◆0 そしてここ、妙義山の頂上の駐車場に集う走り屋達も、プロジェクトDの話題を口にしない日は無かった。
中里毅をリーダーとして擁するナイトキッズのメンバーにとってDの活躍は、そのまま自チームのリーダーの賞賛に繋がっていた。 何せ中里毅は赤城山レッドサンズ時代の高橋啓介や、秋名のハチロクこと藤原拓海と名勝負を繰り広げた走り屋なのである。 しかし、当の中里は、その話題が耳に入る度、微妙な心境にならざるを得なかった。 何せ、その二人とのバトルでは、それぞれに敗北を喫している。 ハチロク戦ではハチロクの見事な走りに感銘を受けたものの、タイヤの消耗をコントロールしきれずにゴールまで競り合うことができなかった。 チームのプライドを賭けて戦ったレッドサンズ戦では、見た目の結果としては鼻差数センチの敗北だったが、高橋啓介にタイヤの使い方の荒さを指摘され、技術の差だと断言されて、それを認めざるを得ない、決定的な敗北だった。 あれから必死に走り込みを繰り返し、タイヤの使い方という課題もクリアし、そのお陰で因縁の相手と目していた島村栄吉にも勝利することができた。 高橋啓介やハチロクとのバトルが無ければ、自分の走りが今の域に達することはなかったのかも知れない。だから、彼等とバトルできたことを毅は素直に感謝している。 「それで毅さん、実はオレ、Dのおっかけしてるヤツと最近知り合ったんすよ。次の茨城戦の場所情報教えてもらえたんで、皆で行ってみませんか? 毅さんこないだ、ゴッドフットの走り見てみたいって言ってたじゃないっすか、同じ茨城だし、もしかすると観戦に来るかも知れないですし」 |