ハードボイルド・スクール|チャンドラー人物小事典
ブラシャー・ダブルーン金貨と5000ドル札
『高い窓』に登場するブラシャー・ダブルーンは1787年に試鋳造されたアメリカ初の金貨。作中では履歴と状態によっては1万ドルと書かれているが、60年以上を経た現在では200万ドルを超える金額で売買される例もある。
『長いお別れ(ロング・グッドバイ)』に登場する5000ドル札は1934年の発行で、肖像は第4代大統領ジェイムズ・マディソン。このような超高額紙幣は銀行間の決済にのみ使用され、一般に出回ることは稀らしい。

●ここでは、フィリップ・マーロウを主人公とするチャンドラーの作品2作以上に登場する主要キャラクターを紹介しています。●『プードル・スプリングス物語』はチャンドラーが書いた第四章までを対象としました。
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フィリップ・マーロウ / Philip Marlowe
フィリップ・マーロウの登場する作品
【長編】 『大いなる眠り』
『さらば愛しき女よ=さよなら、愛しい人』
『高い窓』
『湖中の女』
『かわいい女』
『長いお別れ=ロング・グッドバイ』
『プレイバック』
【短編】 『フィリップ・マーロウ最後の事件』
【未完】 『プードル・スプリングス物語』

ロサンゼルスで個人開業している私立探偵。サンタローザ生まれで『大いなる眠り』初登場時に33歳、『長いお別れ=ロング・グッドバイ』では42歳。生存する肉親はいない。仕事ぶりは熱心で、依頼人の利益の為なら警官とやりあうことも辞さない。また、離婚問題は扱わず、そうでない場合もまずは警察に相談することを勧める職業上の良識を持っている。調査費用は当初一日25ドルと必要経費だったが、物価の上昇とともに『かわいい女』以降は40ドルと必要経費となった。趣味はチェスで、酒はウイスキーのストレートを中心に何でも飲み、煙草は主にフィルター付のキャメルを嗜む。よく言われる「仕事絡みの女性には手を出さない」は金科玉条というわけではないらしい。

[写真]フィリップ・マーロウをモチーフにした記念切手
 上 :インターポール50周年記念切手(1972年/ニカラグア共和国)
 中 :映画誕生100周年記念切手(1996年/英王室領ガーンジー島)
 下 :同じく映画誕生100周年記念切手(1996年/ドミニカ共和国)
映画誕生100周年記念切手のボギーとミッチャムは誰もが納得の貫禄だが、一番上のインターポール(国際刑事警察機構)50周年記念切手は分かりにくい。実はこのマーロウのモデルはフレッド・マクマレー。彼が主演したワイルダーとチャンドラーの共同脚本映画「深夜の告白(1944年)」のワンカット(上の写真)が何故か切手の図案として使われたのだ。


バーナード・オールズ / Bernard Ohls
バーナード・オールズの登場する作品
【長編】  『大いなる眠り』
 『さらば愛しき女よ=さよなら、愛しい人』※名前のみ
 『高い窓』
 『長いお別れ=ロング・グッドバイ』
【短編】  『フィリップ・マーロウ最後の事件』
地方検察局の課長。かつてのマーロウの上司で、命令に従わないマーロウに手を焼いたはずだが、現在は身元保証人となっている。『大いなる眠り』でスターンウッド将軍にマーロウを紹介したのも彼。優秀な刑事で、マーロウとはお互いの立場を理解し、ときには相手を利用するような大人の関係を続けている。サブ・キャラクター中、登場回数が最も多く、更にロバート・B・パーカーの『夢を見るかも知れない(おそらくは夢を)』と『プードル・スプリングス物語』にも登場する。


カール・ランドール / Carl Randall
カール・ランドールの登場する作品
【長編】  『さらば愛しき女よ=さよなら、愛しい人』
 『高い窓』※名前のみ
ロサンゼルス警察本部殺人課の警部補。冷たい印象を与えるが優秀な警官で、正義感が強く頭も切れる。『さらば愛しき女よ=さよなら、愛しい人』ではマリオ(マリオット)事件でマーロウの取り調べにあたり対立したが、その後はお互いを認め合うようになった。警官嫌いのマーロウにとって、信頼できる数少ない警官の一人であり、総じてチャンドラー作品には珍しいタイプの警官。『高い窓』ではマーロウの身元保証人の一人になっていた。


アン・リオーダン / Anne Riordan
アン・リオードンの登場する作品
【長編】  『さらば愛しき女よ=さよなら、愛しい人』
【短編】  『フィリップ・マーロウ最後の事件』
ベイ・シティ(サンタモニカがモデルと思われる架空都市)警察の元署長の一人娘。旺盛な好奇心と親譲りの強い正義感を持つ魅力的なフリーライター。両親とは死別しており、『さらば愛しき女よ(さよなら、愛しい人)』でのマーロウの印象では28歳くらい。彼が苦手とする「気立てが良くて健康的な女性」である。マーロウに好意を寄せ、献身的ともいえる協力をするが結局一度も結ばれることはなかった。


リンダ・ローリング / Linda Lorring(Linda Marlowe)
リンダ・ローリングの登場する作品
【長編】  『長いお別れ=ロング・グッドバイ』
 『プレイバック』
【未完】  『プードル・スプリングス物語』
大富豪ハーラン・ポッターの長女で、テリー・レノックス夫人シルヴィアの姉。どこか陰のある美しい女性である。マーロウと出会った時は既婚であったが、後に夫のローリング医師とは離婚した。『長いお別れ(ロング・グッドバイ)』でマーロウと関係を持ち、お互いに忘れられぬまま一度は別れたが、その後の『プレイバック』、さらに『プードル・スプリングス物語』と意外な関係に発展してゆく。

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