG PGですが、体だけの大人な関係。全員片思い的な微妙な関係です。ガイはキムラスカでいろいろ経験しちゃった設定です。
											※エルドラント崩壊後、ルークは帰って来ていません。
											※割とガイ女装ネタです。どんな話になっていくのか分かってないまま進みます〜
									オケでしょうか…
									
										
										
										
										
										
										
										
										
										「と、言うわけで、ちょっと女装して写真に収まって欲しいそうなんですよ」
											「いや、なんでそんな話になったんだよ」
									帝都グランコクマ。
											ジェイドの執務室に呼び出されたガイは、いつもの仕事の手伝いとは違った思いも寄らない頼まれ事に、(また妙なことに巻き込まれるのか…?)と内心頭を痛くしていた。
									「かなりそうそうたる面子から、私から貴方に話してくれと頼まれまして」
											「うーん…正直気が進まないなあ…」
											「一流のカメラマンに綺麗に晴れ姿を撮ってもらえますよ?」
											「いや、嬉しくないし」
											「まあ本筋は、あのバカ皇帝にお灸をすえるためですから」
											「…どっちにしろ拒否権は俺には無いんだろ?」
											「理解が早くて助かりますよ♪」
											ふふふと楽しそうにジェイドは笑った。
									
										
											世界中を巻き込んだヴァンデスデルカとの戦争から一年ほど。
									レプリカ達の処遇もほぼ決まり、まだ問題は残り続けているものの、世界は一応の安定に向かっていた。
											そんな頃。
									ルークの帰りを信じて待つガイは、マルクトの伯爵としてレプリカ問題の対策に当たる仕事をしながら、相変わらず皇帝のブウサギの世話係りなどもこなしていた。
											そして相変わらずジェイド・カーティス大佐にも余計な仕事を手伝わされていたりする日々。
											ほとんど休みなく働き続けているような状態なのだが、そんな日々がガイには丁度良い忙しさだと感じられていた。
									
											そんなある日の、ジェイドの執務室での妙な頼まれ事。
									女装して写真を撮られる…
									ジェイドは“頼み事”としているが、本当のところはマルクトの高位の貴族や重臣達からの、内々の“命令”で。
									ガイにはその頼み事を断る選択肢は無かった。
									
										
									
									少し話しを遡ると、流れはこうだった。
									
									
									「あのマルクトへの不吉な預言の件もありますが、とにかくピオニー陛下のご結婚を重臣達は急いでいる訳なんですけどね」
									数々の后候補のリストを前にピオニーは
									「俺は美人が好きだ!! 美人じゃないとイヤだからな」
											と宣ったのだそうだ。
									そこで候補の中でも美女達を選りすぐって見合い写真をピオニーに見せたところ、
									「悪いが皆、好みじゃないなあ」
									とあっさり全て没にしたのだそうだ。
									いつもこうしてのらりくらりと拒否され続けているのだが、今回ばかりは重臣達も食い下がる。ピオニーが美人だと思う具体的な人物なり基準なりをしつこく聞いたのだそうだ。
									するとピオニーはあろうことか
									「そうだなあ、美人の基準は……ガイラルディアだな。あいつ以下は認めない」
									と飄々とおっしゃったのだそうで。
									近年マルクト貴族に復帰したガルディオス伯爵は確かに若く見目がすこぶる良い。
											ピオニー皇帝が特に気に入っているのも周知のこと。
									だが男だ。
									結局、見合い相手がどんな容姿でも断ろうというピオニーの目論見である。
											重臣達はキレた。
									彼らは知恵を出し合って、見合い写真の中に、女装させたガルディオス伯爵の写真を混ぜようという計画を思いついたらしい。
									皇帝はまたロクに写真を見ずに全て却下するに違いない。
											そうさせてから陛下の審美眼に文句をつけて、元々順位の高かった后候補と強引に結婚させてしまおう、という計画なのだそうだ。
									四十路も近くなりつつある美貌の皇帝は、ガイにとってはマルクトに迎え入れてくれた恩人でもあり、大切な人物で。
											毎日ブウサギの世話をしながら陛下と過ごす一時はガイにとっても心休まる時間でもあって。
									その自分が重臣達の命令とはいえ、ピオニーを追いつめる計画に荷担しなくてはならないのは、少し…心苦しいものがあった。
										
										
										
										「けどまあ、そろそろ陛下も奥方を持っても良い頃だもんな」
											「ガイの仰るとおりですよ」
									ジェイドはガイと話しながら、積まれた書類にサインをしつつ、写真撮影は私も是非見学させてもらいたいです面白そうですからねぇ、と呟いてガイにイヤな顔をさせた。
									「ところで来週の話しですが、エルドラントへの研究視察の予定が入りました。今回も同行されますか?」
											「…今回も同行させてもらえるかな…いつもすまない…」
											「では申請書を出しておきますね」
											「ありがとう…ジェイド…」
									ジェイドは研究者としての立場から、エルドラントの視察に度々赴く機会があった。
											一般人の立ち入りが禁止されているので、こうして権限のあるジェイドに誘ってもらえる事がガイはありがたかった。
									爵位があると言っても新参の貴族であるガイは、大きな権限を持ってはいない。
											それでも陛下が気にかけて下さるお陰で、希望すれば色々な仕事に係わらせてもらえている。
									ガイが特に希望していたレプリカ達の保護活動も、最近何とか軌道に乗せることが出来た。もちろんジェイドをはじめ、各国の様々な人々の協力を得て。
											あの旅で出会った人々全てが、ガイにとっては宝物となっている。
									そこに、一番いて欲しい相手はいないのだけれど…。
									ルークが帰って来たときに、がっかりするような世界じゃ恥ずかしいからな…
											必ず帰ってくるはずだから。
									キムラスカでは世界を救った英雄として、ルークを称える記念の墓が建てられたと聞く。
											時の流れと共にその存在が薄く消されていくような気がして、ガイはそれに頑なにあらがっている。
										
										
										
										ちゅっという音がして、ガイは目の前の赤にただ驚いた。
									ジェイドの顔が近い。いつの間にか。
									唇が触れたらしい…と、ようやく感覚が追いついてくる。
									「ジ…ジェイドっ」
											「ボーっとしているようなら、ちょっと仕事手伝ってもらえますかガイ」
									確かに少しボーッとしていたけれど、注意するなら声をかけるとかで良いはず。いきなり何でキスとかしてるんだか。
											こんなジェイドのいたずらのような触れ合いは既に珍しいものではなくて、ガイはちょっとだけ困った顔をしてみせた。
									「で、何すりゃ良い?」
											「このリストの資料をそこの棚から拾ってもらえますか」
											「はいはい」
									仕事をしていれば考え込むことは無くて。ガイにはその忙しさが必要だった。
									
										
										
										
										
										
										
										
									
									
									次の日、貴族院で仕事に入ろうとした所で、写真を撮る手配が出来ているからと、早速呼び出されてしまった。
											撮影場所は宮殿内の部屋に用意されているとのことで、ガイは命じられるまま、部屋に足を運んだ。
									
											「なっ…なんでこんな面子が揃ってるんだよ…」
									撮影場所の部屋に予告通り見学に来ていたジェイドに、ガイは声をひそめてコソコソと話す。
									「そうそうたる面子に頼まれたと申し上げたはずですが?」
											「だからって何でその人達が見学に来てるんだよ」
											「まあ計画したからには様子を見てみたいんでしょう。陛下の見合いプロジェクトは現在一番重要な国家懸案なんですから。この計画に賭ける彼らの思いは並々ならないものなんですよ」
									それに巻き込まれている自分は何なんだとガイは頭を抱えてうずくまりたくなった。
											貴族院の重鎮はともかく、ノルドハイム将軍やゼーゼマン参謀総長までいるのはどうなのか。
									「さあ伯爵様、化粧をする前に色々下準備をいたしますから、こちらへ」
									女性恐怖症のガイのために、男性のコーディネーターが数人用意されていた。
											椅子に座らされ、メイクの前に肌に色々擦り込まれる。
									「お肌すべすべですね伯爵様」
											「髪も本当に美しい黄金色で用意したウィッグで色が合うと良いんですけど」
											「元々の睫が長いですから、つけ睫は少し足すくらいで…」
									よってたかって揉まれながら、ガイはどうにでもしてくれ…と諦めモードに入っていた。
									「軽いお化粧で十分お綺麗ですね」
											「後は衣装を合わせてからウィッグで仕上げていきましょう」
									化粧までの準備が済んで、衣装合わせのために椅子からガイは立ち上がった。
											貴族院に出席するための衣服を着たままだったので、青を基調とした首周りの空いた貴族らしい仕立ての衣服に、薄化粧をしたガイはそれほど違和感なく馴染んでいた。
									「おやこれはこれは、ドレス選びが楽しみですねえ」
									後ろ手を組んだまま見学をしていたジェイドがニコニコとからかってくる。
									重鎮達は揃って軍備の話をしていたのが聞こえていたのだが、ガイの化粧姿を目にして似たような感想を持ったのか、いくつかハンガーにかけられているドレスに意見を言い始めた。
									「こちらは少し派手ではありませんかな」
											「いやいや、若い娘ならばこのくらいが丁度良いのでは」
											「陛下の目に止まっても問題が」
											「いや、今回は文句のつけようの無い写真こそが必要とされておるのじゃから…」
									国家の重鎮達はそれなりに年を重ねた壮年から老年の男達。そんな彼らがドレスを真剣に選んでいる光景はちょっと現実離れしてるなあ…と ガイは人事のようにボーっと見ているしか無かった。
									
										
										
										
										
										
										
										
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