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 *第三新東京モナムール〜6*
 
 
 ついにカヲルと二人だけで家に置いて行かれてしまった。ゲンドウは意識のし過ぎで情けないくらい肩に力が入っている。しかし、恐る恐るカヲルのほうを見ると、なぜか不満げな顔をしているではないか。現状は完全にカヲルの望んだ世界そのもののはずなのに。(!?・・・・・・・・・よくわからんヤツだな・・・・・・・・・・。)
 そのぶーたれ顔のまま、カヲルが口を開いた。
 「碇先生、あんなとこで口出ししないでよ。せっかく面白いところだったのに。」
 そういうとちょっぴり口をとがらせる。どうやらカヲルの不機嫌の原因は先ほどゲンドウがシンジに言った”まだ女のコがいるのか”のひとことにあるらしかった。
 「面白いとは何がだ。」
 「これはあくまでも僕の勘だけど・・・・・・・シンジ君は綾波さんというコに好意を持ってるようだね。」
 「な(@@;)、まさか。」
 まさに晴天の霹靂だった。いままでシンジの身辺には浮いた噂ひとつなかったし、ましてや綾波なんていう名前を聞いたのは今日が初めてだ。
 「先生、小説家のくせしてそのくらい分からないの?だめだなあ。シンジ君だってお年頃なんだから、らぶらぶのひとつやふたつあったって当たり前だよ。でも、あのドライなシンジ君がねえ・・・・・・・ふふふふ・・・・・・・。」
 「しかし、まだシンジは14・・・・・・。」
 俄かには信じ難いゲンドウ。
 「先生、シンジ君のこといつまでも子供だと思ってるんでしょう?それだからシンジ君に疎まれるんだよ。だけどちょうどいいじゃないか。シンジ君にステキな恋人が出来れば、碇先生だって心置きなく僕と愛し合えるよ♪」
 「・・・・・・・・・14歳なんてまだまだ子供だ。恋人なんてとんでもない。」
 「そうかなあ。僕だって14だけど、もう大人のやってることくらい何でもできるよ( ̄^ ̄)。偉そうにしてる割には、大人なんてみんなたいした事してないもの。ふふふ。」
 「生意気言うな。お前に一体何が出来る。」
 その言葉を待ってましたとばかりにカヲルがいきなりぎゅうっとゲンドウに抱き付いてきた。心の中でしまったと叫んでみてももう遅い。そうだ。もう自分とカヲルは2日半もの間二人っきりなのだ。
 「1週間、よく我慢したよね、僕も。」
 むしろ自分に語りかけるかのように呟くカヲル。
 「こんなに待たされたのは先生が初めてだよ。その分うんと楽しませてくれないと許さないから。」
 にっこり笑うとピッタリ身体を密着させてくる。銀色の柔らかな髪からほんのりといい香りが漂った。でもその芳香を味わう余裕が今のゲンドウにあるはずがない。とにかくカヲルを引き離すべく必死で身体を押しのけようとするのだが、細い体に似合わぬ凄まじい抵抗にあっていた。
 「碇先生、ムリしなくても大丈夫だよ。もう僕たち二人しかいないんだもの。それとも先生の寝室まで運んでくれる?」
 「寝言は寝てから言うことだ(ーー;;)。」
 語尾も荒々しく返すゲンドウ。
 「じゃ、一緒に寝よう♪(*^^*)」
 「馬鹿も休み休み言え。どうして私がお前なんかと。」
 「いやだなあ、僕にはカヲルって名前があるのに。あ、でも古女房みたいでいいかもね。」
 なにを言っても柳に風。全く動じる様子はない。
 「僕、この1週間いいコにしてたよね。リライトの仕事も順調に進んでるよ。シンジ君とも友達になったし。だから先生にごほうびが欲しいんだ。」
 「ごほうびだと?」
 止せばいいのについ聞いてしまうゲンドウ。
 「だ・か・ら・僕を満足させてってこと♪」
 無論ベットでだろう。
 「あ、もちろん先生にも僕の持てる限りの全てのテクニックを駆使して楽しませてあげるよ。もう2度と離れられなくなるくらいに・・・・・・ね☆」
 ゲンドウは真面目な話、背筋に悪寒が走った。これが14の少年のいうセリフだろうか。
 (まさかこいつ援交でもしてるんじゃないだろうな・・・・・・。)
 そう考えれば、所有しているやたら高価な物品の数々も説明がつく。
 「先生の小説、もう凄いもんね。期待しちゃうなあ。雑誌でも先生の武勇伝はいつも読んでるし。あ、でもSMは嫌だよ。僕、痛いのキライだから。気持ちいいことだけしてよね。」
 もはや答えようがない。小説は取材と想像で書いていて、雑誌の記事は98%でっち上げ。本当のゲンドウは無口で無骨で色事には全く縁のない平凡な中年男に過ぎないのだが、カヲルはかなり勘違いしているらしい。そんなことを勝手に期待されてもいい迷惑だ。そもそもゲンドウには全くその気がない。たとえ金を貰ったってカヲルを抱く気なんか起こらない。どんな美貌の持ち主でも男となどそんなおぞましいことができるかと思っているし、こんな年端もいかない子供を欲望処理の道具のように扱うわけにはいかない。いくらカヲルが大人びた生意気な態度をとろうとゲンドウにとってはまぎれもなく子供だった。
 「もう、何グズグズしてるのさ。先生は僕のことキライ?そんなはずないよね。結局、この家に置いてくれたし。」
 しなだれかかってくるカヲルの身体をなんとかして押し戻そうとするゲンドウ。あくまでも抵抗を続けるゲンドウの態度がカヲルの勘にさわったようだ。手のひらを返すように不機嫌な表情を見せる。
 「あんまりカッコつけるんじゃないよ。」
 すでに目は据わっていて、さっきの愛嬌はどこへやら。こうなるとその美しさゆえにむしろ凄みすら出てくる。
 「死んだ奥さんに操を立てたいなんて通用しないよ。どうせいつもは風俗店とかで散々遊んでるくせしてなんだい。それとも実は他に愛人がいるとか・・・・・・ふふふ・・・・・・たしか先月の週刊○○に載ってたよねえ。」
 ぷちーん。とうとうゲンドウはキレた。これ以上カヲルの言いたい放題を許しておくことは出来なかった。
 
 
 
 
 べちっ。いきなりカヲルの頭を思いっきり平手で叩くゲンドウ。「な、何するんだよ?」
 「うるさい。お前みたいなガキは口で言ってもわからんのだから、こうするしかなかろう。」
 ここで頬でも張って、決め台詞のひとつも吐けば、結構シリアスな展開になっていたかもしれない。だが、脳天を一撃では感動的な話になりようがなかった。
 (このオヤジ、ムカツク〜。b(-_-X))
 もちろんこのまま大人しく引き下がるカヲルではない。ゲンドウのみぞおちへ肘鉄をくらわせようとした。ところが先にゲンドウに両腕を押さえ込まれてしまった。
 「あっ、離せよ。」
 「もうあんなくだらんマネをしないと誓えば、解放してやらんこともない。」
 「イヤだよ。そのために先生の家まで来たのに。」
 「懲りないヤツだな。だいたいお前はホントに・・・・・・・・。」
 自分が好きなのか、と尋ねたかったのだが、どうもそのような単語を口に出すのが憚られる。まず、照れのほうが先に出てしまうのだ。その一瞬のスキをカヲルが見逃すわけがなかった。たちまちゲンドウの腕をすり抜け、またまたしがみ付きモードに入る。
 「こ、こら、離れんか!!」
 「ねえ、いいじゃん。とにかく1回お験しということでさあ。寝てみないと分からないことだってあるんだよ。」
 カヲルの顔がすっかり紅潮している。瞳もどことなく潤んでおり、その年頃の少年とは思えない不思議な色香を醸し出していた。
 「だからさっきから言ってるだろう。私にはそのような趣味はない。」
 「今はね。」
 間髪を入れずに言い返してくる。
 (全く減らず口ばかり叩きおって・・・・・・・・・ん?)
 さっきから薄々感じてはいたのだが、どうもカヲルの身体が熱っぽい。単なる気持ちの高まりのせいばかりとも思えない。顔の赤みもちょっと鮮やかすぎるようだ。ゲンドウはカヲルの額に右手の平を当ててみた。
 「ああ・・・・・・碇先生。やっと観念してその気になってくれたんだね。」
 満足そうに口元を綻ばすカヲルだったが、なんだか足取りがおぼつかなくなっている。
 「お前、熱があるぞ。」
 「いやだなあ。これは先生のことを思って身体が火照ってるんだよ。」
 「冗談を言っている場合か。こっちに来い。」
 ゲンドウは嫌がるカヲルを強引に居間に引っ張って行き、熱を測らせた。38度3分。
 「この体温計壊れてるよ。僕は別に・・・・・・・。」
 言ったそばから、めまいを感じたらしい。大きくよろめいたカヲルの身体をゲンドウは素早く抱きとめてやった。
 「真夏とはいえ、毎晩あんな格好でウロウロしていれば、風邪のひとつくらいひいて当然だな。」
 ゲンドウを挑発しようとしたバスローブ一枚攻撃(?)が完全に裏目にでたようだ。
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 カヲルの無念の表情をみて、ゲンドウは内心ほくそえんでいた。確かに病気になったのは可哀想だが、カヲルの今までの行動を思い起こせば天罰と言えなくもない。これでこの2日半は安泰。リライトは少し滞るかもしれないが、今までがむしろ進みすぎてたくらいなので、全く心配なし。ゆったり安らかな気分で過ごせそうだと思うと心が弾んだ。
 「さあ、こっちの部屋ですぐに休め。」
 自覚したとたん、どんどん具合が悪くなってきたようだ。先ほどまでの勢いはどこへやら、カヲルはゲンドウに支えられながら、シンジの部屋へ連れて行かれた。いつも就寝時にはここに来客用の布団を敷いて寝ているのだ。カヲルはゲンドウの書斎のベッドで眠りたがったのだが、その主張は言うまでもなくゲンドウが却下していた。
 「今日はシンジのベッドで休んだらいい。風邪のときは暖かくして、よく寝るのが一番だ。」
 それだけそっけなく言うとゲンドウは部屋を出て行こうとした。ところが、着物の袖が後ろに引っ張られて進めない。振りかえるとベッドの中のカヲルがしっかと袖を握り締めているではないか。
 (なんだ、こいつ。)
 と訝るゲンドウだったが、カヲルの顔を見ると自分でも思いもよらぬ行動だったようだ。はっきりと戸惑いの色が表われていた。それでも袖をつかんだ手を放そうとはしない。じっとゲンドウの顔を見つめている。しばらく無言で対峙する二人。ふとゲンドウはピンときた。
 (ははあ、要するに一人にされたくないのだな。)
 いままでのカヲルの態度は全く年齢にそぐわないものばかりだったが、はじめて年相応、いやむしろ幼くさえ感じられる少年の顔を見せたと言えよう。なおも袖から手を放さずに上目づかいでじっとこちらを見つめているカヲルのことがなぜか突然可愛らしく思えてきた。
 
 
 
 
 
 「仕方のないヤツだ。」ぽつりとそう漏らすとゲンドウはカヲルを自分の書斎まで連れていき、そこのベッドに寝かせてやった。カヲルは心底嬉しそうに微笑んで、ゲンドウの手に自分の手を重ねた。
 「ありがと。碇先生、優しいね。」
 日頃に似合わぬ弱々しい声で一言発し、静かに瞳を閉じる。
 「ここで大人しく寝てろ。」
 それだけ言うとゲンドウは机に向かって執筆を始めた。しばらく静寂の時が流れたが、そのうちカヲルが話し掛けてきた。
 「・・・・・・・・・碇先生・・・・・・・・・・・・。」
 (なんだ、寝たのではなかったのか。)
 「ねえ、先生・・・・・・・・・・・・・。」
 無視しようとしたのだが、あまりにも苦しそうに言うのでついつい応対してしまった。
 「何だ。」
 「・・・・・・・薬とか飲ませてくれないのかい?口移しで。」
 「・・・・・・・・・(ーー;;)そんなものは要らん。暖かくしてよく眠れば直るものだ。」
 本当はシンジ不在のため、薬箱の場所がわからなかったのだが、そんなことはおくびにも出すわけにはいかない。
 「・・・・・・・・そうかなあ・・・・・・・。」
 「余計なことをしゃべってないでとっとと寝ろ。」
 「このベッド、先生の匂いがするね。」
 (・・・・・・・・・・・・・言ってるそばからこいつは・・・・・・・・・・・・・・。)
 でも、もう相手にしない。あの状態では話すことさえ難儀そうだ。こちらが無視していれば、そのうち眠るだろう。そう考えたゲンドウだった。ところが、カヲルはなかなかおしゃべりをやめない。
 「先生と一緒に眠るんだったらよかったのにな・・・・・・・。」
 もちろんゲンドウは何も答えなかった。
 「でも、こんな状態になってるなんて全然分からなかったよ。・・・・・・・やっぱりちょっと緊張してたのかな・・・・・・。」
 そうかもしれん、とゲンドウも思った。人並みにデリケートな部分も持っていたようだ。いままでカヲルのはちゃめちゃな行動に翻弄されっぱなしだったが、これからはもう少し余裕を持って接することができるかもしれない。確かに問題行動はいろいろあるものの、ゲンドウは今でもカヲルのことを根は悪くない子だと確信している。
 「・・・・・・・・ももの缶詰、食べたいな・・・・・・・。」
 唐突にカヲルがこんなことを言ったので、ゲンドウはちょっと面食らった。おまけについ振り向いてしまった。
 「ああ、やっと反応してくれたね。」
 微笑しようとしたカヲルだったが、よほどしんどいのだろう。泣き笑いのような表情になっている。どう考えても何か食べる余裕などなさそうだ。
 「もう一度だけ言う。とっとと寝ろ。」
 ホントはカヲルを気遣ってのセリフなのだが、こんな言いかたしかできないゲンドウ。
 「ちぇっ・・・・・・・・冷たいなあ・・・・・・・・・。カワイイ愛人が息も絶え絶えにおねだりしてるのに・・・・・・・・・。」
 「・・・・・・・・・・・誰が愛人だ。」
 一言返して机に向き直ったゲンドウは、もうカヲルが何を言おうと微塵も相手にしなかった。
 「ももの缶詰・・・・・・・・・・・・・・。」
 「なんだよ、ケ〜チ。」
 「こないだのアクセサリーに比べたら、ゴミのようなもんじゃん。」
 「・・・・・・・・・・・・・・つまんない・・・・・・・・・・・・・。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 とうとう静かになった。あきらめて、というより力尽きて眠りに落ちてしまったのだろう。やけに耳障りな時計の音。だが、本来これこそが今までゲンドウに与えられてきた空間だったのだ。その聞きなれたはずの秒針の響きに違和感を抱いてしまうほど、この一週間の風景に馴染んでいたのかと思うと、自分でも驚き呆れた。
 
 
 
 
 
  ようやく執筆も一段落して、外を見るとすでに夕暮れ間近だ。カヲルはまだぐっすり眠っている。長時間座っていたせいだろうか、ゲンドウはぎこちない歩様でベッドまで行き、カヲルの様子を覗きこんだ。(・・・・・・・・・・あまり回復しているようには見えんな。むしろ病気の進行はこれからか。)
 ちっとも安らかな寝顔ではなかった。苦悶の表情には痛々しささえ感じられる。元はといえば自分の不用意な行動で風邪を引いたのだから、これっぽちも同情に値しないのだが、それでも全く無感情ではいられない。
 (しかし・・・・・・・・・こうして改めて見ると・・・・・・・・・なんと・・・・・・・)。
 このあとの形容詞をゲンドウは慌てて飲み込んだ。たとえ独白とはいえ、使用するには抵抗があった。
 (・・・・・・・・・・確か、台所の戸棚に昔使った氷枕があったな・・・・・・・・・。)
 不意にそんなことを思い出し、さっそくゲンドウは台所へ向かった。戸棚の下の引き出しに大切にしまってある古いゴムの氷枕。かつて幼いシンジが熱を出すたび活躍した彼も、シンジの成長と共にすっかりお役御免になってしまっていた。
 (あったぞ。)
 おぼつかない手付きで製氷室から出した氷をそれに一気に入れる。三つ二つこぼれてしまったが、どうせ溶けて水になるだけなのでお構いなしだ。それから、氷水に浸して絞った手ぬぐいも一緒に持って書斎に戻ってきた。
 (・・・・・・・・・・・・起きていると煩くてかなわんが、これだけ静かだとどうも調子が狂うな・・・・・・・・・・・・。)
 そんなことをぼんやり考えながら、カヲルの頭の下に氷枕を差し入れ、熱のせいで朱に染まった額に濡れてぬぐいを乗せてやった。こんなことなら寝込んだ当初からそうするんだったとゲンドウは軽く後悔した。そして、頭にフラッシュバックするあの言葉・・・・・・・・・。
 (ももの缶詰か・・・・・・・・・。)
 コンビニはもちろん、スーパーも楽勝で開いている時間だ。碇家の近所にはいくつかそういった類の店があるが、シンジご用達の店は”白金台シェルガーデン”というちょっと高級めのスーパーだった。
 (・・・・・・・・・・・・・・まさか買いに行こうとしてるんじゃないだろうな・・・・・・・・・・・・。)
 買い物は全てシンジ任せ、最近はそんな場所に足を踏み入れたこともない。
 (・・・・・・・・男が買い物なんてできるか・・・・・・。)
 そう呟きつつもなぜか眼鏡を外出用のものにかけ代えている。
 (・・・・・・・・・・どうせ眠っているんだし・・・・・・・・・・。)
 財布を帯に挟み、これで仕度は万全。家にこんな状態のカヲルを一人残していくのはやや不安だったが、もう買うものが決まっているのだから、10分もすれば、戻ってこれるだろう。
 (確かにいつものカヲルのおねだりからすれば、カワイイものだ・・・・・・・・。)
 というより、唯一楽勝で答えてやれる金額の品物だ。この1週間、単行本完成のご褒美としてカヲルにいろいろねだられたのだが、どれもこれもあまりにも現実離れしすぎていて、怒る気にすらならなかった。たとえば耳にしたこともないようなオートクチュールの洋服だったり、とてつもないカラット数の宝石だったり、果ては外車やクルーザーや別荘だったり。
 (・・・・・・・・行ってくるか・・・・・・・・・。)
 結局、缶詰を買いに出かけてしまうゲンドウ。
 (・・・・・・・・・・・どうも、私は少々あれに甘すぎるようだ。)
 初対面から今までずっとカヲルに引きずられてきたのも、自分らしからぬ甘さが随所で出た結果だと自覚していた。それはカヲルの中にユイを見てしまったからだとゲンドウは思い込んでいる。
 (・・・・・・・・・甘やかしてはますます増長するばかりだ。これからはもっと厳しく接しなくては。)
 しかし、そんな決意とは裏腹に、シェルガーデンへの道すがらゲンドウの頭に浮かんできたのは、にっこり笑ってもものシロップ漬けを食べるカヲルの姿だけだった。
 
 
 TO BE CONTINUED 
  
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