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「ま、群馬じゃレッドサンズの次くらいには考えていいからな、中里のRは。AWDってのが気にくわねーけど。
んでもチームに他に上りの相手がいないっつーのも考えもんじゃねえのか? たまにならオレが来て走りこみに付き合ってやっても良いぜ。
下りもそいつよりは速いしな」
「んだと! …フン…妙義を舐めんのもいい加減にしてもらいてえもんだぜ高橋啓介。高名な高橋兄弟の弟がわざわざこっち来てくれなくっても、俺たちは俺たちのやり方でのし上がってやらあ。なあ毅」
「あ? あ、ああ」

余裕かましまくりでも凶暴そうな高橋弟くんと、イラっとしながらも舐めた態度をとろうとする慎吾の小競り合いに挟まれて、中里くんはちょっと困ったように頷いた。(条件反射っぽいわね)

「おい中里、チームメイトだからって間違った考えに頷くのはどうかと思うぜ」
「おい毅、こいつ何なんだ、何でこんなお前に慣れなれしいんだ。他所のチームが口出すんじゃねえって言ってやれ!ビシッと言ってやれ!」
「いやその… お前らちょっと落ち着け」
「オレはずっと落ち着いてるだろ? ぎゃんぎゃんうるせーのはお前んちの飼い犬だろーが」
「かっ… オレは犬じゃねえ!」

そうよね、慎吾は犬っていうより、狐とかそっち系の…

「啓介、いい加減にしろ。慎吾も落ち着け」
「…」
「…」

中里くんを挟んで、むうっとフクれている弟くんと慎吾。
ヤレヤレって顔の中里くん。
そしてそれをにこやかに眺めている高橋涼介。…すごい絵面だわよね…ほんと。

それにしても中里くんて、こういう面倒くさそうな性格の男に好かれちゃう体質なのかも知れない。






注文した料理がどんどん届きはじめ、高橋兄弟も追加注文をして(ウェイトレスさんが頬を赤らめていたわよ)
テーブルの上は置ききれないくらいのお皿で大分賑やかになっていた。
ドリンクバーもつけているから、ドリンクのお代わりなんかで席の入れ替わりが激しいけれど、中里くんを囲む一帯は不可侵な感じだった。

本当は私も席を色々代わって、ナイトキッズのメンバー達とお話してあげたいんだけど、こんな面白い豪華メンバーを間近で見る機会はめったに無いものだから、同じ席のまま中里くん達をついつい観察してしまう。

「それ美味そうだな」

肉料理を一皿あっと言う間にたいらげた高橋弟くんが、隣の中里くんのお皿を覗きこむ。

「お前じゃ味見程度じゃ足りないだろ。食いてえんだったら追加で注文するか?」
「んー… 一口食ってから考える」
「なら… あ、お前そっちの皿の付け合せ食ってねえじゃねえか。ちゃんと付け合せも食えって言ってるだろうが」

肉料理の乗っていたお皿には、付け合せに細かい温野菜が残されてる。

「えー…だってフォークですくうの面倒くせーし」
「大食いのくせに我侭言うんじゃねえ。ちゃんと残さず食ってから次のを食え」
「うー」

口を尖らせらがらも、弟くんはフォークで不器用に野菜を刺して口にする。

「あ、こぼしてるぞ ホラ」
「だから面倒くせーって」
「どっか服に染みとかつけてねえだろうな、染みは洗濯が面倒になるんだぞ」
「んー? 床に落ちただけだぜ」

二人仲良く机の下を覗き込んでいる中里くんと弟くん。
そしてそれを眺めていた周りの私達は微妙な空気に包まれていた。

「いつも啓介が面倒をかけてすまないな」

え!?いつも!?

「そう思うんだったら、もっとちゃんと弟を躾けといてくれ」
「甘やかしているつもりは無いんだが」
「アニキは厳しいぜ。怒るとすっげー怖えーし。甘くねーっての」

「いやでも涼介が怒ったとこ見た覚えがないな。どんな時に怒るんだ」
「コンパで飲みすぎて次の日夕方まで寝てたら怒られた。あん時アニキ忙しくてそん時三日くらい寝てなかったんだよなー。その晩すっげー厳しい走りこみの課題出された。クリアできるまで帰れなかったんだぜ」

「…夕方までよく寝られるもんだな。つーか涼介、お前ちゃんと最近寝てるのか? 連続徹夜とか無理し過ぎだぜ」

「寝貯めができる体質だから、適当な空き時間を見つけては休むようにはしてるさ。時間の長短よりもいかに充実した睡眠がとれるかも今の研究対象だしな。睡眠は量より質だ。そうは思わないか?中里」

「あーだからアニキは、中里に着ぐる…」

「たったっ高橋ッ啓介ッ! ホラ、これ食いたかったんだろ!食え!!」
「んむぐっ☆」

弟くんが何か言いかけたところで、焦りまくった中里くんが自分のお皿の肉団子を箸で弟くんの口につっこんだ。

「うんあおいいありいっうりうんあお!」

もごもごと大きいサイズの肉団子を咀嚼している弟くんに、中里くんが声を潜めて話かける(でも聞こえてるけど)

「啓介ッ 余計なこと、言うんじゃねえ」
「あーそっか、そうだよな。大体あれはアニキの隠れ趣味でもある訳で・・・」
「啓介、俺のビーフシチューも美味いが食いたいか?」

その瞬間のお兄様のキラーンとした視線が、気のせいなのかものすごく恐怖を感じさせた。

「あっアニキっ あ、ええええっと、そーだ肉団子美味いから追加で注文しても、いい、か?」
「そうか、肉団子はそんなに美味いのか。中里、俺も一口味見させてもらっても良いかな?」
「お、おう食って良いぜ」

中里くんのお皿にはあと二つしか肉団子が残ってないけれど、気前よくそれを高橋兄様にお皿ごと差し出した。

「何だ、俺には食べさせてくれないのか?」
「は?」

…え?

くすっと笑ったお兄様は甘ったるい声で囁きながら

「ビーフシチューも美味いぜv」

疑問系の形に開いた中里くんの口に、ビーフシチューを掬ったスプーンを突っ込む。
周りの客席から、ざわわっという形容しがたい動揺が伝わってきた。

「むぐぐっ」
「口に合うかなv」
「涼介〜ッ 俺は別に何も言ってないだろうが」
「弟の不注意の詫びのつもりだったんだが」
「………いいから、訳わからねえことしないでくれ」
「中里もさっき啓介にやっただろう?」
「あ? ああ…ありゃその…悪い、焦っちまったからよ。もしかしてそれを怒ってんのか?」
「そうじゃないさ。ただ機会は均等にあるべきだと感じたまでだよ。…まあでも機会は作ろうと思えばいくらでも作れるんだったな。なあ中里v」
「………」

……………
あのー…周りに私達がいるって分かってます? もしかして見えてないのかしら。まあ声を落として三人でヒソヒソ話している感じではあるんだけど、でもこれだけ近かったら聞こえちゃうんだし。…いえ、むしろ、聞かなかったことにしたいような空気に満ち満ちてますけど。

「…おい、毅…一体お前なんだって…」
「あ?」
「いつの間に高橋兄弟に懐かれてンだ。ずいぶんと仲が良いみてーじゃねえか」

そうよね!ずいぶんと仲が良いわよね…
慎吾の指摘に私もウンウンと頷いた。

「えっ!? いや、別に仲なんか良くねえぞ」
「否定するのかよ」
「意外とつれない所があるんだな中里は」
「え!?い…いやその」
「ふーん…まあ良い。毅ホラよ」
「え? んぐぐッ」

慎吾は、自分の前のお皿にあった、エビチリの大きめのエビを中里くんの口につっこんだ。

「あにふうッ」(←何するッ)
「お前の肉団子そいつらに食われちまって足りねえだろ? 優しーいオレさまが一口分けて差し上げようって言うんだよ。ありがたく味わえ」
「んぐっ。ったく、唐突にやるんじゃねえよ慎吾」
「けっこう美味かったろ?」
「…まあ味は悪くねえが」

「………中里さん…」
「ん? 何だ藤原」

ずっと目の前のわけのわからない展開を眺めていたメンバーの中から、勇気ある拓海くんが中里くんに声をかけた。

どんな発言をするつもりなの拓海くん!

「エビなら………このエビフライも美味いっス………食いませんか」
「………」

拓海くんがエビフライをお皿ごと勧める。

「……いや、でも…それ三つしかねえのに、オレが食っちまったら無くなっちまうだろ?」
「……エビフライ好きじゃないっすか?」
「い、いや、好きだけどよ」
「………」
「あ、じゃあ、肉団子と交換するか?」
「……はいv」

残り一つになっていた肉団子は拓海くんのものになった。

はー…何ていうか、疲れるわね、この展開。

ちょっと現実を遠く感じていたら、左隣の席のナイトキッズメンバーから
ボソボソとした会話が漂ってきた。

「毅さん、イカリング好きっすかね」
「この和風ハンバーグ美味いんだけど、食いかけじゃ駄目だよな」
「こっちの枝豆、手つけてねえの、毅さんに…」

多分右隣の席のナイトキッズメンバーも似たような会話をしてるのかと思うと、何だかもう…お腹いっぱいな気分で仕方なかった。



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あ…あれ? 短くてすみません(汗) 続きます〜
地味ですがハーレムです…か?






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