*第三新東京モナムール〜18*



「あれえ?ここを曲がるんじゃなかったっけ。」
またもやあるべきはずの建物が見つからず、カヲルはちょっと口を尖らせながら小首をかしげる。
「カヲル君、これで3度目だよ。あんなに自信たっぷりに道案内するって言っておいてこれだもんなあ。」
「おい、まだ到着せんのか。」
さっきから同じような通りをぐるぐると歩かされて、シンジもゲンドウもすっかり嫌気が差していた。カヲル自ら映画館へのナビゲ−ター役を買って出たくせに、こんな調子だからいつまでたっても目的地にたどり着けない。
「この辺を歩くのは久しぶりなんだからしょうがないだろ。だいたい映画なんてわざわざお金払って見に行くもんじゃないよ。」
もちろんカヲルが映画に関心がないわけではなく、彼がいたキール・ローレンツの屋敷にはヘタな映画館顔負けの最新型の映像及び音響設備が整っていた。カヲル専用のこの設備を揃えるためにキールが泣く泣く夥しい金を散財したということは想像に難くない。
「いや、映画は多少手間をかけても映画館の大スクリーンで観賞するのが本来の姿なのだぞ。」
ユイが存命だったころ、よく一緒に駅前の映画館に出かけた懐かしい思い出が、ゲンドウの胸の中に蘇えって来る。
「ほとんど外出しないくせにわかったようなこと言っちゃって。」
「余計なお世話だ。そんなことを突っ込むヒマがあったら、早く正しいルートを教えんか。」
「うるさいなあ。人に案内してもらってるくせして偉そうに。え〜と、ここじゃなかったらどっち行くのかなあ?」
迷っているという自覚すらないまま、カヲルが妙に明るい顔をして尋ねてくる。
「そんなことは僕の方が聞きたいよ。だから最初に情報誌で確かめてから来れば良かったんだよ。」
シンジの視線もすっかり冷ややかだ。日頃から慎重なシンジとしては、慣れない場所にいきなり移動するような暴挙は避けて、前もって書店で正確な位置を確認してから(立ち読みだが^^;;)目的地を目指したかった。なのにゲンドウとのデートがまだまだ続けられると浮かれたカヲルが、その提案を無視して強引に3人を引っ張ってきたのだ。そしてそのあげくにこれである。シンジが不機嫌になるのも無理はない。
「来ちゃったものは仕方ないだろ。つべこべ言わずにいい方法を考えなよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ーー;;)。」
もはや怒りも呆れも通り越し、無言でカヲルを睨み付けるシンジ。そんなシンジの表情をじいっと見詰めていたレイだったが、不意にすっと右手を上げて、右側の路地を指し示す。
「・・・・・・・・・こっち・・・・・・・・・。」
「え、綾波、場所を知っているのかい。」
意外な援軍の登場にシンジは嬉しげに反応した。レイは何も言わずに件の路地へすたすたと歩き始める。
「やれやれ、助かったな。」
ゲンドウもこの無限ループ状態から解放されると知って、安堵のため息と共に軽い笑みさえ浮かべた。今度はレイが3人を引率して歩く形になっている。
「ちぇっ、どうしてこうなるんだよ。僕が颯爽と皆を案内していくはずだったのに。」
カヲルがいくら不満そうに膨れてみても、もはや状況は変わらない。右、右、左と曲がったところで、ビル街では異彩を放つ宇宙基地のような建物が皆の目に入った。



「こ、この映画を見るのか・・・・・・・・・・・。」
「そうだけど。」
「封切のときから見たいと思ってたんだ。大画面だと迫力もひとしおだよね。」
カヲルとシンジは事も無げにこう返す。口をポカンと開けたまま、次の言葉に詰まってしまうゲンドウ。レイの案内のおかげで無事映画館に辿りつけたものの、なんとそこで上映されていたのは失神者続出と話題のカルトなホラームービーだったのだ。何を隠そう、ゲンドウはこの髭面でホラームービーが大大大の苦手だった。映画に限らず昔から怪奇もの全般がダメだった。うっかり映像を見たり、話を読んだりしたら最後、その何もかもが四六時中頭から離れず、夢にまで出てきてうなされてしまう。
「で、でもな・・・・・・・・・・・・・・。」
ゲンドウはどうにか平静を装おうとしたが、すでに腰が退けている。それどころか上半身まで後ろを向きかけていた。大きな看板に書かれたおどろおどろしい絵。流れる血のようなロゴが一層恐ろしげなムードを醸し出している。
「お、女のコもいることだし、もっとこ、こう相応しい映画があるだろう。恋愛映画とかコメディとか。」
この厳つい顔で恋愛映画とか言われてもまるで説得力がない。でも、ゲンドウは最後の砦としての期待をこめてレイに話を振ったのだ。ところが・・・・・。
「・・・・・・・・・・私も、これ見たい・・・・・・・・・・。」
レイが小声ながらきっぱりと言い切ったので、ゲンドウは雪山で命綱をぶっつりと断ち切られ、断崖絶壁を転げ落ちて行くような心境になった。
(なんてことだぁぁぁぁぁ〜><;;;;;。)
「ほらほら先生、綾波さんだってこう言ってるじゃん。」
「父さん、いつまでも入り口でウロウロしていたら、他の人に迷惑だよ。」
「だ、だがな・・・・・・・・・。」
なおも、見苦しく抵抗を続けようとしたゲンドウだったが、もはやカヲルもシンジも容赦しなかった。
「もう!じれったいなあ!!さ、早く入って入って。」
「すみませ〜ん、大人1枚に学生3枚。」
針金のような細っこい身体とは裏腹の凄まじい力で、カヲルはゲンドウを引き摺るようにして映画館の中へ入っていく。すかさずシンジが父の懐から抜き取った財布でチケットを購入。見事な連携プレイであった。
「綾波はこのお金で中でつまめそうなお菓子を買って来てよ。席はその間に僕たちが確保しておくから。」
「・・・・・・・・・・ええ・・・・・・・・・・。」
シンジからよれ加減の千円札を2枚渡されて、ちょっと戸惑い気味のレイだったが、しばしの間隔の後、慣れた動きで売店へ一直線に歩いて行った。その後ろ姿を見送る3人。
「綾波さんはこの映画館によく来ているみたいだね、シンジ君。」
「うん、そうみたいだ。綾波が映画好きだったなんて知らなかったな。」
「ふふふ、それに碇先生があんなに怖がりだとはね。あれは絶対にホラーに拒否反応を示してたな。」
「父さん、家でも決してホラー関係と超能力関係の番組は見ないもんなあ。くだらんとか馬鹿馬鹿しいとか軽蔑したように言ってたのに、実は単に恐ろしかったからとはね。」
思わず含み笑いを漏らすシンジにカヲルも堪え切れず吹き出した。ゲンドウはバツが悪いのかやや俯き加減で無言を通している。
(ホントにいいよなあ、このひと。)
客観的に見ると情けないことこの上ないのだが、こんな姿にもカヲルの心はほんわかと和んでくるのだ。




「うあ〜!!」
「おおおおお〜!!」
「ぐわあ〜!!」
暗闇の中で響き渡る悲鳴。可憐な少女の黄色い声ならともかく、いい年こいたオヤジの野太い叫び声なんて聞きたくもない。恐怖に怯えるダミ声が発せられるたびに、発信地には皆の非難めいた眼差しが集中した。
「もう、先生ったら、少しは静かに見れないのかい?」
隣席のカヲルが小声でゲンドウを叱責する。もう幾度周りの射るような視線を感じた事か。それにこんなことに気を使っていては肝心の映画の内容がまるでわからないではないか。
(ちぇっ、せっかく楽しみにしてたのに。こんな暗闇だし、先生さえフツーにしててくれれば、逆の展開もありだったのにな〜。)
逆の展開とはカヲルが怖がって、ゲンドウにすがり付くというお化け屋敷でもよく見られるカップルの日常風景である。映画館へ着く前にはこの展開に持ち込むのも悪くないと目論んでいたのだが、現在、完全にその望みは潰えている。それどころかゲンドウの方が抱き付いてきそうな怯えようだ。もっともそこまで進展してくれるのであれば、それはそれで悪くない。でも、現状は同情する気にもならないゲンドウの悲鳴を間近で聞かされるのみで、接近してくる様子はまるでないのだから、最悪の事態といっても良かった。
「どひ〜!!」
また大声で喚き散らすゲンドウに周囲の客は悉く睨みつけている。それでもなぜ誰も意見しないかといえば、オヤジの面構えがあまりにも凶悪そうだからであった。しょせんスクリーンの中だけの恐怖よりもよっぽど身の危険を感じさせる人相。
「父さん、そんなに怖いんだったら外に出てなよ。」
ついに業を煮やしたシンジがこんな提案をした。
「何を言うか。こんな真っ暗な場所でお前たちだけにしておくわけにはいかん。」
ヘンなところで使命感に燃えてしまっているゲンドウ。もう処置なしである。そもそも映画を見に来ただけで、どうしてこんな恥かしい思いをしなければならないのか。しかも千載一遇のチャンスで綾波レイも一緒に来ているというのに。おまけのヒゲオヤジのせいで自分の評価まで急降下してしまうのではとシンジは心底不安になっていた。恐る恐る隣りのレイの様子を覗き込む。暗がりなのではっきりとは確かめられないが、小さな肩が小刻みに震えているようだ。
(まさか怒ってるんじゃ・・・・・・・・。無理もないよなあ。これだけ大恥かいたんじゃ。)
すっかり意気消沈してうなだれるシンジだったが、よくよく観察してみるとレイは怒っているどころか必死になって笑いを堪えているではないか。肩の震えはそのためのものだったらしい。それでも抑え切れずに微かに忍び笑いがこぼれていた。
「綾波・・・・・・・・・・・・?」
シンジはびっくりしてしまった。レイの笑い声を聞いたのは初めてだったのだ。彼女の笑顔と言えば、控えめに口元を綻ばせるくらいで、声をたてて大笑いなんていう姿は全くみたことがなかった。なのに、今、目の前にいるレイは可笑しくて堪らないといった風情で、ゲンドウの方を眺めているのだ。普通の女のコに比べれば遥かに控えめな感情表現ではあったが、それでもシンジにとっては貴重な発見である。些細な事ではあるが、レイに関して新しい知識が増えたような気がして、ひとり喜びに浸るシンジだった。



「全くかかなくていい恥かいたよ。」
「だから恋愛映画とかにしておけばいいと言ったんだ。」
汗を拭き拭き、4人がけのテーブルに置かれた冷水を一気飲みするゲンドウ。どうにか映画を見終わった後、彼らは食事のために駅ビルにある中華料理店に移動した。もっと高級な店をいくらでも知っていたカヲルだが、ゲンドウの懐具合を考えて、あえて口出しはしなかった。レイだってあまりに高級な店ではかえって気を使うだけだ。
「父さんのフォローをするのに夢中で映画の筋なんてまるっきり覚えてないよ。せっかく期待して行ったのになあ。」
「ホント、大枚はたいてオヤジの悲鳴を聞きに行ったようなものだったね。まあ、下手な映画より全然面白かったけど。ふふふふふ、ホントに碇先生って見てて飽きないよね〜。」
これはカヲルの本音であった。とにかくゲンドウの何をしでかすか分からないへっぽこな行動から目が離せないのだ。こんな大人を見たのは初めてだった。これまでカヲルの前に現われた大人は大きく二つに大別される。まずは彼がキール会長のお気に入りの愛妾であることから、将を射んとすればまず馬からの考えで彼の機嫌取りをする輩。そしてもう一方はカヲルそのものが目当てで彼をモノにしようと近づいて来る連中。例外的に加持のような中庸な人物も存在するが、カヲルの視線に入る大人はそんな邪な欲望丸出しの魑魅魍魎ばかりだった。それに比べるとゲンドウは外見は言うまでもなく、やること為すことお世辞にもカッコいいとは言えないし、不器用で要領も悪いけれども、世の中の流れに迎合しない自分なりの信念を持っているし、何よりも俗世の権力や財力に媚びないところがカヲルは気に入っていた。
「な、何だ、人をバカにしおって。」
からかわれて頭に血が登りかけるゲンドウだったが、ふとカヲルの表情が目に入り、その眼差しのあまりの暖かさにあとの文句が出て来なくなってしまった。言葉こそ遠慮会釈ないキツイものだったが、カヲルは決して本気でゲンドウを馬鹿にしているわけではない。作家という職業柄のみならず、性格的なものもあって、ゲンドウは俗世に疎いし、年の割に子供みたいな面も持っている。だけど、カヲルが病気になった時には慣れない手付きで一生懸命看病してくれたし、キールに連れ戻されそうになった時にも自分の立場を顧みず、必死で守ってくれようとした。残念ながら現段階でゲンドウが自分を愛しているとは思っていない。それなのに、損得抜きでここまでしてくれたのだ。これまで己の利益のみに心を捕われている俗人ばかり見てきたカヲルの目には、ゲンドウの一見おめでたい行動は新鮮に映り、思い起こすたびに波紋のように心に広がって、深く刻みこまれていた。カヲルの色仕掛けにも決して陥落したりせず、彼のために良くないと思ったことははっきりと意見する。カヲルの正体が分かって、ここへ戻ってきてからも、そんなゲンドウの態度はこれっぽちも変わらなかった。単なる同居人に過ぎない自分にさえこれだけ誠意ある対応をしてくれるのだから、もしホントにゲンドウの想い人になれたらどんなに大切にしてもらえるだろう。それに仕事柄ゲンドウはいつでも家に、ひいては自分の側にいてくれる。この事実もカヲルの心を浮き立たせた。ただし、ゲンドウの胸の中に棲んでいる強固な存在に思いが至るととたんに不愉快な気持ちで一杯になるのだ。それは相手が自分の目論み通りにならない苛立ちからなのか、純粋な意味での嫉妬からなのかはカヲル自身にも未だに分かってないのだが。




「綾波、本当にゴメン。今日は踏んだり蹴ったりだったよね。この埋め合わせは次回きっと・・・・・・・・・。」
と言いかけて、シンジははっとした。意識せずに次の誘いをしてしまったではないか。もちろんシンジに不純な動機などなく、心底レイに済まないと思って口から出たのだが、結果的には同じことだ。
「シンジ君、もう次の約束かい。君もやるときはやるんだねえ。」
間髪入れずに冷やかすカヲルにシンジは慌てて反論する。
「や、やめてくれよ。何も二人きりで出かけるとか言ったわけじゃないだろ。」
「ふうん、二人きりだなんてダイタ〜ン♪」
悪戯っぽい表情で茶化すカヲルの言葉が終わらないうちに、シンジは熟れたトマトのように真っ赤になっていた。もはやまともにレイの方を向くことなど出来なかったが、それでも気を取り直して、先を続ける。
「と、とにかく映画館では父さんも迷惑かけたし。」
「・・・・・・・・・・そんなことない・・・・・・・・・・。」
「えっ。」
「・・・・・楽しかった・・・・・。」
「そ、そう?」
レイの口からこんな形容詞が出てくるとは夢にも思わなかった。安心すると共に嬉しさですっかり舞い上がるシンジ。しかし、彼の浮かれ気分も長続きしなかった。
「・・・・・・・・・・碇君のお父さんって変・・・・・・・・・・。」
「え。」
喜びでふわふわ漂っていたシンジの意識が、一気に地面に転落した。身体全体がコンクリで塗り固められたみたいにギクシャクして来る。むろん、ゲンドウの受けた衝撃もハンパじゃない。レイのような口数少ない娘に真顔で言われてしまっただけに、そのダメージは計り知れないものがあった。ショックで呆然と立ち尽くす碇親子を知ってか知らずか、レイはさらにこう付け加える。
「・・・・・・・・・・でも可愛い・・・・・・・・・・。」
シンジは別の意味でさらに打ちのめされた。
(か、可愛いだってぇ・・・・・・・・・・あの父さんのどこが・・・・・・・・。)
多分、この世でカワイイという言い回しからもっとも遠いところに位置する男に違いあるまい。でも、レイにしてみれば、ごく自然に口をついて出た率直な感想のようだった。一方、当人たるゲンドウは感慨深いものがあった。ゲンドウに対してその形容詞を言ってくれた女性がかつて一人だけ存在したのだ。それはもちろん愛妻ユイ。もう二度と聞くことはない単語だと思っていたのに、まさか妻に瓜二つの少女から言われるとは。
(・・・・・・・・・・・ユイ・・・・・・・・・・・・。)
しかし、感激に胸を震わせていたゲンドウの右足に、次の瞬間煉瓦でも落下させたかのような激痛が走った。
「アイテテテ!!」
傍らのカヲルが力任せにゲンドウの下駄履きの素足を踏み付けたのだ。まともに骨にヒットしてしまった。これは痛い。
「先生ったら、デレデレしてんじゃないよ。大方ユイさんのことでも思い出してたんだろ!!フンだ。」
「そ、そ、そんなんじゃないぞ。」
という反論の言い回しで、その指摘が図星だったことをカヲルのみならずシンジまでが察してしまった。相変わらず分かり易すぎるオヤジである。
「は、話は後回しにして、お前たち先に注文したらどうだ。」
おしぼりで顔を拭き拭き、ゲンドウがごまかし加減にこう締めくくる。言いたいことは山ほどあるカヲルだったが、すっかりお腹が空いてしまったのでこれ以上の攻撃はやめておいた。帰宅してからゆっくりと追及すればいいのだ。
「父さん、こんなもんで顔を拭くのはやめてよ。」
あまりにもオヤジそのものの行動に嫌気がさし、シンジが厳しく注意する。もはや反論もせず、ゲンドウは渋々おしぼりを机に戻す。
「じゃあ、僕はエビチリ定食にしようかな。あ、でも、海鮮焼き蕎麦も捨て難いなあ。」
「う〜ん、どうしようかな。」
空腹も手伝って、どれも美味しそうに見える。あれこれ目移りするカヲルとシンジを差し置いて、レイが真っ先に希望を口にした。
「・・・・・・・・私、八宝菜定食・・・・・・・。」
おや、とカヲルとシンジ、そしてゲンドウも思わず彼女の方を見た。大人しいレイのことだから”皆と同じの”とか”それと同じの”とか言うのではないかと勝手に想像していたのだ。でも、はっきり希望を口にしたところにカヲルはかえって好感を持った。
(彼女、一見暗くて無感動なコに見えるけど、なかなか奥が深そうだぞ。)
だけど、それとは別に気がかりなのはゲンドウの真意である。レイがゲンドウをカワイイと評したのは本心からではあるが、恐らくそれ以上の意味はなかろう。けれども、亡き愛妻にそっくりの少女にそんなことを言われてゲンドウが嬉しくないはずがない。万が一、これをきっかけにゲンドウがレイに特別な感情を持つようになったら・・・・・と急激に不安になるのだ。自分が誰かの心の動きで一喜一憂するなんて今までのカヲルには考えられないことだった。全ての事柄は自分を中心に回っていたはずだったのに、今はゲンドウの胸の内がこんなにも気になる。
(・・・・・・・・・・イヤだな、こんなの・・・・・・・・・・。)
わざとゲンドウから視線を逸らすようにして、カヲルは誰にも聞こえぬくらいの投げやりな口調で吐き捨てるように呟いた。


TO BE CONTINUED


 

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