啓介×中里

小説見国かや
『責任とってネ!』


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高橋涼介がプロジェクトDと銘打って関東近県に遠征を始めてから数ヶ月が経っていた。
チームのダブルエース、高橋啓介と藤原拓海によって数々の勝利の記録が打ち立てられ、その活躍は走り屋達に強烈な印象を与え続けている。
最近では、どの峠でも走り屋が集まれば、プロジェクトDの話題となる。
羨望や嫉妬の声もあったが、こと群馬に限って言えば、プロジェクトDを賞賛する声が殆どであった。
啓介達が勝利し活躍すればするほど、群馬の走り屋のレベル全体が高いという評判に繋がるからだ。
群馬の走り屋達にとって、プロジェクトDとそのダブルエースは、“群馬の誇り”だと評されていた。

そしてここ、妙義山の頂上の駐車場に集う走り屋達も、プロジェクトDの話題を口にしない日は無かった。
だが、この峠をホームコースとする妙義ナイトキッズのメンバー達にとって、Dの活躍は少し違った捉えられ方をしていた。


「プロジェクトDは、茨城戦が済んだらの次は神奈川で最終戦になるみたいっすね」
「神奈川って言えば、毅さんの方が先に、箱根サンダーソルジャーズの島村ってヤツに勝っちまってるけどな」
「そうだよな、プロジェクトDのダブルエースと競り合った走り屋は、群馬じゃ毅さんだけだもんな」
「高橋啓介やハチロクがすげーってことは、毅さんもスゲーってことなんだよなー」
「毅さん最近ますます調子良いし」

中里毅をリーダーとして擁するナイトキッズのメンバーにとってDの活躍は、そのまま自チームのリーダーの賞賛に繋がっていた。

何せ中里毅は赤城山レッドサンズ時代の高橋啓介や、秋名のハチロクこと藤原拓海と名勝負を繰り広げた走り屋なのである。

しかし、当の中里は、その話題が耳に入る度、微妙な心境にならざるを得なかった。

何せ、その二人とのバトルでは、それぞれに敗北を喫している。

ハチロク戦ではハチロクの見事な走りに感銘を受けたものの、タイヤの消耗をコントロールしきれずにゴールまで競り合うことができなかった。

チームのプライドを賭けて戦ったレッドサンズ戦では、見た目の結果としては鼻差数センチの敗北だったが、高橋啓介にタイヤの使い方の荒さを指摘され、技術の差だと断言されて、それを認めざるを得ない、決定的な敗北だった。

あれから必死に走り込みを繰り返し、タイヤの使い方という課題もクリアし、そのお陰で因縁の相手と目していた島村栄吉にも勝利することができた。

高橋啓介やハチロクとのバトルが無ければ、自分の走りが今の域に達することはなかったのかも知れない。だから、彼等とバトルできたことを毅は素直に感謝している。
Dのダブルエースとしての活躍も応援している。
…だが

「それで毅さん、実はオレ、Dのおっかけしてるヤツと最近知り合ったんすよ。次の茨城戦の場所情報教えてもらえたんで、皆で行ってみませんか? 毅さんこないだ、ゴッドフットの走り見てみたいって言ってたじゃないっすか、同じ茨城だし、もしかすると観戦に来るかも知れないですし」
ナイトキッズの中でも情報通のメンバーにそう問いかけられて
「あ…いや、そうだな………」
毅は口ごもってしまったのだった。




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