DV被害女性への影響は?


暴力は身体的暴力だけということはなく、精神的暴力・経済的暴力・性的暴力・社会的暴力等を重複して受けている。あらゆる暴力が被害女性の心身に深刻な影響を与えます。
DV被害女性は「夫を怒らせる自分に責任」を感じ、「夫の要求通りにできない自分が悪い」と罪悪感を持たされる。一日中夫の機嫌を伺い緊張し、それは毎日、地雷原を歩くような生活を強いられる。


1 自信喪失
夫に「お前は何にもできないやつだ!」「バカ女!」「女じゃない!」等繰り返し言われることで、自信を無くし、自尊心が低下する。自己肯定感を喪失する。

2 受けた暴力に対する過小評価
ショックを受けても、「大したことではない」「自分が我慢すれば」と、危険な暴力を過小評価する結果、心身に大きな傷(トラウマ)を負ってしまう。

3 うつ状態
夫の暴言・暴力によって、妻は心を捻じ伏せられ「自分は取り柄のない人間だ」と、思い込まされる。無力感に陥る。自責感・絶望感をもつ。何に対しても興味が持てない。何も感じない。

4  不安感
地雷原を歩くような生活の中で恐怖にさらされ、いつもびくびくしていて不安である。

5  睡眠障害
過度の緊張で眠れない。怖い夢を見る。夢でうなされる。

6  集中力・思考力・記憶力の低下
思考能力・集中能力・記憶力が低下する。問題解決が困難。決断できない。困惑・混乱。

7  信頼感の喪失
誰も信用できない。

8  感情の浮沈
物事に過敏に反応する。理不尽な暴力に対する怒りを内面化する。イライラする。感情の浮き沈みが激しい。

9  恥の意識
DV被害を受けてる自分を恥じ、被害を受けてることを隠す。孤立する。

10  絶望感・無力感
自分は一人ぼっち。誰も助けてくれない。

11  行動・身体反応
過度の疲労。倦怠感。動悸。呼吸困難。食欲減退(拒食症)。胃腸障害。吐き気。むかつき。倦怠感。頭痛。めまい。婦人科系その他の医療問題を抱える。病気がちになる。引きこもり。アルコールや薬物に依存する。


〔参考図書〕
『結婚帝国女の岐れ道』 上野千鶴子・信田さよ子 著 (講談社)
『家族収容所〜妻という謎』 信田さよ子(講談社)
『新版 自分でできるカウンセリング〜女性のためのメンタル・トレーニング』 川喜多好恵著 (創元社)
『サバイバーズハンドブック〜性暴力被害回復への手がかり〜』 性暴力を許さない女の会:編著 (新水社)
『エンパワメントと人権〜こころの力のみなもとへ〜』 森田ゆり著 (解放出版)
『癒やしのエンパワメント〜性虐待からの回復ガイド〜』 森田ゆり著 (築地書館)
『アサーティブトレーニングBOOK』 小柳しげ子 与語淑子 宮本恵 共著 小澤亜美イラスト (新水社)
『フェミニストカウンセリングの未来』シリーズ〈女性と心理〉第4巻 河野貴代美編著 (新水社)
『女性のメンタルヘルスの地平〜新たな支援システムとジェンダー心理学〜』 河野貴代美編著 (コモンズ)
『専門医がやさしく教える:うつ病:〜正しい知識を持てば心の病気は早く治せる〜』 水島弘子著 (PHP)
『こころが晴れるノート 〜うつと不安の認知療法自習帳〜』 大野裕著 (創元社)


コラム
 自分自身を助け出そう!
  〜あなたは悪くありません〜


あなたは結婚に何を求めたのでしょうか? 結婚して幸せな家庭を作りたかったのではありませんか?結婚に愛を求め、幸せを求めるのは当然です。しかし結婚した相手が、あなたの愛を受け入れず、暴力を振るうDV夫だった場合、そこに留まることは非常に危険です。あなたの命を縮める可能性があるからです。

夫から暴力を振るわれて、既にうつなどのメンタルな問題を抱え、体調不良になったりしていませんか?病院で受診し、医師に「適応障害」などと病名をつけられてはいませんか?考えてみてください。暴力に適応できる人がいるかどうか。暴力に適応できる人など、現実にはどこにもいないのです。

夫と一緒に病院で受診し、カウンセリングを受けたりしていませんか?これは、最もやってはいけないことのひとつです。医師はあなたが不安げで落ち着かない様子を見て、「うつ」や「適応障害」を抱えた精神的に問題のある人と見なし、平静な夫の「妻がおかしい」という言い分を信用してしまうことがあるからです。
また、あなたが夫婦間のDV・モラルハラスメントなどの事実を医師に話した後、二人きりになった途端に夫が逆ギレして、「お前、医者の前で俺に恥をかかせやがって!」と暴力を振るわれたり、長時間説教されたりすることが起きたりします。

世の中の多くの人は、家庭の中で起きてる暴力を見ないようにし、女性一人ひとりの苦難には関心を寄せず、家族の絆を強調し、家庭を壊さないことに価値をおいています。あなたが相談すると、「がまんが足りない」と言って、DV・モラハラ家庭という牢獄にあなたを縛り付けておこうとします。

辛いのは夫のDV・モラハラをがまんし続けているあなたです。DV家庭に、そのまま留まり、夫のDV・モラハラに晒され続けると、あなたの心身が序々に壊されます。DVは女性の重大な健康問題でもあるのです。ご自分を夫の暴力の犠牲にしないでください。危険な暴力環境から自分を救い出し、一人前の人間として生きていきましょう。

あなたは悪くありません。悪いのは暴力を振るう夫です。「夫が暴力さえ止めてくれたら、いい人なのに」と、夫の暴力を不幸な成育歴のせいだとか、仕事のストレスがあるからだと考えていませんか?こう考えていて、あなたがどんなに努力をしても、残念ながら夫のDV・モラハラを止めさせることはできません。
あなたの夫はDV・モラハラをしてもいいという信念の持ち主です。信念は変えられません。変えられるのはあなた自身の考えと行動だけです。
どんなことがあっても暴力を振るわれて当然の人などいません。夫の暴力から自分自身を助け出してください。あなたの命を守ってください。

あなたが健康で安全に暮らすための第一歩は、あなたがDV被害者であることを認めることです。第二歩目は外部に助けを求めることです。1人でDV・モラルハラスメントを解決することは非常に困難です。
あなたが勇気を出して、諦めないで助けを求めれば、あなたの手を握り返してくれる人は必ずいます。自分らしく一人前を生きて幸せになりましょう。

【 相談先 】
警察安全課・女性相談所・男女共同参画センター・女性センター・民間サポート団体
よりそいホットライン 0120-279-338 (※24時間受付)

by マリコ