ある峠王国に可愛い(?)お姫様がおりました
黒い髪に黒い瞳が印象的で黒稲妻姫とか黒雷姫とか
呼ばれていましたが、本名は中里毅といいました。
ある時、峠王国の魔王涼介が
「黒雷姫はそろそろ食べごろだな…ふっふっふっ」
とつぶやいているのを聞いてしまった弟の啓介王子
「中里にげてええええ〜」
と、黒雷姫を魔王の手の届かない山奥に逃がしてくれたのです。
けれども、黒雷姫は山の中で啓介とはぐれてしまい
道に迷って食料も水もなくてへとへとに疲れてしまいました。
水くらいは持たせてあげればよかったのですが、啓介は
そういうことには気が利きません。
険しい山の中で黒雷姫はとうとう気を失ってしまったのでした…
そして気がつくと…
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黒雷姫が目を覚ますと、いつの間にかベッドに寝かされていて
周りをたくさんのナイトキッズたちが取り囲んでいました。
ナイトキッズたちは妙義山に住むちょっとガラの悪い集団でした
「オレは黒雷姫…毅でかまわないぜ。助けてくれてありがとうな」
ナイトキッズたちは、黒雷姫をひと目で好きになってしまいました。
そして王国に帰れない黒雷姫にここで暮らすようすすめました。
黒雷姫は面倒見がよかったので、ナイトキッズたちは
ますます黒雷姫が大好きになりました。
もっとも中には
「べ…べつにお前の作るシチューが美味しくてがっついてるわけじゃ
ないんだからなッ」
と、素直じゃないナイトキッズもおりました。名前は慎吾といいます。
それはさておき、今日は黒雷姫一人でお留守番の日です。
「なるべく早く帰ってきますから知らない人について行ったり
モノをもらって食べたりしちゃダメっすよ」
ナイトキッズたちは心配しながらも山の仕事に出かけて行きました
しかし…そこに…
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「やあ可愛いそこのきみ、美味しいRINGOはいかがかな?」
通りがかりのりんご売りが現れました。知らない人から物をもらって
食べないと約束していた黒雷姫はいらない…と言おうとしたのですが
「そ!そのりんごは!!」
そのりんごにはRの文字が…! 黒雷姫の弱点はなぜかRだったのです。
黒雷姫は震える手でりんごを受け取り…そして………。
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◆◆◆
「毅さんっっっ!!?」
山から帰ってきたナイトキッズたちは、床に倒れ付し息をしていない
黒雷姫を見つけておどろき悲しみました。
「毅!毅! どうしてこんなことに! お前がいなくなったら俺は」
あのツンデレのナイトキッズもこのときばかりは泣きくずれました。
花で飾った寝台に横たえた黒雷姫をかこんで、ナイトキッズたちの
悲しみは、妙義山に満ち満ちています。ところがそのとき…