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”卑しい街をゆく高潔の騎士”。少々気恥ずかしい形容がよく似合うフィリップ・マーロウは身長183センチ、体重86キロ、濃い褐色の髪と茶色の目、そしてハスキーな声と甘いマスクの持ち主だ。ハンフリー・ボガート、ロバート・ミッチャムら多くの大物俳優がこの二枚目を演じたが、チャンドラーが「最もマーロウのイメージに近い」といったのはヒッチコック映画で有名なケイリー・グラントだった。 |
●ここでは、チャンドラーの長篇小説を紹介しています。●映画は主人公の名前がフィリップ・マーロウでないものは省きました。 ●主要登場人物小事典では長篇小説2作以上に登場するサブキャラクターを紹介しています。 INDEX - 邦訳作品リスト - 中・短篇集紹介 - マーロウ・トリビュート - チャンドラー関連書籍 - 登場人物小事典 |
| 大いなる眠り 【The Big Sleep/1939】創元推理文庫(双葉十三郎訳) | ||||
| 私立探偵マーロウは、スターンウッド将軍の娘がゆすりにあっている件で、将軍家へ招かれた。マーロウは、脅迫状の差出人の家へ行き、二発の銃声を聞いて家の中へとびこんだが、それは秘密写真撮影の現場だった。(東京創元社ウェブサイトより) | ||||
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チャンドラー初の長篇小説で、これ以後すべての長篇の主人公となるフィリップ・マーロウの初登場作。パウダーブルーのスーツに身を包んで颯爽と登場したマーロウは、原作では33歳であったのに対し、ボギーがマーロウ、バコールがヴィヴィアンを演じた映画「三つ数えろ」では38歳という設定。さらにミッチャムはなんと61歳でマーロウを演じた。 | |||
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カバーは世につれ 本のカバーデザインは作られた時代のムードや流行を反映していて興味深い。右は一世代前の長編文庫のカバー。 |
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| さらば愛しき女よ 【Farewell,My Lovely/1940】ハヤカワミステリ文庫(清水俊二訳) | ||||
| 前科者大鹿マロイは、出所したその足で以前別れた女を捜し始めたが、またもや殺人を犯してしまった。たまたま居合せた私立探偵マーロウは、警察に調べられる。その後彼はある事件を依頼された……。(早川書房ウェブサイトより) | ||||
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「大いなる眠り」の翌年に発表された長編第2作。プロットに凝っていた印象の前作から、雰囲気重視の路線に見事にシフトし、前作以上の成功を収めた。フィリップ・マーロウをハードボイルド派を代表するヒーローに押し上げ、チャンドラーの作風を決定的にした初期の名作。悪女に哀しい純愛を捧げる大鹿マロイの人物造形が秀逸だ。 | |||
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| 高い窓 【The High Window/1942】ハヤカワミステリ文庫(清水俊二訳) | ||
| 家宝の古金貨が家から持ち出された。犯人は息子の嫁かもしれない。取り戻してほしい――裕福な老婦人の依頼で、マーロウは金貨の行方を追った。だが、その先々に次々と現れる死体。そして事件の意外な様相と過去の出来事がやがて浮かび上がってくる。(早川書房ウェブサイトより) | ||
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チャンドラーといえばこの人といわれる翻訳家、清水俊二氏(1906〜1988年)の生涯最後の翻訳作となった作品。残り数ページを残し逝去した後を戸田奈津子氏が完成させた。清水氏はチャンドラーの長編全訳を目指したといわれ、志半ばで逝かれたのが残念だ。日本のチャンドラー人気は、氏の映画字幕で培ったリズムと雰囲気を重視した流れるような名訳なくては有り得なかったろう。 | |
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おれはマーロウ 『高い窓』と『湖中の女』には普及版である清水俊二訳の前に、故・田中小実昌氏(1925〜2000年)によって訳されたポケットミステリ版が存在する。総じて清水訳に比べて威勢がよく若々しい「べらんめい調」マーロウには今もファンは多い。残念ながら現在は絶版となっている。 おれはマルティニをもつて壁ぎわのちいさなテーブルにいき、腰をおろして、タバコに火をつけた。 (田中小実昌訳『高い窓』18章の出だし部分) |
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| 湖中の女 【The Lady In The Lake /1943】ハヤカワミステリ文庫(清水俊二訳) | ||
| 湖面に浮かび上がってきたのは、目もなく口もなく、ただ灰色のかたまりと化した女の死体だった――マーロウは一カ月前に姿を消した化粧品会社社長の妻の行方を追っていた。メキシコで結婚するとの電報があったが、情夫は否定した。そこで湖の別荘へやってきたのだが……。(早川書房ウェブサイトより) | ||
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太平洋戦争最中に書かれたためか物語全体が重々しい雰囲気に包まれ、その意外な結末、大人しいマーロウなど一連の長篇とは趣きが異なる作品だが、そこが良いというファンも多い。モンゴメリイの映画はマーロウの視点をカメラが追う(つまりマーロウが登場しない)という珍しい一人称映画。 | |
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ボギーかミッチャムか 銀幕のマーロウといえば、ハンフリー・ボガートとロバート・ミッチャムがまず頭に浮かぶが、ボギーはサム・スペードのイメージが勝ち、ミッチャムはやや渋過ぎるというのが大方の意見ではないだろうか。変り種といえば「ロング・グッドバイ」のエリオット・グールド。モジャモジャ頭にいつも咥え煙草で猫を飼っているマーロウには、受け入れ難いというファンがいるのも当然か。 |
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| かわいい女 【The Little Sister / 1949】創元推理文庫(清水俊二訳) | ||||
| かわいい娘が二十ドルを差し出して、マーロウの援助を求めて来た。娘の中にある奇妙ないつわりの態度に興味を抱き、マーロウは事件をひきうけた。舞台は映画王国ハリウッド。街の顔役、ギャング、映画女優、愛欲物欲が錯綜し、マーロウの行く先に、死体と拳銃の雨が降る! (東京創元社ウェブサイトより) | ||||
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もともと遅筆だったチャンドラーだが、この作品が前作から6年もの間隔があるのは、この頃は脚本の仕事が中心だったため。この作品もハリウッドを舞台に映画界の裏側を題材にしている。チャンドラー自身はあまり気に入っていなかったと言われているが、印象に残る名フレーズに溢れた作品だ。 | |||
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長いお別れ 【The Long Goog-bye / 1953】ハヤカワミステリ文庫(清水俊二訳) ロング・グッドバイ 【The Long Goog-bye / 1953】 早川書房(村上春樹訳) | ||
| 私立探偵フィリップ・マーロウは、ふとした友情から見も知らぬ酔漢テリーを二度も救ってやった。そして彼はテリーの殺害容疑を晴らす為に三たび立ち上るのだった!(早川書房ウェブサイトより) | ||
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シリーズ中最も長く、一般にチャンドラーの代表作と呼ばれる作品。1954年度のMWA最優秀長篇賞を受賞した。孤独な私立探偵と2人の誇り高い酔漢、そして2人の魅力的な人妻との出会いと別れを軸に展開する物語は、ハードボイルド・ミステリーというより友情と愛の意味を問う叙情文学と言った方が正しいかも知れない。グールドがマーロウを演じた映画版は、原作とは筋も結末もかなり違っているのものの、独特の解釈でチャンドラーの世界を再現しようと試みたアルトマン監督の意欲作だ。 そして、清水俊二訳「長いお別れ」から約半世紀を経た2007年、村上春樹訳「ロング・グッドバイ」が発表された。ちなみにこの時点で文庫版「長いお別れ」は版を重ねること68刷(ポケミス版を含まず)。2006年にカフカ賞を受賞し、名実ともに日本文壇の第一人者である村上春樹氏(1949年〜)によって蘇ったチャンドラー第6長編は、多くの支持を集めながらも抄訳との批判を避けられなかった清水訳を補う完訳版としても価値がある。なお、村上訳制作決定に際し、早川書房はクノップフ社から版権を再取得。「長いお別れ」も存続されることとなり、同一出版社から2種の邦訳が同時に流通されるという異例の措置で清水訳の長年の功績に報いた。 | |
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アイドル・ヴァレーの夏 チャンドラー6番目の長篇のタイトルは発表直前まで『アイドル・ヴァレーの夏("Summer in Idle Valley")』と『長いお別れ(ロング・グッドバイ)』という2つの間を揺れ動き、前者を推すチャンドラーが出版社の意向に折れる形で決着した。ちなみにウェイド夫妻やローリング夫妻の住むアイドル・ヴァレーは架空の町。チャンドラーの小説にはエスメラルダやプードル・スプリングスなど印象的な架空の地名が登場するが、複数の作品に登場するベイ・シティとアイドル・ヴァレーは、それぞれサンタモニカとサン・フェルナンド・ヴァレーの高級住宅街がモデルと言われている。 |
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| プレイバック 【Playback / 1958】ハヤカワミステリ文庫(清水俊二訳) | |
| 女の尾行を依頼されたマーロウは、ロサンジェルス駅に着いた列車の中にその女の姿を見つけた。だが、駅構内で派手な服装の男と言葉を交すや女の態度は一変した。明らかに女は脅迫されているらしい。男は影のように女について回った。そして二人を追うマーロウを待つ一つの死とは。(早川書房ウェブサイトより) | |
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ユニヴァーサル社のために書いたオリジナル脚本を焼き直して作られた異色作。この作品の思わせぶりなラストシーンは次の長篇「プードル・スプリングス物語(おそらく仮題)」への伏線だったのだが、残念ながらチャンドラーの死去によってこの作品が事実上最後の長篇となってしまった。 |
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脚本家チャンドラー チャンドラーは生涯に5本の映画に脚本家としてクレジットされたが、オリジナル脚本(原作を持たない脚本)は『ブルー・ダリア(邦題「青い戦慄」)』が唯一だ。監督はジョージ・マーシャル、主演はアラン・ラッドとヴェロニカ・レイク。『プレイバック』もオリジナル脚本として書かれたが、制作予算の関係で映画化は中止、最終稿は発見されるまで37年間ユニヴァーサル社で眠っていた。 |
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| プードル・スプリングス物語 【Poodle Springs / 1989】ハヤカワミステリ文庫(菊池光訳) |
冒頭部分のみを書いて亡くなったチャンドラーの跡をロバート・B・パーカーが継いで完成させたもの。フィリップ・マーロウ・トリビュート参照。
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