子どもへの影響は?
 〜子どもは第二の被害者〜


「子どものためにがまんする」は子どものためにはなりません

DV家庭では、子どもにも直接暴力を振るわれていることが少なくありません。
2004年、改正児童虐待防止法では、「DV家庭において両親のDVを目撃して育つことは、子供に対する虐待である」と定義されてます。
近年の脳研究においては、虐待により子どもの脳の海馬や小脳が傷つき、その発達が阻害されることが分かっています。
また、妊娠中母親が踏まれたり蹴られたりすることによって、死産や低体重・障害を持った子どもが生まれる確率が高いといわれてます。
子どもは成長過程にあり、自分を中心として世の中が廻ってると考えているので、「お父さんとお母さんが仲が悪く喧嘩するのは自分が悪い子だからだ」と、自分を責めます。子どもは、お母さんと同じようにDV被害による影響を受るのです。「子どものためにがまんする」は決して子どものためになりません。


1 父親が母親を殴る現場の目撃や怒声をを聞くことで、母親と同じく暴力の直接の被害者になりやすい。お母さんへの暴力を止めさせようとして暴力に巻き込まれる危険がある。父親から殴る蹴るなど身体的暴力を受けると、子どもは体が小さいので、脳や体に障害を負ったり、内臓破裂など死に至る事故に繋がる危険が非常に高い。
2 アンビバレント(両価感情)な自己像を持つようになる。
3 男女関係・人間関係をDV家庭で学び、暴力で問題を解決しようとする。 暴力の世代間連鎖が起こる。
4 いじめたりいじめられたりするようになる。
5 子どもの健全な身体的・精神的成長発達が阻害される。
6 小さい子どもは遊びの中で外傷(トラウマ)を再演したりする。
7 どんなに小さい子ども、赤ちゃんでも、DVを見聞きすることにより、緊張・不安・恐怖を体験する。
8 落ち着きのない子に育つ。子どもは両親間の暴力沙汰に落ち着いてなどいられないからである。
9 感情をあらわさない。話さない。


★幼少期・学童期
頭痛・腹痛・下痢・喘息・皮膚病などの体の不調・眠れない・悪夢・夜驚・夜尿・爪噛み・吐く・うつ状態・落ち着きがない・貧乏ゆすり・どもる(吃音)・親の暴力的行動を学校等でまねる、いじめる・学習面や言葉の発達の遅れや退化(学業不振)・登園拒否・登校拒否になりやすい・自分を肯定できない、自分を責める・人を信用できない・PTSD

★思春期以降
人や世の中が信じられない、人間関係が持てない・自尊心の低下、自責感を持つ・危険なことへの挑戦・安全や平穏が不安・感情がジェットコースターのように変わりやすい・摂食障害・過食・拒食・家出・非行・犯罪行為・アルコールや薬物依存・十代での妊娠・睡眠障害・統合失調症・自滅的・うつ病・自傷(リストカット)・自殺企画・PTSD


コラム
 〜子どもを応援しよう〜


子どもたちは家に居場所がなく、家出を繰り返し、仲間と一緒に過ごすようになり、非行や犯罪に手を染めたり、アルコール・薬物依存する場合がありますが、これは、子どもなりの究極の生き延び策なのです。 両親のDV関係は子どもへ深刻な影響をもたらします。

しかし、たとえ子どもに上記のような事態が生じても、子どもたちは成長過程にあり、高い可塑性があります。誰かたった一人でも自分の味方になり、辛さを分かってくれ、支えてくれる人がいれば回復できます。

子どもは自分が生まれる環境を選ぶことができません。誰かたった一人のその一人にお母さんがなってくれたら、子どもにとって、どんなに安心でしょう。子どもにとって絶対必要条件は、安心・安全・自由な環境です。絶対的信頼感を持って育つ子どもは自信をもち、世の中や他人を信頼できる大人に成長するでしょう。

お母さんにとってDV環境からのサバイバルは大変ですが、ご自分を取り戻し一人前を生きるため、子どもの回復のために、諦めないで力を尽くしてほしいと思っています。


by マリコ


〔参考図書〕
『DVにさらされる子どもたち』 L・バンクロフト JG・シルバーマン共著 幾島幸子 訳 (金剛出版)
『DV・虐待にさらされた子どものトラウマを癒す 〜お母さんと支援者のためのガイド〜』
L・バンクロフト著 白川美也子/山崎智勝〔監訳〕阿部尚美/白倉三紀子〔訳〕(明石書店)
『子どもの虐待 〜知ってますか?一問一答〜』 田上時子 編著 (解放出版社)
『子どもへの性的虐待』 森田ゆり著 (岩波新書1155)
『子どもと暴力〜子どもたちと語るために〜』 森田ゆり著 (岩波書店)
『〜中高生のための 〜メンタル系サバイバルガイド〜』 松本俊彦編 こころの科学 (日本評論社)
『生きのびるための犯罪(みち)』 上岡陽江+ダルク女性ハウス(イースト・プレス)
『ADHD注意欠陥・多動性障害 〜親と専門家のためのガイドブック〜』
アリソン・マンデス&ジョン・アーセラス著 東京都立梅ヶ丘病院 (東京書店)
『発達障害のこどもたち』 杉山登志郎著 (講談社現代新書)
『毒になる親 〜一生苦しむ子供〜』 スーザン・フォワード 玉置悟訳 (毎日新聞社)
『女の子に贈る なりたい自分になれる本』 上野千鶴子著 (学陽書房)