ドメスティック・バイオレンス(DV)とは?


ドメステイック・バイオレンスは、外から閉ざされた環境(家の中)で、親しい特定の人間(夫、恋人、婚約者、同棲相手、元夫、元恋人)から、持続的に加えられる女性の心身への暴力による支配です。暴力はさまざまな形をとりますが、いずれも恐怖感を与え、相手の女性を無力化し、自分の思いどうりに服従させ支配しようとするものです。被害を受ける女性は孤立したなかで、親しい関係にあるはずの人間から暴力を再三加えられることにより、心に深刻な傷を残してしまうことがあります。
DV法ができたことにより、近年は体への直接的暴力は減り、証拠を残さないモラル・ハラスメント(精神的暴力)が増加しています。モラル・ハラスメントは見えない暴力です。被害を受けた女性が親や友人等に相談しても「わがまま」と見なされ、がまんを強いられ、DVとして表面化しにくい暴力の一形態です。
あらゆる暴力は女性の基本的人権を侵害し、尊厳を奪う犯罪なのです。


1 身体的暴力
殴る・蹴る・刃物で切り付ける。突き飛ばす・首を絞める・物を投げつける・押さえつける・水や熱湯をかける・火をつけるなど直接身体を傷つける行為。

2 精神的暴力(モラル・ハラスメント)
何を言っても無視する。軽蔑する。「バカ、クズ、精神病!死ね!」など、言葉で相手を傷つけたり、「出ていけ!」「殺してやる」「死んでやる」など、脅す。「能無し!」などと批判し、バカにする。長時間説教する。人格を貶め全否定する。被害者に「自分がおかしい」と思わせ自信を奪う。

3 経済的暴力
生活費を渡さない。妻や子供の経済的必要を認めない。お金を取り上げる。自分だけお金を使う。妻が働くことを反対する。経済的に困窮させる。「誰のおかげで食べてるんだ!」と、男性の経済的な優位性を誇示し、経済的に弱い立場の妻や子どもを依存させる。

4 性的暴力
性行為を強要する。無理やりポルノビデオや雑誌を見せる。避妊をしない。望まない妊娠や中絶を強要する。

5 社会的孤立
交友関係や電話を細かくチェックする。両親・きょうだい・友達・親戚の悪口を言い、交際を制限する。実家に帰さない。仕事をさせない。学校をやめさせる。嫉妬心が強く自分だけを頼りにさせる。

6 脅迫・威嚇
自分の要求を通すため怒鳴り恫喝する。壁やドアを叩く、穴をあける。イス・テーブル・戸棚・テレビ・電気釜・パソコン・携帯等を壊す。 「別れる・殺す・自殺する」「ほかに女を作ってやる」「裁判だ!」と叫ぶ。ペットを虐待したり、殺したりする。

7 子どもの利用
子供の前で暴言・暴力を振るう。子供に母親の悪口を吹き込む。子どもに「悪い母」だと責めさせる。子どもを取り上げる、親権は渡さない。など、子どもを使って追い詰める。

8 男性の特権の利用
家事育児は女性の責任。仕事を持っていても、体調が悪くても手伝わない。女性を自分より一段低く見ている。女性を蔑視・差別する。性別役割分業の強烈な支持者である。


〔参考図書〕
『危機を乗り越える女たち〜DV法10年、支援の新地平へ』 戒能民江編著 (信山社)
※戒能民江さんの本が、2013年7月に新しく出版されました。非常に参考になると思います。支援者の方はぜひご覧ください。
『新版 ドメスティック・バイオレンスへの視点〜夫・恋人からの暴力根絶のために〜』
日本DV防止・情報センター〔編〕 (朱鷺書房)
『知っていますか?ドメステイック・バイオレンス一問一答』 日本DV防止・情報センター〔編〕 (解放出版社)
『司法における性差別 〜司法改革にジェンダーの視点を〜』 日本弁護士連合会(明石市書店)
『ドメステイック・バイオレンス〜在米日本女性のたたかいの記録〜(加藤洋子さん)』
日本DV防止・情報センター〔編〕 (かもがわ出版)
『ドメスティック・バイオレンス』 小西聖子著 (白水社)
『ドメスティック・バイオレンス〜愛が暴力に変わるとき〜』 森田ゆり著 (小学館文庫)
『ドメスティック・バイオレンス サバイバーマニュアル 〜自由への羽ばたき〜』
ウェンディ・スーザン・ディートン:マイケル・ハーティカ 著 柿木和代〔訳〕(明石書店)
『シェルター・女たちの危機〜人身売買からドメステイック・バイオレンスまで ”みずら”の10年〜』
NPO法人 かながわ女のスペース〈みずら〉編 (明石書店)
『DV被害者への対応ハンドブック〜医師及び医療関係者のために〜』 宮地尚子編著 (明石書店)
『DV被害者支援ハンドブック〜サバイバーとともに〜』 尾崎礼子著 (朱鷺書房)
『ドメステイック・バイオレンス〜援助とは何か 援助者はどう行動すべきか〜』
麻鳥澄江 鈴木隆文著 (教育資料出版会)
『援助者の思想〜境界の地に生き、権威に対抗する〜』 リンダ・ジンガロ著 鈴木文・麻鳥澄江訳 (御茶の水書房)