chapter4-2.Music room
学食から音楽室までは少し離れていたけど、その間、モンスターに遭遇する事なく辿り着いた。
「ここか……」
少し緊張したのか、ジェイクは一言呟いてから、音楽室のドアを開けた。
そこは、いつもの、見慣れた音楽室だった。
机といすが並んでいて、前の方には黒いグランドピアノが置かれてある。
奥の扉は、確か準備室につながっていて、楽器が保管されているはずだ。
中に入って見ても、特に変わった様子はないけど、ここからどうすればいいんだろう?
「あそこ……。何か、ないか?」
「ピアノの上?」
ジェイクの視線の先……、正確には、ジェイクのアバターの進行方向にあるピアノに、白くて四角い部分がある。
あれは、あそこだけ色が違うんじゃなくて、たぶん、紙のようなものが置かれているんだと思う。
僕とジェイクは、ピアノの傍に近寄った。
ジェイクが、その四角い部分に触れてみると……。
ジャァンッ!!
不協和音が、鳴り響いた。
そしてピアノの蓋が、くわっと開くと、僕たちに襲いかかってきた!!
「ピアノがモンスターかよ……! フユ、大丈夫か!?」
「うん、僕は大丈夫」
「それじゃ、行くぞ! きつねうどんの効果を試す時だ!!」
言ってる意味はわかるけど、ぜんっぜんRPGっぽくない台詞だなあ。
ジェイクの言葉に、僕は吹き出しそうになりながら、戦闘準備に入った。
A定食の効果も発揮されますように、と思いながら。
「すっげー! きつねうどん、パネェ……!」
巨大な口、じゃなくて蓋をワニのように上下しながら襲いかかってくるピアノの攻撃を、ジェイクはひらりとかわした。
重い鎧を装備しているとは思えない、身軽な動きだ。
さっきから、ほとんど攻撃を受けていない。
学食のきつねうどんは、確実にジェイクの素早さをアップさせたようだ。
なので、僕が回復魔法を使う機会はあまりない。
このままだと、MPを温存させたまま、戦闘終了になりそうだ。
そう、思っていたら。
ピアノが、ひときわ大きく飛び跳ね、とても避けきれないようなスピードで、ジェイクに向かってきた!
それに気を取られていると、ジェイクからメッセージが飛んできた。
「フユ! 後ろ!!」
ハッとして、後ろを振り返る。
準備室のドアが開いて、中からフルートが、くるくる回りながらこっちに向かってきていた。
標的は、どうやら僕らしい。
「俺はいいから、フユはそっち相手して!」
叫ぶようなジェイクのメッセージが流れてきたけど、ジェイクは今にもピアノに丸飲みにされそうな勢いだ。
僕は……
1.
「わかった!」フルートの攻撃を防いだ。
2.
「でも……!」ジェイクの加勢に回った。