水晶恒温槽 (Xtal-oven)

自己満足の ガラクタ 博物館 (0609)

【 何とも 珍しくない ガラクタたち! ラジオパーツに 留まらないのが 珍しい 】


温度計の付いた恒温槽

水晶振動子は機械的大きさによって振動周波数が決まります。 そして正しく設計された電子回路と組み合わせることにより規定の周波数で動作します。
しかし現実には意図しない周波数の変動が発生する場合が有ります。 これは動作環境の温度変化が水晶振動子や発振回路素子の定数変化を招き周波数偏差を生じさせます。

水晶振動子は原石から切り出す場合その結晶角度により発振モードや温度特性に違いがあります。
この結晶角度について世界的発明である古賀逸策博士の研究によるRカット、古賀カット、ATカットと呼ばれる温度係数0のカット方式があります。 ATカットは現在でも一番多く使われるカット方式です。 

周波数偏差を限りなくゼロに近づける為の一つの方法は環境温度の変化を無くすことです。
そこで温度を一定に保つための容器が工夫されました。 それが恒温槽です。電気ヒーターとバイメタル等による温度SWを組み合わせた容器に水晶振動子を入れます。
初期には水晶振動子のみを恒温槽に入れ、さらに温度の影響を受ける発振回路も恒温槽に入れてしまう方向に進みました。
しかしこの恒温槽には大きな欠点があります。
真空管が主体の時代は電子回路の発熱や、外気温を考慮すると槽内温度をかなり高く(60〜70℃前後)しなければならず、 高温に曝されるため回路部品の劣化が大きいこと、さらに装置を作動させてから温度が一定になるまでの時間が長く掛かりその間使えないことなどがあります。

※一般の水晶振動子は常温で使用するように作られています。一般用水晶振動子を恒温槽に入れた場合周波数を合わせられなくなることがあります。

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【 HC6/U型恒温槽 】

恒温槽としては簡便なヒータとバイメタルによる温度SWを小型の箱に入れたものです。 使用するXtalとしては耐候性の良いHC6Uを使用します。槽内温度は60℃程度です。 5W程度の電力を必要としますが-20~50℃くらいの雰囲気中で使用できます。

バイメタルの構造が違う2種類を展示しました。左の製品は螺旋状に巻いたもの、右の製品は円盤状のもの、 いずれも温度変化により形状が変化して機械的にSWを操作するようになっています。
機械的接点の寿命、接点から発生するノイズについて考慮しなければなりません。
下の写真はXtalを実装したところですが、Xtalの横の板状のものがヒータです。
(サイズ30X30X40)

1960年頃の製品です。

【 HC13U型恒温槽 】

HC6U型と同じ構造のものを長くしてHC13U型のXtalを入れるようにしたものです。 展示品はXtalの両側にヒータ(6.3V0.75A)があり熱適に強化したものと思われます。
(サイズ34X34X64)

大光電気工業 1967-3

【 H 型 】 

円筒形の H 型です。
このタイプは少し太めで大型の水晶が入ります。
下側の小さいのはHC6/Uです。その右側の大きい水晶振動子(KSS)
(形式不明・サイズ28X30X12)がこれに使われている90.000KC(kHz)です。

DAIKO E W 1967-5 製
43φX50mm

【モトローラ・Motorolaの恒温槽l】

寿命が気になる接点をXtalと同じケースに封入しています。 手前の黒いケースのXtal様のものが温度SWユニットで故障の場合もSWのみの交換が出来ます。製造年については不明ですが1940〜1950年頃と思われます。type D-2、D-4など同じ形状でいくつかの型番が使われています。

中段は大きさ形状はほとんど同じですがケースはクロムメッキの金属製です。
サーモSWは交換できません。また開放型のSWですからtype-Dの方が信頼性は高いと思われます。
*台紙のメッシュは10mm

下段 TYPE801 FT243型Xtalを2個重ねた大きさです。
4pinのコネクタで他のovenと共通です。

一般的にサーモSWの交換は勿論Xtalの交換も出来ません。
*アマチュアが開封してXtalを交換することは可能です。

【 75℃ CRYSTAL OVEN 】

形式名が不思議な表記です。メーカのちがう類似機種も75℃と書かれています。 75度というのは当時の電子機器としては使用限界に近い高温です。そのために60℃が多かった温度を意識してのネーミングなのでしょうか。 簡易型としては珍しく断熱材で保温されています。ヒータの電力は27.5V・1Aで大変な代物です。

【円筒形の小型恒温槽 】

日本ではあまり見かけない形式です。(左側一種のみ日本製)

温度はこれも高温タイプで75℃です。
※槽内温度 槽内温度が当時の電子部品の限界に近い温度に設定しているのは真空管を使用していたため 機器内温度が高くそれより高い温度でないと一定温度に保てない苦渋の選択です。

左から2番目のケースにHC6Uを連想させるマークがありますが2個のHC6Uを入れることが出来ます。
当初
 Motorolaのtype-D同様片側にはサーモSWを嵌めるモノと誤解しておりました。
記載内容に間違いがあり修整しました。(ja1cvf 1007)

【参考  】
恒温槽にはAMB TEMP.等の表記を見かけますが
ambient temperature 周囲温度、環境温度のことです。

【 K-2型水平式恒温槽 】

その名の通り日本規格のK-2水晶振動子が入ります。
水平式とありますが水晶が水平になるように設置するにはこのように横向きに設置しなければなりません。
水平式がなにを意味するのかは不明です。
槽内温度は51.5℃です。
断熱材に桐の板(厚さ約8mm)が使われているのが何とも日本らしいと思います。

新興電気工業 昭和28年3月製
60X70X100mm

【 CRYSTAL OVEN 16HC6/U 】

16個のHC6/Uを入れることが出来ます。形式もその名の通りです。
2重になっている内部のXtalケースにヒータが取り付けられていますが外部ケースの間には断熱材は入っていません。

SHINKO ELECTRC IND. CO  JUN-1970
 130X60X60 突起部含まず

【 温度計付き恒温槽 】

少し大型の温度計付き恒温槽です。熱伝導の良い銅製のケースにヒータを巻き付けたもの。 Xtalはガラス管タイプでしっかりと保温材で包まれています。 Xtalの温度変化(脈動)を小さくするための工夫でしょう。
温度計は外ケースの穴から差し込むようになっています。常時温度を監視したものと思います。

槽内温度 65℃ 115V/AC
Northern Engineering Laboratories

恒温槽としてはさらに大きな形のものも見受けます。 大型のものはベローズ(空盆)を利用した温度SWなどもありますが温度の脈動を小さくする工夫が見られます。

【 進化した恒温槽 】

恒温槽と水晶片を一体的に組み込んだモノです。

左の二つは参考品(Xtal)です。右側は内部にヒータ?(抵抗体10Ω)が組み込まれています。サーモスタットも組み込まれ密閉型の構造で 耐久性、安定性の向上につながったものと思われます。

米海軍の錨マークがスタンプされています。
CAT.32C401G31 のナンバが付されていますが詳細は不明です。
水晶は5000kc 1951年10月 GE の製品です。

 

ヒータ組み込み型 CRYSTAL UNIT 

1000kc DC13?A ヒータは6.3v・FIESTA/0.3A
ZENITH RADIO COP??
スタンプによる表記のため一部判読不能です。

【 電子式の恒温槽 】

恒温槽はヒータのON-OFFで温度を制御していますから、そのSWの寿命が問題になります。 またノイズの発生源にもなります。

トランジスタが熱に強くなりこのような熱源機器にも使えるようになりました。 サーミスタのような感熱素子を使ってトランジスタの電流を制御しています。 つまりトランジスタをヒータの代わりに使っているのです。 展示品の場合緑色のトランジスタの後ろ側にXtalが挟まっています。
トランジスタを使わず正特性のサーミスタ(ポジスタ)をそのまま熱源にしたものもあります。
簡易型ではありますが温度安定性は良かったと思われます。

これ以上簡単なモノはないと思われる製品です。

板金を加工して発熱体・ポジスタを貼り付けたモノです。
ポジスタは電流を流し加熱すると抵抗値が大きくなり電流を抑制します。
と云うことはある一定の温度で平衡が取れ一定温度を保ちます。
左側板金の側面にポジスタが張り付いているのが解りと思います、中央の写真円盤状のモノです。
これを水晶振動子に被せ恒温槽としての機能を持たせました。

これは HC18/U(W) に使用した例です。(水晶を正位置にしたので逆に見えます)

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