*熱視線*



ゼーレ学園での生活はカヲルにとって、思いがけない穏やかな日々だった。彼を苛めたりバカにしたりする連中と完全に縁が切れたことで、これまでのように余計な緊張を強いられることもなく、カヲルは初めて普通の学校生活というものを満喫していた。もちろん彼自身の心身両面での変貌が、新しい環境での暮らしに大きくプラスになったことは疑う余地もなかろう。未だに学力だけは大きな不安が残るものの、転入初日の躊躇いが嘘みたいに毎日元気に登校するカヲル。けれども、芸能コースの生徒としては痛し痒しだった。なぜなら皆勤できるのはまるっきり仕事のない証拠なのだから。アスカをはじめとする”リリス”の3人などは週の半分くらい学校にやって来れば良い方で、その場合ですら一日中滞在することは稀だった。程度の差はあれど、他の生徒たちも事情は似たり寄ったりで、全く休まないのはカヲルだけといっても過言ではなかった。
「カヲル、どうしたんだよ?最近朝から生あくびの連続じゃないか。どうせ下校後だって失業状態なんだろ。」
「ケンスケにはわからないだろうけど、僕だっていろいろ大変なんだよ。」
学園で初めて話をしたのが縁で、クラスは違うもののカヲルはケンスケと結構親しくなっており、休み時間には互いの教室を行き来して、こうして会話することも頻繁だった。さすがにジャーナリスト科の生徒だけあって、ケンスケは大変な事情通で、この業界に疎いカヲルにはいいナビゲーター役だったし、単なる知識だけの芸能オタクではなく、物事に対する彼なりのしっかりした見解も持ち合わせていた。
「大変って、音痴克服のための秘密レッスンでもやってるのか?」
別に隠す必要のある類の出来事でもないし、ケンスケだけには先日のデビュー延期の経緯をあらかた話してある。
「違う、違う。すでに僕の歌のことなんて話題にも登りゃしないよ。それどころか、社長も碇さんも意識的にその話を避けているみたいなんだ。」
「よっぽど凄まじい歌唱力なんだな・・・・・。怖いもの見たさでちょっと聴いてみたいような気もするけど(^^;;;;;)。」
「なんだよ、それ。僕の歌は場末のアヤシイ骨董品屋かい。」
ほっぺたをぷうっと膨らませて、カヲルはケンスケを軽く睨み付ける。
「そんなに怒るなよ。でもレッスンじゃなかったら、いったい原因は何なんだ?」
「ホームページ作りがちっともはかどらないんだよ。」
「ホームページ?」
想定外の答にケンスケが興味津々といった様子で身を乗り出した。彼は将来の仕事道具たるカメラ類はもちろん、パソコンなどの電脳関係についても、学園内のお悩み相談を一手に引き受けているほど詳しかった。クラスメートのみならず、教師たちまでケンスケにお伺いを立てている光景をカヲルは幾度となく目撃している。
「そだよ。僕、正式デビュー前の最初の1歩としてネットアイドルになるんだ。」
「フツー、ネットアイドルは女のコだぞ(ーー;;;;;)。」
数十秒の沈黙の後、ケンスケはようやくこれだけ言葉を絞り出した。どうやら思いっきり退かれてしまったらしいが、一旦口に出したからには相手の反応には目をつぶって堂々と語るしかない。
「うちの事務所激貧だから、これくらいしか方法が残っていないんだよ。」
「・・・・・・・・・・なるほど、金をかけずに全国レベルで顔を売るチャンスを作るにはもっとも効果的かもな。」
内情を説明した途端、ケンスケはあっさり納得してくれた。この先の話が続けやすくなったのは良かったが、そこまでネルフプロが苦しいと認識されているのはちょっぴり寂しくもあった。
「だけどカヲルひとりで作成してるのか?」
「ううん。一応社長と碇さんも協力してくれてるけど、なにしろ二人ともオジサンだろ。僕よりパソコンに疎くて、全然役にたちゃしないんだ。」
「ハハハ。超のつく機械オンチのお前がぼやくようじゃよっぽどひどいんだな。」
「笑い事じゃないよ。おかげで帰宅してから毎晩さっぱりわからないHTMLの本とにらめっこで、もういい加減うんざりさ。」
ここまで言いさして、カヲルはまた大きなあくびをひとつする。
「作成ソフトっていうものがあるじゃないか。」
「一応買ったけど、誰も説明書読もうとしないし・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・そりゃあ確かに前途多難だな(^^;;;;;)。」
カヲルの並外れた機械不適応ぶりを間近で何度も見せつけられているだけに、心の底からこの状況を気の毒に思い、ため息混じりにケンスケは呟いた。
「それだけじゃないよ。ページに載せる僕の写真も自前でこしらえるしかないから、碇さんたちに撮ってもらってるんだけど、これがまた信じられないくらいへっぽこなんだ。被写体をまともにフレームに入れることすら出来ないんだもん。これじゃ僕が自分で撮ったほうがまだマシだよ。」



「あのな、客観的に言って、このままじゃホームページは絶対に完成しないと思うぞ。」
「・・・・・・・・・・やっぱりケンスケもそう思う?」
「ま、誰か優秀な指導者がいれば別だけど。」
「えっ。」
きょとんと口を半開きにしているカヲルに向かって、ケンスケが得意げに胸を張りながら言った。
「どうだい?この僕を作成スタッフとして雇わないか?」
「ケンスケを?」
「頼まれて知り合いの劇団のサイトを作成した実績もあるし、そんなみっともないものは作らないと思うよ。」
まだまだ短い付き合いだが、それでもケンスケがこの方面に並々ならぬ技量を持ち合わせているのはカヲルもよく分かっている。今のところ校内でもっとも親しい友人でもあるし、悪くない申し出だった。たったひとつの問題を除いては。
「ねえ、ケンスケ。君の申し出はとっても嬉しいし、ありがたいけど、知っての通り、うちの事務所残りHP10を切ってる惨状だから君に十分な謝礼をすることは出来ないと思う。」
いくら友人だといっても、いや、だからこそむざむざタダ働きをさせるわけにはいかない。せっかく出来た友達を一方的に利用するような真似はしたくなかった。
「そんなのわかってるって。」
「じゃあ、やっぱり君に手伝ってもらうわけにはいかないよ。」
「話は最後まで聞けよ。僕だって無料奉仕をするほどお人よしじゃないさ。」
「え?」
「お金は要らないけど、その代わりホームページに掲載するお前の写真を僕に撮らせてくれないか。」
「ケンスケが・・・・・・・・・・僕の写真を?」
そういえばケンスケはグラビアカメラマン志望だった。でも、一介の学生に過ぎない彼に、公の作品発表の場が与えられるはずもなく、せいぜい投稿に精を出すことくらいが関の山だ。
「上手く行ってカヲルのサイトのアクセス数が増えれば、そこに載っている僕の写真だって当然注目されるからね。芸能出版関係者でも覗いてくれればしめたものさ。」
「ふうん。ケンスケ考えてるなあ。」
「自分の作品をアピールするチャンスは自分で作っていかないとな。」
「そういうことなら条件は対等だよねえ。さっそく今日帰ってから社長に話して見るよ。」
雲が晴れたような清清しい表情で、カヲルは力強く答える。頼りになる助っ人の登場でサイト作成は一気にはかどりそうだ。新たなスタートラインに着くためにも、少しでも早くページを完成させたかった。
「ホントは女のコの写真を撮るほうが100倍嬉しいけど、この際贅沢は言っていられないしな。」
「ケンスケは全然わかってないね。僕のデビューに協力できるなんて名誉なことじゃないか。それにその辺のアイドルの女のコなんかより僕のほうがずうっと魅力的だよ。」
「おい、今の発言ヤバかったかもしれないぞ。見ろよ。」
ケンスケが小さく指差す先に注目すると、いつやってきたのかアスカがこちらにずんずん近づいてくるではないか。日頃に似合わぬにこやかな表情が彼らの恐怖を増幅させる。
「げっ。聞こえたかな。」
思わず身を固くして、恐る恐るアスカの方を覗き込むカヲルだったが、その優しげな笑みを崩すことなく、彼女はカヲルの傍らにやって来た。



「ア、アスカ、確か4日ぶりだね。しかも午後からだなんて相変わらず忙しいんだなあ。」
取ってつけたようなぎこちない挨拶の言葉で、カヲルはアスカを迎える。
「あんた録音技術でもごまかしようのない超音痴が発覚して、デビューお預けになったんだって?容姿や体形はどうにか改造できても天性の音痴は修復不可能だったのね〜。」
やっぱりアスカはいつも通りのアスカだった。見た者の心を捉えずにはおかない可愛い微笑みとは裏腹のこの容赦ない発言内容。けれども、カヲルはケンスケ以外にデビューにまつわるいざこざを話した覚えはなかった。
「どうしてアスカがそんなこと知ってるんだい?」
「そうだよ。惣流の所属事務所はネルフプロとは犬猿の仲だったはずじゃないか。」
ほとんど業界の話題に上ることもない落ち目のプロダクションのタレントの卵の動向をいったいどこから入手したのであろうか。
「アタシの情報網を甘く見ないでって言ったはずよ。でも、気の毒よねえ。あんたが稼がないといよいよネルフプロは終わりなんでしょ。」
「ま、まだわかんないよ!!僕たちだって次の作戦を考えているんだから。」
「作戦ですって。はん、笑わせるんじゃないわよ。あんたたちの消滅寸前の事務所に何が出来るっていうのよ。昔は業界内にもいろいろコネがあったらしいけど、今ではまるっきり通用しないんでしょ。」
アスカの畳みかけるような攻撃に口をつぐんでしまうカヲル。外見に対する自信をつけたことで、大抵の相手には必要以上に言いたいことを言えるようになった彼も、どうもアスカにだけは弱いのだ。彼女の前に出た途端、昔の力関係に戻って、日頃のナマイキ三昧の対応も影を潜めてしまう。傍で聞いているケンスケも、口では到底敵わないと分かっているので、無駄な抵抗はせず、もはや竜巻が通りすぎるのをじっと待つ心境だった。
「アスカ、その辺にしといたら。」
「マナ。」
「今日だけはそんなこと言えないはず・・・・・・・・・。」
いつのまにかマナとレイも姿を見せていた。
「ふふ、そうだったわね。」
日頃誰の意見も聞かないアスカが、一言も反論せず素直に納得しているではないか。カヲルもケンスケも不吉な予感で一杯になった。これはいわゆる”嵐の前の静けさ”といったモノのような気がして堪らない。
「なんて顔してるのよ、あんたたち。」
二人の不安げな顔ははっきりと見て取れるほど露骨なものだったらしい。
「ふふふふ。あんたの音痴がこんな風に役に立つなんてねえ。」
言うやいなやもう堪え切れないといった風に口元を綻ばすアスカ。カヲルにはもちろん彼女のご機嫌の理由がさっぱりわからない。
(いったいアスカは何をあんなに喜んでいるんだろう?)
もちろんカヲルのデビューがおじゃんになったことでないのは明らかだ。いくら敵対している事務所に所属しているとはいえ、そんな底意地の悪い娘ではない。
(でも、アスカってやっぱり魅力的だなあ。人気アイドルになるのも当然だよね。)
特にこうして無邪気にはしゃぐ様を見せることはめったにないだけに、ますますその愛らしさが際立った。
「いつもあんなだったら惣流も可愛いのにな。」
ケンスケが小声で囁く。誰の考えることも同じらしい。
「うふふふふ、不思議でしょ。」
二人の考えていることなどお見通しといった感じで、マナが悪戯っぽく笑った。いつもながら蠱惑的な雰囲気溢れる少女だ。他の二人はともかく、彼女はカヲルに対してたいしてそこまでキツイ態度を取ったりしない。碇ゲンドウは許せない女の敵だが、たまたまそこの所属タレントになっただけのカヲルは別に関係ないというのがマナの考え方だった。
「そんなに深刻に考えなくても、放課後になれば何もかもわかるわよ。」



午後の授業も滞りなく終了し、放課後に突入してアスカの顔はますます緩みっぱなしである。その瞳が煌く光を湛えているのは、窓から差し込む西日のせいばかりではあるまい。
(ケンスケの言う通り、いつもこうしてれば非の打ちどころのない娘なんだろうなあ。)
しかし、ただニコニコと可愛いだけの女のコなんてアスカじゃない。男もたじろがせるほどの気性の激しさがあればこそ、厳しい芸能界で弱音も吐かずに力強く生き抜いていけるのだし、かつていじめられていたカヲルを庇ってくれたのだって、その決して他人に迎合しない意志の強さが大きく寄与していることは明らかだ。
(放課後になれば原因がわかるって霧島さんが言ってたけど・・・・・。)
結局謎が解けぬまま、アスカはそそくさと教室を出ていってしまった。好奇心に駈られて、カヲルはケンスケと一緒に彼女のあとをこっそりと追いかける。校庭を闊歩する足取りさえ今にも踊りだしそうで、その弾む心を体現していた。
(う〜む・・・・・・・・・・・・・。)
柄にもなく考え込むカヲルだったが、その時、派手にクラクションを鳴らしながら、レトロ調の真っ赤なオープンカーが校内に入ってきた。乗っている男性の姿が目に止まった途端、待ってましたとばかり車に駈け寄るアスカ。
「加持さん!!」
「よう、アスカ。」
「昨日から楽しみで眠れなかったんだから。ああ、ホントにラッキィ〜♪」
運転席に座っているのは30歳前後のなかなか良い男。アスカが”加持さん”と呼びかけているところを見ると、彼がグラビア系写真の第一人者、加持リョウジらしい。後ろで結んだ長髪と無精髭がいかにも業界人らしいライトな雰囲気を醸し出していたが、なぜかカヲルにはその眼光に秘めた鋭さが伝わって来た。日頃のぼんやりさ加減に似合わず、カヲルは他人の隠された本質を的確に見抜く力があった。この人は自分の敵なのか味方なのか。どうすれば諍うことなく、この場を上手くやり過ごすことが出来るのか。苛められ続けた月日の中で、彼が無意識のうちに学んだ悲しい自衛策だった。
「アスカの友達かい。」
彼女の後ろにいる見慣れない人物に気付いた加持がこう尋ねる。
「友達っていえるほど立派なものじゃないけど、一応そんなところかしら。」
「ひどいや、アスカ。僕たち幼稚園からの付き合いなのに〜。」
「何が付き合いよ。加持さんの前で余計なこと言うんじゃないわよ。」
カヲルの誤解を招く言い回しに、アスカは速やかに釘を差した。
「ほう、幼稚園から。じゃあ、君はアスカの幼馴染っていうわけか。」
「うん。アスカにはいつも助けてもらっちゃって。」
「助ける?」
「僕がいじめられてるとアスカがいつも正義の味方のように颯爽と現われて、いじめっ子を追い払ってくれたんです。」
「そいつは初耳だな。」
「もうアスカ凄かったんですよ。どんなガキ大将より強くて。特にキックの威力ときたら・・・・・・・・いてっ。」
言い終わらないうちにアスカの肘打ちがカヲルの背中にヒットする。
「加持さん、この話はカヲルの記憶違いなの。確かにカヲルを庇ってあげたことはあったけど、か弱い乙女のアタシが暴力に訴えたりなんて・・・・・・・・。」
「アハハハ、何カワイコぶってんだよ。いつも最後には逆にいじめっ子を泣かせてたくせに〜。」
「あんた、いい加減にしなさいよ!!!!!」
と迫力満点に怒鳴ってから、はっと気付いて慌てて加持のほうを向き直るアスカ。
「か、加持さん、あの・・・・・その・・・・・今のは・・・・・・・。」
しどろもどもになってなんとか上手い弁解をしようとするアスカだったが、時すでに遅しの感は否めない。
「わかってたよ。」
「えっ。」
「狭い業界だからいろいろ武勇伝も伝わって来るし。ただでもアスカは目立つからな。」
いくら加持の前でしおらしい女のコを演じたところで、他所でのアスカの行状が知り合いの多い加持の耳に入らないわけがない。ただし、中には恐らくやっかみから出たであろう良くない噂もあり、まさかとは思いつつも少々心配していたのだ。
「でもどうやらアスカは俺の思ってた以上の娘だったようだ。」
「・・・・・・・・・加持さん(#^.^#)。」
自分に向けられた暖かな笑顔にはにかみながら、アスカはほっとすると同時に心の底から幸せな気持ちになっていた。




「初めまして。渚カヲルです。」
「ぼ、僕、相田ケンスケです。加持さんのようなグラビアカメラマンになるのが夢なんです!!」
淡々と名乗るカヲルの隣で直立不動の姿勢を崩さず、ガチガチに緊張して自己紹介をするケンスケ。うしろからつんと突付いただけでそのまま倒れてしまいそうだ。
「渚カヲル・・・・・・・・だって?」
「そ。本当だったら今日加持さんがジャケット写真を撮るはずだったのに、世間に垂れ流したら犯罪確実の音痴のせいでデビュー無期延期になったコよ。」
カヲルは今日のアスカが自分に対してやたらに愛想が良かった理由をようやく悟った。要するに今日の加持とのデート(?)はカヲルのCD制作が中止になったために転がり込んできたらしい。
「さ、加持さん早く行きましょうよ〜。」
しかし、肝心の加持はアスカの甘え声での呼びかけにも全く応じない。
「じゃあ、君がネルフプロの・・・・・・・・・。」
「うん。」
この段階に至って、初めて加持はカヲルの姿をしっかりと目に焼き付けた。そして、それっきり身動ぎもせずに真剣な顔付きでカヲルを見詰め続ける。
「あ、あのう・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
逃げ場のない視線のシャワーに晒されて、カヲルはちょっと戸惑った。相手の意図が全く見えてこないことがなおさら不安をかきたてる。
「加持さん、何やってるの。予約の時間に遅れちゃうわよ。」
ちょっとイラついた口調でアスカが加持を急き立てた。せっかくデートにこぎつけたお目当ての相手が、自分を差し置いて、初対面の、その上男のコであるカヲルに見惚れているのだから、彼女がプリプリするのも無理はない。
「もう、加持さんってばっ!!」
強引に加持のネクタイを引っ張るアスカ。ややよれ加減だった加持のネクタイが一気にぎゅっと締めつけられる。
「お、おい。アスカ止さないか。」
「じゃあ早く出発してよ。」
さすがにこれ以上の滞在はアスカの我慢の限界を超えると思ったのだろう。ひとつ小さく息を吐くと、加持は車のエンジンを蒸し始めた。
「じゃあ、お先〜♪」
まるで優勝パレードにでも出かけるような晴れ晴れとした顔付きで、アスカは勢いよく手を振りながら、カヲルたちにさよならを告げた。だが加持の方はなおもカヲルの方を見遣りながら、意味深な笑いを浮かべているではないか。
「じゃあカヲル君、また後日に。」
「えっ。」
「加持さんったら、まだカヲルなんかに・・・・・・・。」
アスカのぼやきだけを残して、勢いよく発進した赤いオープンカーはあっという間に視界の彼方へ消えて行ったが、カヲルは加持が最後に告げた一言をなおも反芻し続けていた。
(また後日・・・・・・・・・・後日って・・・・・・・・?)



TO BE CONTINUED


 

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