「ええ~っ、どーしてダメなのぉ~?」
受話器の向こうのシンジに恨みがましく訴えるカヲルだったが、やはり電話ではイマイチ効果は薄い。
「今度の日曜はウインドミルのチケットの発売日なんだよ。ホントは電話予約オンリーなんだけど、会場の新東京リリスメインホールだけは特別販売があるんだ。」
「それがシンジ君と何か関係あるのかい(`ヘ´)?」
顔が見えないだけに声のとげとげしさがますます際立つ。
「カヲル君、君だって僕がウインドミルの大ファンだってことは知ってるだろう。」
確かに、最近シンジがウォークマンで聞いているのは、いつだって彼らのナンバーだ。
「わかってるけど、それが僕との楽しいデートを断る理由になるなんて納得いかないよう(><)。そもそも僕は今、土曜日の話をしてるんだよ。」
「・・・・・・カヲル君、コンサートのチケットって買ったことある?」
「ないよ。だって伯父さんに頼めば、一番いい席をまわしてもらえるもん( ̄^ ̄)。」
(やっぱりね・・・・・・・・・・・。)
予想と寸分違わぬ答えに力なくため息をつくシンジ。
「あのね、普通チケットを買うには売り場に並ぶか電話予約をしないといけないんだ。でも、電話じゃ発売開始時刻につながるなんてことはまずありえないから、多少手間でも直に買いに行くのがもっとも確実な方法なんだよ。」
仕方ないので、手間を惜しまずに基礎の基礎から説明することにした。
「けれども、人気公演のチケットは誰もが欲しいから、のこのこ発売開始時刻に出かけていったところで、既に長蛇の列が出来てることは間違いないんだ。そしてもちろん早い者勝ちだから、列の前の方に並んでいなければ買えない・・・・・・。全国規模で発売されているんだから当然だけどね。カヲル君が難なく入手してるチケットもまともに買おうとすると結構大変なんだよ。特にウインドミルクラスの超人気者だと、徹夜くらいしないととても手に入らないだろうね。」
ここまで聞いて、ようやくカヲルも事態が飲み込めたようだ。
「要するにシンジ君はチケット欲しさに土曜の夜から徹夜しようと思ってるんだね。」
「ああ。やっとわかってくれたんだね、カヲル君。」
「わかんない(><)。だって夜に並ぶんだったら日中はヒマだから僕と遊べるじゃないかあ。」
再びぷんすかするカヲル。
「徹夜しても大丈夫なように日中寝だめしておくんだよ。」
もちろんそんなことでカヲルがおさまるはずがない。
「たかだかウインドミルのチケットごときのために、僕との大切な時間を棒に振るんだね。シンジ君、もう僕のことなんか愛してないんだ。あんまりだよう、キスまでしといて~(><)。」
もうも何もカヲルのことは友人としては好きだが、それ以上の感情を抱いた覚えはないし、キスは半ば強引にカヲルの方からしたものではないか。いつもながらカヲルの自己中な理屈には反論する気力すら湧いてこなかった。
「だいたいウインドミルのチケットだったら、伯父さんに頼めばどうにでもなるよ。だから徹夜なんてバカな真似はやめて、いつものように僕と遊ぼうよ。ねっ♪」
と、小首をかしげてにっこり微笑んでみせたカヲルだったが、せっかくの愛くるしい笑顔も電話では何の効果もなかった。
「・・・・・そういうのはイヤなんだよ。」
しかもシンジからはあからさまな拒絶のセリフ。
「なんでさあ。シンジ君だって楽してアリーナとか取れたほうがいいじゃん。」
「僕はインチキしてまでいい席を取ろうとは思わないよ。他のみんなはちゃんと徹夜して入手するのに、僕だけなんの苦労もせずにカヲル君の伯父さんからまわしてもらうなんて・・・・・。」
要領が悪いと言われようが、シンジにはそういう裏取引的なことは出来なかった。
「だから済まないけど、今週はカヲル君とはでかけられないよ。」
しかし、ここでおとなしく引き下がるカヲルではない。
「イヤだイヤだ、そんなの~(>冊<)。シンジ君は僕よりウインドミルの方が大事なんだね?」
カヲルの得意技のひとつ”僕より○○の方が大事なんだね攻撃”が始まってしまったが、今日のシンジは一味違う。臆せず怯まず、きっぱりと言葉を返す。
「だってカヲル君とはいつでも会えるけど、ウインドミルはめったにコンサートやらないんだよ。この機会を逃したら、もう見るチャンスはないかもしれないんだから。」
相手の顔を見ていないからこそのセリフだろう。いつものシンジだったら、カヲルの抵抗の前に抗う術もなく屈服しているところだ。
「・・・・・・・・どうしても土日は僕と会ってくれないんだね( -.-)( _ _)。」
うな垂れた姿が浮かんでくるようなカヲルの力ない声に一瞬シンジの心は揺れ動いたが、過去これで仏心を出してしまったばっかりに何度悲惨な目にあったことか。今日という今日は自分の希望を通さなければ。
「また来週があるじゃないか。」
それでもこれ以上カヲルの機嫌を損ねまいとついついフォローの言葉をかけてしまうシンジ。どこまでも弱気な性質である。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
受話器からは無言の声。いつも饒舌なカヲルから沈黙で応答されるなんてかえって不気味だ。シンジは背中にひんやりするものを覚え、ちょっと身震いした。
「・・・・・・カ、カヲル君・・・・・・・・。」
しかし、一向に答えはない。
「・・・・・ね、ねえ、カヲル君ってば・・・・・・。」
万が一、泣かれてしまったらどうしよう。シンジの心の中はもはや不吉な予感で一杯だ。だが、ようやくカヲルから返ってきたひとことはシンジの予想をさらに上回る最悪なものだった。
「・・・・・・・・・んじゃあ、僕もシンジ君と一緒に徹夜する(^-^)。」
「ええっ!?」
この叫びはとんでもないことを申し出られたという困惑の声だけではない。地道な努力とか真面目にコツコツとかいうことに全く縁のない、というよりそんなことをもっとも忌み嫌っているカヲルが、たとえ春とはいえ、夜露にさらされて一夜を過ごそうとするなんて考えられない。そういう意味の驚愕も込められていた。
「カ、カヲル君、本気かい?だいたい伯父さんがそんなこと許してくれるのかい。」
「へーきへーき。伯父さんにはどこかちゃんとしたとこに泊まるって言っとくもん。でも、とっととこの方法を思いつけば良かった。これだってシンジ君とのデートには変わりないもんね。しかも二人っきりで夜明かし。もうドキドキだね。アオカンでも僕はOKだよ、シンジ君♪」
またどこかの雑誌で勉強したのであろう専門用語(^^;;)を得意げに使用するカヲルにシンジはがっくり肩を落とした。
「・・・・・・カヲル君、生憎だけどリリスメインホールのチケット売り場に並ぶんだから、別に二人きりにはならないと思うよ。僕らの他にも徹夜する人たちはいるだろうし。」
「誰に見られたって別にかまわないよう。だってだって僕たち愛し合っているんだもん(#^.^#)。」
全く状況を飲み込んでいないぽんちな答えに、シンジは脱力のあまりその場にしゃがみ込んでしまった。
(・・・・・・・・これはもうあのことを告げるしかないな・・・・・。)
できるなら当日まで隠し通しておきたかったのだが、こんな事態になってはやむを得ない。シンジは決断した。
「・・・・・・・・・・カヲル君、霧島さんも来るよ。」
約3.8秒間沈黙。
「ええっ~!?ど、どーしてだよう。」
あまりの大声に耳がキンキンしている。こうなることは十分予測がついたのだから、もう少し受話器を離して持つべきだったとシンジは深く後悔した。
「霧島さんもウインドミルのファンだからだよ。」
「・・・・・ということはもし僕が行かなければ、シンジ君は霧島さんと二人きりで・・・・・・・。ヒドイやあ。浮気するつもりだったんだね。」
こういう所だけはすぐに頭が回るカヲルのキビシイ追求が始まった。
「さっきも言っただろう。徹夜するのは僕たちだけじゃないんだよ。」
「でも、一晩中霧島さんと一緒にいるって事実は変わらないじゃないかあ。」
こみ上げる怒りを隠そうともしない。きっと今頃顔を真っ赤にして、ほっぺたをぷうっと膨らませているのだろう。見なくても容易に想像がつく。
「そりゃあそうだけど・・・・・・・。でも、カヲル君は別にウインドミルなんてどうでもいいんだろ。僕が聴いてても全然興味さなそうだし。」
「恋人の僕をないがしろにするなんて許せないよう~(><)。」
何をどう説明しようともムダだ。とにかく自分最優先じゃないと気が済まないカヲルなのである。
「ま、まあいいじゃないか。カヲル君も一緒に徹夜することになったんだから(^^;;)。」
巧妙に話を逸らしに出たシンジ。
「うん、そーだよ。僕たちは一晩中一緒なんだから。これでますます二人の仲は深まるね(*^^*)。」
それにあっさりひっかかり、こぼれんばかりの笑みを浮かべてカヲルは言った。弾む声がカヲルの様子を鮮やかに伝えてくる。
「じ、じゃあ待ち合わせの時間を・・・・・・・・。」
ここまで言いさして、シンジはカヲルとの待ち合わせという行為の不毛さを思い出した。
「・・・・・・・・・何時に迎えにいったらいいかな?」
「え~とねえ、夕方でもいいんだよね。」
「そうだよ。それまでに寝貯めしておかなきゃ。」
すっかりカヲルの機嫌が直ったのを確認して、安堵するシンジだったが、土曜のことを考えるとまた憂鬱になってくる。二人きりのほうがまだマシだ。マナが来る以上、カヲルとの直接対決は避けられそうにない。ポケモンという共通の趣味を持っていることが判明してから、以前よりはちょっと近しくなった二人ではあるが、シンジのこととなれば話は別だ。
「あれっ!?」
土曜日、いつものようにカヲルの家を訪れたシンジは驚愕した。なんとカヲルがもうすっかり仕度をすませて、居間で待機しているではないか。いつもは起きてすらいないのに、もの凄い気合である。やっぱり実態はどうあれ、”共に一夜を過ごす”というアヤシイ響きにやる気100倍になっているとしか思えなかった。
「えっへん、どうだいシンジ君。僕だってやればできるんだよ( ̄^ ̄)。」
迎えに来てもらってるくせして、いばるほどのことはないのだが、得意げに胸を反らせて言うカヲル。
「ホントに今日は偉かったね(^-^)。」
でも、シンジは素直にカヲルを褒めてやった。確かに今までの実績から考えれば大進歩だし、こんなこともうニ度と無いかもしれないと考えたからだ。
「じゃあ、早速出かけようよ、シンジ君(^o^)。」
ちょうど伯父キールは仕事で不在だったので、苦しい言い訳をしなくても済んだ。使用人たちに見送られながら、二人は家を出て、新東京リリスメインホールに向かう。
「カヲル君、お腹空かないかい?」
「へーきだよ。今ちゃんと食べてきたから。」
今日のカヲルは一味も二味も違う。全てにおいて容易周到だ。しかし、どういうわけかシンジはそんなカヲルに対して、少々物足りなさを感じていた。いつものようにダメダメで自分を困らせるカヲルでいて欲しいのだ。どうもカヲルに対して、シンジは常に矛盾した感情を抱いているようだ。纏わりつかれるのは鬱陶しいが、そっけなくされるのは寂しい。聞き分けがないのは苛立たしいが、物分かりがいいのは物足りない。全く勝手な論理なのだが、シンジの気持ちはいつもその両極端を振り子のように行ったり来たりしていた。
「でも、先は長いし、きっと小腹がすいてくると思うんだ。コンビニでちょっとしたものを買ってから行こうよ。」
「わ~い☆お菓子を買うんだねヽ(^0^)ノ。」
カヲルはぴょんぴょん飛び跳ねて体全体で嬉しさを現わしている。
早速二人は通り道にあるコンビニの中に入った。
「あまり手が汚れないもののほうがいいよ。」
とせっかくシンジが気を利かせてアドバイスしたのに、カヲルはまるっきり聞いてない。ドーナツやポテトチップや揚げせんなどむしろその趣旨に反するものばかりを、両手一杯に抱えこんでいる。シンジはウェットティッシュを捜してきて、ポイッとかごの中に放り込んだ。どうせ注意したところで聞きはしないのだから、先手を打って解決策を講じたほうがいいに決まっている。
「ねえねえ、シンジ君は何か食べたいものある?」
「・・・・・・べ、別にないよ(^^;;)。カヲル君はこれだけでいいのかい?」
7品もある。普通だったらとても”これだけ”とは言えないが、カヲルの底なしの食欲を知っているだけに、一応尋ねてみるシンジ。
「うん。取りあえずこれでいいや、荷物になっちゃうし。もし足りなかったら、また買い足しに来ればいいもんね。」
「そ、そう(・・・・・・・・・・これでも足りなかったらという仮定が出るのかーー;;)。じゃ、僕お金払ってくるから、カヲル君は外で待ってるといいよ。」
「わかった~(^o^)。」
言い終わらないうちにカヲルはさっさと店外に出ていってしまった。
(これ、ワリカンにすらならないんだろうな・・・・・・・・。)
シンジは財布の中身を確かめて、どんよりと暗い気分になっている。ただでさえチケット代で散財するのに、これではたまらない。
(僕なんかよりカヲル君のほうが絶対たくさんお小遣いを貰っているのに・・・・・・・。)
しかし、この正当な意見を本人の前ではっきりと言えないところが情けない限りだった。
「遅いな、シンジ君。レジ混んでるのかなあ。」
コンビニの前で所在なさげにきょろきょろしながら待つカヲルだったが、シンジはなかなか戻ってこない。
「あ~あ。どれかひとつだけでも先に精算しとけば良かった。そしたら食べながら待っていられたのに。ちぇっ。」
もう食べる気なのか。
「あれ?渚じゃないか。こんなとこで何やってるんだ?」
いきなり声をかけられて、カヲルはちょっと戸惑ったが、もともと物怖じしない性質だ。ゆっくりと声のした方に向き直る。
「な~んだぁ、ムサシ君かあ。」
見知った顔を確認して嬉しげに笑うカヲル。そこにいたのは現在カヲルが平日に一番お世話になっているであろうクラスメートのムサシ・リー・ストラスバーグだった。
「これから新東京リリスメインホールに行くんだよ。」
「リリスホールへ?今日何かイベントあったかな。」
「違う違う。ウインドミルのコンサートチケットが明日、特別販売されるんだ。だからなんとか入手するために前日から並ぼうと思って。」
「えっ、マジか?ウインドミル、リリスホールでコンサートするんだ。てっきり武道館クラスのことでしかやらないと思ってたよ。最近ちょい忙しくて情報誌チェック甘くなってたな。」
「ムサシ君もウインドミルのファンなの?」
「自慢じゃないけど、メジャーデビュー前のインディーズレーベルのCDも持ってるぜ。コンサートも何度も行ってるし。」
「ふうん。僕はあまり興味ないけど、やっぱりスゴイ人気なんだ・・・・・。」
「興味ないのにどうしてわざわざ徹夜までするんだ?」
「シンジ君がウインドミルの大ファンなんだもん(*^o^*)。」
「・・・・・・・ああ、シンジ君、ね。」
思わず苦笑するムサシ。毎日毎日カヲルから”恋人”の話は山ほど聞かされている。おかげで会った事もないのに、ムサシの中ではすっかりシンジ像が出来あがってしまった。
「シンジ君が徹夜するなら僕も一緒だよ!!」
屈託なく言い放つカヲル。そこに両の手にコンビニの大きいビニール袋をぶら下げて、シンジが勘定を済ませて戻ってきた。
「カヲル君、お待たせ。」
「あ~、もお、遅いよ、シンジ君は。」
「でも、誰かと親しげに話してたみたいじゃないか。」
レジで並んでいるときにシンジはすでに”誰か”の存在に気がついていたらしい。
「シンジ君、彼はクラスで僕の隣に座っているムサシ君だよ。いつもノートを貸してもらったり、宿題を丸写しさせてもらったり、教科書を見せてもらったりいろいろお世話になってるんだ。」
「・・・・・・・カヲル君、教科書くらい忘れないようにしようね(^^;;)。」
カヲルが相変わらずちっともノートを取っていないことにシンジは呆れたが、敢えてそのことには触れず、最低限の注意だけしておいた。どうやらカヲルは誰かに迷惑をかけることなしに生きていくことが出来ないようだ。そりゃあ、人生誰にも世話をかけず暮らしていくことは不可能だろうが、それにしてもカヲルの場合はひど過ぎる。
「ムサシ君、こっちがいつも話している最愛のハニー、シンジ君だよ~(#^.^#)。」
「か、カヲル君、そういういい方は・・・・・・・(@@;;)。」
焦りまくるシンジとは対照的にムサシは涼しい顔で受け流している。
「ムサシ・リー・ストラスバーグだよ。はじめまして、碇シンジ君。」
「あ・・・・ヨ、ヨロシク・・・・・・。」
おずおずと挨拶を返すシンジ。
「で、せっかくのデートの邪魔をするようで悪いんだけど、俺も一緒に並びにいっていいかな?」
「えっ、ムサシ君も?」
「ウインドミルがホールでコンサートをするなんてめったにないからな。こんな美味しい機会を逃しちゃファン失格ってもんさ。いい情報をサンキュー、渚。」
そう締めくくって、カヲルに笑いかけるムサシは男のシンジの目からみてもなかなか、かなりカッコいい。
「いいよ、ムサシ君だったら(^o^)。」
「もちろんだよ。大勢の方が心強いしね(^-^)。」
カヲルもシンジも手放しで仲間の増加を歓迎した。
「じゃあ、さっそくリリスホールへ行こうよ。もう人が来てるかもしれないし。」
「そうだね、出来るなら最初の5人には入っておきたいよなあ。」
一般のチケットショップやプレイガイドよりは遥かに大量の切符を確保しているだろうが、油断は禁物である。三人はさっそく目的地へ向かった。
「やっぱりもう何人か来てるみたいだね。」
遠目に人の姿が目に入ったものの、なんとか4、5番目くらいのポジションは確保できそうで、一同はほっとした。
「あ、霧島さんもいる。」
最近、流行りのエスニック系のスカートをはいた少女がこっちに気づいて手を振っている。
「遅いわよ~、シンジ君。・・・・・・・あらっ、渚先輩ついてきちゃったのね(^^;;)。」
「人をオマケみたいに言って、何だよう~(><)。」
そんなカヲルの様子を見ても口元がほころんでいたマナだったが、もうひとりの連れに気づいた瞬間、形相が一変した。
「・・・・・・ムサシ!?どうしてこんなとこにいるのよ。」
「ええっ!?君たち顔見知りなのかい?」
あまりにも思いがけない展開に、ただただあっけに取られるカヲルとシンジ。
けれども間髪いれずに反応したマナとは対照的に、ムサシは彼女の立ち姿を上から下までまじまじと見つめた末に絞り出すように言葉を発した。
「・・・・・・・・マ、ナ?ホントにマナなのか・・・・・・・。」
それはまるで初対面の相手に対するような妙にぎこちなく、躊躇いがちな問いかけだった。
TO BE CONTINUED